表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

序章

 エリア32に程近い森の中。

 拍子抜けしたようにぼーっとしている一人の少女がいた。

 透き通るような水色の髪を後ろで無造作に束ね、蒼い色素を通して世界を眺める。


 「ずいぶんと、あっけなかったなー。」

 その言葉は日常の崩壊をさしているのか。それとも脱出をさしているのか。

 「それにしても……あっけないにもほどがあると思うな。いくらなんでも、さ。」

 そのあっけなさを思い出したのだろうか。さっきまで呆けていた少女の表情が笑みに変わり、そのままくすくすと笑い続ける。

 「あんなずさんな包囲網じゃ人外の私たちを止められるわけ、ないのにね。」

 不敵に笑っていた少女の表情が、少し困ったようなものに変わる。

 「けど、96号はどうだろうなぁ。いつも能力を使わずに、ふらふらしてるからなぁ。」

 いつも頼りない半身の姿を思い出し、ちゃんと脱出できたか不安になったようだった。

 「96号ってば本気を出せば私より強いくせに、ピンチにならないと使いたがらないんだから。ほんと、我が半身ながら何考えてるのか分かんない奴よね。」

 本気になった96号を思い出したのか、少し不機嫌そうな表情になる少女。

 「ま、本気を出せばあいつらになんか、96号が遅れをとることなんかない、よね?」

 「96号はいつもみんなを振り回してばかりで、私かあの研究員ぐらいの言うことしか聞かないんだから。あいつらも振り回されるに違いないわ。」

 その様子を想像したのか笑みを浮かべる少女。

 「96号の周りはいつも騒がしくて、楽しいんだから、さ。」

 脱出と同時に過去を回想し、ある感情を自覚する少女。

 それは未だかつて、彼女が味わったことのない感情だった。

 「けど、それは96号も同じだよね?」

 初めて抱いた感情を、半身である96号にも当てはめる少女。

 「……そうだよ。私が96号を迎えに行かなくちゃ、ね。」

 唐突に思いついた計画を天啓とみなした少女は、来るべき未来を想像して年齢にそぐわない妖艶な笑みを浮かべると、ふとこちらを見た。


「あなたたちもこの物語に招待してあげるね?」

 そうつぶやくと同時に、少女の姿は掻き消すように消失した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ