囚われの姫
18XX年。ルミリア国では結婚式が開かれていた。
ルミリア国の第一王子が、隣の国バイレット王国の姫と結婚する。
この二つの国の貿易を盛んにし、街を強化する必要があるからだ。隣には強大な勢力、イーリェット帝国があり、彼らに侵略されないためにこの結婚は必要不可欠である。
遠くから見れば戦略結婚であるが、パレードの中を通って二人とも幸せな表情で馬車の中から手を振る。
紙吹雪が撒き散らされる中、国民たちは新婚夫婦に笑顔で振り返す。とても華やかなパーティで締めくくられた。
二人は結婚式を終えて煉瓦造りの豪華な城に入り、寝室へ向かう。
貴族が使いそうな豪華なベッドにたくさんの本が入った棚。豪華な椅子もあり、隣の部屋には風呂場がある。
赤毛のシプリートは、めんどくさそうにため息をつきながら椅子に座る。
人見知りなので、正直赤の他人と関わりたくないのが本音。
貴族は大体周りの環境を断ち、家族やメイド以外と関わらないように閉鎖的な空間で生活する。そのため、人見知りになるのは必然である。
「あーあ、疲れたな。人がいっぱいいると、疲労がすごいんだよねー」
「もう、そんなこと言ってはいけないわよ。あなたはこの国を父上の代わりに継ぐ王子ですわ。貿易を結ぶために人と関わる機会は増えますもの」
金色の触り心地の良いロングヘア。ピンク色の瞳をしたエミリ姫がだるそうにしている彼に叱咤する。
シプリートは目を少し開けたが、知らんぷりんして目を閉じた。疲れているから仕方ないよね。
心の底では彼女のことが好きである。
しっかり者で頭が良く、困ってる時は助けてくれるので気がきく。
胸も大きくて美しいボディーに母親の母性も持っており、こんな完璧な女性は滅多にいない。
逆にエミリ姫は、人見知りで臆病だけど、優しくて正義感が一番強いシプリートについて、もっと知りたいと思っている。つまり両思いである。
これでようやく新婚生活が始まった。
彼女は手を叩いて、提案してくる。
「さ、食事にしましょう」
「はぁ……そうだな」
浅いため息をついて椅子から立ち上がり、シプリートは彼女の細い腰を掴んでエスコートする。そのまま大広間に向かおうとしたその時。城全体が揺れて寝室の床が盛り上がった。
「この娘は我々のものだ!!」
野太い声と共に床から口が大きくて鋭い歯を生やした丸い形の小型ロボットが顔を出し、長い腕と大きな手で姫を握りしめて去っていく。
壁と窓は食われて崩壊し、飛び散ったカケラや折れた柱が倒れていた。
「シプリート、助けて!」
大きな声で叫んだが、彼はどうすることもできずその場で立ち尽くしてしまう。
弱い自分が醜いと感じる一方、ロボットは大きな翼を広げて去っていく様を見ていることしか出来ず。その場で膝をつき顔を真っ青にする。
そして、なぜ助けられなかったのか後悔する。