第一話:次元の裂け目と“星晶球”の衝撃
夜空に突如、巨大な空間の裂け目「次元の口」が開き、そこから眩い光の粒が降り注いだ。それは地球の異なる時代、異なる場所で、それぞれの野球人生の輝かしい瞬間を生きていた者たちを、一瞬にして飲み込んだ。意識が定まると、彼らの脳裏にはこの世界の言語と知識が流れ込み、まるで元から備わっていたかのように自然に理解し、話せるようになっていた。
彼らが転移したのは「アストラル」と呼ばれる異世界。この世界には「星晶」と呼ばれる神秘の力が満ちており、人々は「星晶球」という独自のスポーツを楽しんでいた。それは地球の野球に似ているが、星晶の存在がゲームのすべてを支配する。
星晶球は、野球と同じ九回制で、三つのアウトで攻守交替。しかし、選手は星晶を操り、打球や送球に超常の力を込める。投手は星晶の力で球を自在に操り、打者は星晶をバットに集中させて、物理法則を捻じ曲げるような一撃を放つ。守備側は星晶で生成した障壁で打球を防ぎ、走者は身体能力を強化する星晶術で塁間を駆け抜ける。そして、最大の興奮は、選手が星晶を最大限に高めて放つ「天翔球」だ。これらは試合の流れを一変させる破壊力を持つため、一試合に数回しか放せないという制限があった。
地球で「魔球の左腕」と謳われたレイガは、伝説的な打者との極限の駆け引きを制し、勝利の瞬間を迎えた直後に光に包まれた。次に目を開けた時、彼は見慣れない森の中にいた。やがて、人々の導きにより、彼は異世界の商業都市「ルナール」にある星晶球チーム「ルナール・ファントムズ」の練習場へとたどり着く。彼の強靭な精神力と、そこから放たれる凄まじい「気迫」は、チームのスカウトの目に留まった。
「天空の万能者」カイは、投打にわたる異次元の活躍で新たな記録を樹立する中、空間の歪みに吸い込まれた。気づけば、彼は広大な草原の真ん中に立っていた。彷徨う彼を保護したのは、広大な大地を支配する王国「アウラリア」の王都「アルテミス」を拠点とする「アルテミス・グリフィンズ」だった。彼の常識外れの身体能力と、両極の才は、すぐにチームの注目の的となる。
「絶対の剛打者」ボルクは、自身の宣言通りに放った本塁打が、グラウンドを揺るがす歓声に包まれる中、最後のベースを踏んでいた。その瞬間、足元の地面が歪み、視界が白く染まる。彼が目覚めたのは、陽光降り注ぐ荒野だった。彼は冒険者たちが集う自由都市「ソレイユ」へと辿り着き、そこで最も活気のある星晶球チーム「ソレイユ・ドレッドノート」に身を寄せる。彼の陽気な人柄と、一目でわかる規格外の体躯は、すぐにチームに溶け込んだ。
彼ら地球の選手たちは、それぞれのチームの既存選手たちと交流し、この星晶に満ちたスポーツのリーグの存在を知る。やがて、「アストラル最強決定戦」の開催が決定し、彼らはそれぞれのチームの一員として、その舞台を目指すことになる。
しかし、彼らが知る野球の常識は、この世界の「星晶球」の前では通用しなかった。
ルナール・ファントムズの一員となったレイガの剛速球は、相手チームの強打者が放つ「風の奔流」星晶術によって軌道を曲げられ、彼のプライドは傷つけられる。マウンドに打ちひしがれるレイガの脳裏に、地球での完璧なピッチングの記憶がよぎる。「こんなはずじゃねえ…!」
アルテミス・グリフィンズのカイの速球は、敵打者の「炎の護り(フレイム・シールド)」で勢いを失い、彼の豪打も、捕手の「氷の捕縛」に阻まれる。ベンチに戻ったカイは、悔しげにバットを握りしめた。「このままじゃ、俺の星晶球は通じない…」
ソレイユ・ドレッドノートのボルクの豪快なスイングは、相手の「重力操作」で打球が伸びず、彼の信条である本塁打はなかなか生まれない。凡打に倒れたボルクは、首をひねりながらグラウンドを見つめる。「なんだってんだ、この不思議な力は!」
リーグの初戦は、三人の地球の選手にとって屈辱的なものだった。野球の技術だけでは勝てない。この異世界で勝つには、「星晶球」を理解し、己の能力と融合させなければならないことを痛感する伝説の選手たち。彼らの新たな戦いの舞台は、想像を絶する試練に満ちていた。