夕飯
空を見上げるともう夕焼け空で、太陽が地平線に沈んでいた。空はオレンジと紫のグラデーションを帯びていて、夜になることを告げる。
カロリーヌの提案でシプリートが五当分に切り刻み、それぞれ椅子にした。机は切られたもので、囲みながらドミニックとアンジェを待つ。
彼ら二人は林に近い城下町まで戻り、食材を買いに行ったのだ。
ザールはお腹いっぱいになったので、いびきをかいて眠っている。あれから全く起きない。
シプリートは不安な気持ちをカロリーヌに吐き出す。
「本当にカノーカ王国に着くのかな……」
「それはわからない。姫が無事かもわからない」
「怖いこと言うなよ……」
顔を訝しめたが、彼女とならスラスラ話せる。
というのも、就寝の支度や風呂場での見守りはカロリーヌがしてくれたので交流が長い。
人見知りではあるが、彼女とはよく話せる。赤の他人や、強い口調の人とは正直話したくない。
彼女と色々話をしていたら、もうすっかり暗くなっていた。林の隙間から色々な色の星々が煌びやかに輝き、上弦の月はほのかに地上を照らしている。
そこへ二人の人物が松明を掲げてやってきた。その松明をイスの近くにあった二つの松明に火をつけ、最初に持ってきた松明を地面に差し込む。
丸太の椅子と机、そして皆の顔を照らした。
ちょうどザールが目を覚まし、あくびをして起き上がる。ぐぅと大きな腹時計が鳴り響く。
ドミニックとアンジェは買ってきた品物を机の上に置いた。
「遅くなってすまんな。俺たち貴族だからな。城下街に行ったんだが、皆平民だから変な目で見られてしまった」
「そうそう。食べ物は買えたんだけど、貴族の住む場所でしか買えなくてかなり高かったわ」
渡したお金200レミル(約32万円)を全て使い果たし、机に出されたのは新鮮なフルーツと焼いた魚とパンだった。
ラフランスや桃、リンゴにフドウなどのフルーツはどれも美味しそうで、皆フランスパンを食べながら一緒に青魚を食べる。ホクホクしていて、普通に美味しい。
フルーツを食べている時、ドミニックがシプリートのセリフを取るかのようにきつい口調で質問する。
「おい、もう全員揃ったんだ。カロリーヌさん、過去を教えろ」
「はい……わかりました。しかしとても暗い話になってしまうと思います。大丈夫ですか?」
「僕は大丈夫だよ。みんなは?」
そうシプリートが尋ねると、皆はコクリと頷く。
食べ終えた全員の表情が一気に険しくなった。彼女の方を一斉に見る。しかしカロリーヌはそんなことも気にせず、ボケをかます。
「まあ、気分が悪くなったら吐いても構いません」
「「「いやいや、吐かないから大丈夫!」」」
「では話し始めます」