無断転載
『無断転載した場合、1ページにつき20万円を頂戴します』
私は、同人誌に必ず、この記載をするようにしている。
お金を搾り取ってやろうという意図はなく、半ば威嚇であった。
でも、普通の無断転載であれば、この文言は効く。
私風情の同人誌を、転載しただけで20万円。
明らかに行為のリスクと金額が見合っていない。
……それでも、やる人はやるんだなあ。
私は無断転載サイトを見ながら、ため息をついていた。
1ページどころではない。
同人誌の表紙から本文、裏表紙までまるまる公開されている。
「……よし。そこまでの度胸は認めてやる。なら、出るとこ出てやろうじゃないの」
私は早速、弁護士事務所を訪ねた。
印刷したサイトのページ画像、無断転載されている私の同人誌と同じ本、サイトのURLまでメモして、証拠を潤沢に揃えてある。
「――というわけで、先生。なんとかなりませんか?」
所長である弁護士の先生は、私の用意した資料を見つめ、険しい顔をしていた。
……本当に相手を訴えられるだろうか。
なんだか、急に不安になってくる。
「あの、必要なら他にも証拠を持ってきます。どうにか……」
「これは完全に無断転載ですね。許しがたい」
先生が眉間にシワを寄せたまま、そう返してくれた。
ああ、よかった。
さすが、著作権関連に詳しいと評判の弁護士だ。
「こちらで開示請求をかけてみましょう」
「ああ! ありがとうございます……!」
私は何度もペコペコと頭を下げる。
これで安心だ……。
そう思っていたのだが、1週間後、事件は思わぬ展開を迎えた。
「開示請求した結果――」
再び事務所を訪れた私に、弁護士の先生は難しい顔をしている。
次の言葉を聞いて、私は思わず「えっ……」と言葉を漏らした。
「――管理人は既に死亡しています」
「そ、そんな……」
「弁護士仲間に聞いたら、どうにも妙なことになっていましてね」
先生は、声をひそめる。
私もついつい、身を乗り出してしまった。
「こういう案件、初めてじゃないらしいんです」
「他にも被害者がいるってことですよね?」
なにしろ、そのサイトには、私以外のクリエイターも被害にあっている。
先生は、降参したような顔で、眉を下げて私に告げた。
「この死亡した管理人が運営しているサイトが何件もあるようなんです。ですが、管理人が既に存在しない、そのうえ家族まで消息不明となると……」
――お手上げ、らしい。
私は半信半疑のまま、首を傾げて事務所をあとにした。
その夜。
サイトを見ると、更新時刻が5分前になっていた。
新しく追加された作品一覧の一番上に、まだ誰にも頒布していない私の新刊が並んでいた。




