カノーカ王国へ
旅に出ると両親に話したら、資金をたくさんもらう。
豪華な城の外に出ると、そこにいたのは弟のドミニックだった。彼には何回もいじめれていたので、正直関わりたくない。
ドミニックは後ろを振り向いたが、視線を合わせることはない。彼は頬を少し赤らめていた。
「じ、実は……エミリを助ける協力をしに来た。べ、別に助けたいわけじゃないが、兄さんが俺の魔法を誉めてくれたのが理由だ。仲間になったわけじゃないからな」
彼は照れ隠しをしているようだ。
本当はシプリートのことを兄弟として好いているが、恥ずかしいのでツンツンしたデレが発動しているのだろう。相当嬉しかったに違いない。
こうして弟ドミニックも一緒に行くこととなった。そこへ住民に聞き込みをしていた、メイド服を着ているカロリーヌが帰ってくる。
「仲間は集まりましたか?」
「ドミニックとアンジェとザールの三人だよ。ザールは修行中でもうすぐ来ると思う」
「そう。体力作りは、必要ですものね。ファンファーレならぬファイトですね」
「まー、確かにそうだな」
「ねえねえ、お兄様!こんな女を置いて早く見つけに行きましょう!」
アンジェが嫉妬でイラついた様子を見せていた。カロリーヌと話していることが気に食わないのだ。腕を握りしめ、その場から去ろうとする。
その腕にある両手を振り払い、彼女にロボットの行方を尋ねる。するとその場で膝をつき、土下座した。
「申し訳ありません。情報は得られませんでした」
「わざわざ畏まらなくていいよ。仕方ないな、このメンバーで地道に探そう!」
「はい、そうしましょう」
彼女が立ち上がると、メモ帳が落ちていた。アンジェがそれを拾うと、そこにはこう書いてあった。
「ロボットはカノーカ王国方面へ向かっていた」と。
どうやら情報が得られないと言っていたのは嘘だったようだ。なんでだよ!やはり天然なカロリーヌらしいな。
現実主義者のドミニックはそれに怒りを露わにする。
「おい、メイド。嘘はダメだろ。本当のことを言えばいいんだ」
「私の名前はメイドではありません。カロリーヌです。高カロリーとでもお呼びください」
「ええ……」
「嘘もたまには必要です。しかし嘘を使いすぎると狼少年の物語のようになってしまう。もう嘘は申し上げません」
狼少年とは狼が来たと何度も住民に嘘をつき、最終的に狼に襲われたが知らせてもまた嘘だと思われて助けてもらえず絶命するという話だ。
黒いスカートの裾を掴んで、可憐にお辞儀する。
彼女は嘘をつきたくてついたわけではない。カロリーヌは仕えてからどこか抜けており、こういうことはよくあったので疑問に思うことはない。むしろいつも通りで安心している。反省もしているようだし、許してあげよう。
彼女自身シプリートを死なせなくなかったからという理由があるのかもしれない。
楽しく会話をしていたら、太っている男が走ってやってきた。ゼエゼエと荒い呼吸をしているザールだ。
鍛え終えたらしいのだが、初めて出会った時とあまり変わっていない。短時間だから無理もない。随分意気込んでいることだけはわかる。
「ハアハア……さて、いきましょう!」
「おー!!」
この言葉を筆頭に、皆手をあげて拳を握り宣言した。
彼らはルミリア帝国を離れて貿易が盛んなカノーカ王国へ向かったのだった。