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206話~208話

206話~208話

───◆──────◇───────◆───────◇───────◆───






206.深すぎて……






時の流れというものがあって


その流れと共に風化されてゆくこと


哀しい現実も存在はしたりするけれど


ここは違った




あの時


あの瞬間


誰もが予想しなかった あの時間




私たちが立っていた場所が


一瞬のうちに変貌してしまった事実


確かに存在したのだと


夜の闇に浮かぶドームを見ていて思った





修復は繰り返されてはいるものの


よく残ったと……本当にそういう思いだった





以前「行ったら変わるよ」と言われたことも


同時に思い出していた





戦後に生まれ育った私たちが


あの場所に立つことの意味






深すぎて 



上手く言葉にならない……







───◆──────◇───────◆───────◇───────◆───







207.だから……






一瞬にしてなくなるということ



現代に生きて


この身を持って体験した





命も物もなにもかも……





あった“もの”がそこにない風景


あるはずの“もの”がそこにない事実


なければならない“もの”がない現実





受け止めなければならないと頭では判っていても


気持ちだけが彷徨い続ける






そう……完全にシンクロした






体験していないことと体験したこと


でも


現実に起きた事実として


知らなければいけない事実として


忘れない






だから作家になったのだから








───◆──────◇───────◆───────◇───────◆───







208.息づく……







もっと重く感じると思っていた


“重く”というのは空気とかそういうもの





でも軽かった


不思議なくらい





一緒にいた人から聞いた





「ここは事実が事実として受け止められて


きちんとした祈りや想いが


風化することなく届けられているから」




と……





見えない力かもしれないけれど


人の想いや祈りというものに敵うエネルギーはないと


実感することができた





ずっと思っていたことだけれど


改めて実感させられた






風化させられる事実があったとしても


風化させない人たちがいる限り


生き続ける


息づけられる





息づく……








2012年10月

広島市原爆ドームにて



───◆──────◇───────◆───────◇───────◆───




2012年10月。

出張で広島市へお邪魔しました。

原爆ドームを初めて間近かで見た時に、アメリカ同時多発テロ事件とシンクロした私がいました。

アメリカ同時多発テロ事件のその跡地は「グランド・ゼロ」と呼ばれていますが、その意味は奇しくも「爆心地」。

広島の原爆投下の際に使われていた言葉でもあり、そこから名付けられたとも言われています。

皮肉としか言いようがありませんが、起こった事実により、残された傷跡の大きさの大小はありません。

今後、二度と、人災による哀しみが起こらないことを折に願っています。


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