闇堕ち
「二人になったな。とても素晴らしいものを見せてやろう」
エミリ姫をお姫様抱っこしたまま、城の中に入っていく。
城の霞んだ桃色のカーペットを踏んで階段を降り、地下へ降りる。アズキールの首を握りしめ、前に進んだ。顔だけ見ればシプリートにしか見えないので、安心してしまう。赤の他人のはずなのに。
地下通路の終わりの壁の中に、黒色にキラキラと光るカケラが置かれていた。星の端っこのような形をしている。
エミリ姫はそれに見覚えがある。これはカノーカ王国の地下にある、「ルーペント」だ。確か水色の光を浴びていると伝承では書いてあったが……。
文明がずっと栄えることができたのはこの宝石のおかげで、どうやら盗んだのは彼のようだ。
国の兵士になりすまして地下へ行き、闇の力で氷を破壊して盗んだようだ。この国は荒れ果て、太陽が照らなくなった。人々の笑顔も消える。
「この宝石に私の血を混ぜて、真っ黒にした。どうだ?素晴らしいだろ」
「こんなの間違っています!伝統を潰すなんて最低です!」
強い口調で吠え立てたが、口を闇の魔法を使って閉じられ喋れなくなる。アズキールは唾を吐いた。
「口が悪いお嬢さんだ。賞賛すればいいものを。まあ、いい。私がガレス元博士に作らせた洗脳装置があるからな」
扉を開けて機械の前に立たされ、無理やりそこへ入れられる。抵抗したくても、強すぎて全く歯が立たない。この男、魔法とオーラが圧倒的に強い。体が動かない。
機械の扉が閉まると、手と足を拘束されて無理やり頭に機械が装着される。アズキールの数々の悪事が目の前に映り、苦痛が走った。悲鳴を上げてしまう。
住民が次々とモンスターに変わっていく映像や見ていられない残酷な光景。目を背けようとするが、無理やり目をこじ開けて見させようとする。
そして呪文のように、それが正しいことを頭の中にインプットされていく。魔力も同時に向上していく。
彼女が機械に入っている最中、彼は「ルーペント」のカケラを握りしめる。
アズキールは実は盗んだ後血を混ぜたら四つに分かれてしまい、他の三つは違う場所へ飛ばされた。
こうすることで、四つ合わさった時、血で作ることができる「最終兵器 ガムダナ女王」が復活するのだ。
彼女が復活すれば、この星の太陽は輝かなくなり毎日嵐の日が続くだろう。そしてモンスターしか生きられない環境になるはずだ。こうなれば人間は生きることができない。
とはいえこれは最終兵器。今はアズキールがこの世界を滅ぼし、この惑星の王になるのだ。
「ふふ、楽しみだな。特にルミリア国を潰しておきたいな。やはりアイツをぶちのめさないと」
そう呟いた後、その場で眠りについた。もうすっかり夜になり、眠くなるのも仕方ない。
次の日の朝。今日は四人の仲間と戦う楽しい夢を見た。
目が覚めると、機械の扉が開きエミリが出てきた。目に光がなくなり、そして髪の一部が黒くなっている。
最大限の力を制御する首輪。耳にはヘッドホンをしていて、そこにはアズキールの声と共に「俺が正しい」という教えがずっと流れている。
彼女はずっと終始無言だ。
「君の名前は今度からエンジェルだ。僕好みの可愛い名前だろ?」
「ありがとうございます」
「さ、行こう。僕たちでこの世界が滅ぶ姿を見に行こう!」
アズキールが満面な笑みを浮かべると、彼女は口だけで少し微笑む。