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失われた姫と消えた秘宝  作者: 片桐 遥
二章〜モンスターハント〜
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ゴブリンハント

明るくて太陽がギラギラと照っている中。ルミリア国から出て、草原を歩く。


のどかで平和な場所だと聞いていていたが、モンスターが蔓延っていた。


緑色の肌をした筋肉質の巨大なゴブリンが三体も群れを成していて、倒すのが大変そうだ。しかも石の斧を持っており、それを振り回している。


途中にある林の木に隠れて、様子を伺った。林は鳥の羽ばたきと虫の鳴き声がする、とても静寂な場所だ。


ゴブリンは「グァァァァァァ!!」と大きな声で吠えながら、その場を行ったり来たりしている。


「このゴブリン、挙動がおかしいわね。まるで回転しているかのようにクルクル」


カロリーヌはまた天然な言葉を言っていたので、謝っても治らないようだ。それを聞いて、ドミニックは右手を顔に当てて呆れていた。


「は?回転はしてないだろ。カロリーヌさんの目は節穴か?それよりも明らかに目の色がおかしい。普通なら黒目なのに、赤く光っているな」


「もしかしてその……」


指と指を合わせてモジモジしていたら、弟のドミニックに怒鳴られた。


「はっきり言えよ!兄さん。何か心当たりでもあるのか?」


「ひっ!も、もしかすると……操られているのかも!」


大きな声でそう言うと、ゴブリンたちがこちらに気づき猛スピードでやってくる。どうやら音に反応して、こちらに向かっているらしい。


「仕方ないわね。アタシたちがシプリートお兄様のために倒さないと行けないわ!」


「アイツのことはどうでもいい。だがここでゴブリンを潰さないと、皆死んでしまう。行くぞ、アンジェ」


「……私もお供します」


アンジェとドミニック、そして少し躊躇い気味のカロリーヌは一体ずつゴブリンまで走って行き、魔法を発動するため両手に力を込める。


「おいらも行くかー!アンジェのサポートするぜ!」


ザールは大きなお腹を叩いた後、カエル歩きをする。


後ろから見ているとどちらがモンスターかわからなくなるが、彼は魔法が弱いアンジェのサポートをする。シプリートの出番はないようだ。この四人なら倒してくれるだろう。


「食らえ、連続バックブロム!」


ドミニックは両手に溜めた水の塊を、何度もゴブリンにパンチする。石の斧で攻撃する隙を与えず、ゴブリンの緑色の体にはたくさんの穴が空き最後のパンチで首が吹っ飛んだ。


彼は一瞬にして倒したよう。チートすぎて助けはいらないな。


一方アンジェとザールチームは苦戦していた。


特にアンジェの風魔法は未熟なので、少しだけ風を起こせるくらい。風でゴブリンを吹っ飛ばそうとしたが、びくともしない。


アンジェは目から大粒の涙をこぼし、絶望感に浸っていた。個人的には魔法使えるだけでもすごいがな。


「うっ……どうしよう、全然倒せない……」


「任せとけー!このゴブリンを丸ごと食べてやるぜ!!」


ザールが大きな口を開けて、ゴブリンの腕にかぶりついた。それを一気に歯で噛み砕き、腕をちぎった。


ゴブリンは「グォォォォォォ!!」と悲鳴をあげ、斧の手をザールの方へ叩きつける。その場から離れて態勢を整え、アンジェは応援するように風を起こす。


斧の手に風を当てて阻止。ザールがゴブリンの腹にかぶりついてモグモグと食べていく。這いつくばった彼はそのまま頭まで行き、頭を齧って引っ張った。そのままゴブリンが死んでしまう。


ザールがゴブリンを食べるのは、腹が減っているからである。彼は人間以外なんでも食べるのだ。


ザールがこうなってしまったのは、モンスターをハントして美味しい食材を集める冒険をしたからだ。




彼は真っ青な顔をして、手で口を押さえている。


「うぷっ……あんまり美味しくなかったな。ゴムみたいな味だったぜ……うぇ……。自称美食家としては、ゴブリンはもう食いたくないぜ」


さらに太ってしまったザールはその場で大きなお腹を使って歩き、林の木陰で眠りについてしまう。たくさん食べたので、消化に時間がかかるのだろう。


アンジェは自分の無力感に失望して、深いため息をつく。


「はぁ……もっと強くならなきゃ……!ドミニックお兄様!魔法について教えてください」


「ああ、教えてやるよ」


手をタオルで拭っていた彼は後ろを振り向き、彼女の肩を叩く。快く受け入れてくれていた。


シプリートの時とは大違いだ。性別が違うからだが、腹が立ってくる。羨ましい。しかし怒ることはなかった。ずっと平常心を保てるからな。


だが一番苦戦していたのは、メイドのカロリーヌだ。炎で攻撃するが全く当たらず、何か戸惑っている様子を見せた。全身に汗をかいている。


彼女はゴブリンの瞳を見て、そこに黒い影が映っているのを目撃。それをじっと見ていると、吸い込まれそうな不思議な感覚に陥る。


「……うっ、あの赤い目は嫌だな。その奥に映っている……」


そうポツリと呟いたが、その後は聞き取れなかった。


ゴブリンの赤い目の奥に一体何が映っているというのだろうか。彼女は何かを隠しているに違いない。


シプリートは剣術の師匠からもらった金色の勇者の剣を握りしめ、ゴブリンの方へ走る。ゴブリンは斧で攻撃してくるがそれを避けて飛び、ゴブリンの腕を走って首に切り掛かる。しかし全くきれず、少し食い込んだ。


甲高い悲鳴をあげたゴブリンに掴まれて、投げ飛ばされた。草原の柔らかい土に顔がめり込む。


そこへ水の槍攻撃が降り注ぐ。ドミニックだ。一瞬でゴブリンが粉々になった。


シプリートは土から顔を出す。


首を振って土を払い、ドミニックに照れくさい声でお礼を言う。彼は頬を赤らめ、背中を向けてきた。


「ドミニック、その……あ、ありがとう!」


「べ、別に助けたくて助けたわけじゃないから勘違いすんなよ。メイドさんが全然倒せなくてイライラしたから、参戦したまで。兄さんのためじゃない」


「またそんなこと言って……」


呆れてしまう。ドミニックとはまともに会話ができそうにない。


仕方ないので、カロリーヌの方へ向かう。彼女は眉を下げてため息をついていた。


「はぁ……嫌な過去が蘇ってしまった……」


「過去……?」とシプリートは質問する。


「話すべきか迷うけど、話そうかしら?でもゴブリンさんたちに迷惑だし……」


「ゴブリンとか関係ねえから!」


また天然な発言してきたので、ツッコミを入れつつ五人全員草原の中にある林の方へ進む。

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