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短編小説どもの眠り場

視がない

作者: 那須茄子

 不安に駆られて、目をつむる。 


 さっきまで馬鹿みたいに騒がしかった世界は、一瞬で暗くなる。

 狭くなった虚の箱の中で、私はただ正面を向いているだけにしかすぎない。


 でも安心できた。

 何も見ない。それが私にとっては正解らしかった。

 

 真っ暗な今だから分かる。

 目でものを見ていれば、頭と身体は鈍っていく。見たものの分だけ、影響され毒される。


 私は思う。人間という生き物は、何かに影響され続けないと気が済まない癖があると。

 自己よりも他者に、他者よりもモノに、モノよりも言に。そうやってすくすくと育って、立派な()が成る。

 脳汁を垂らせば垂らしただけ、それが養分となって肥え、いくつもの()が枝分かれする。見るという快楽が、どこまでも循環を成立させる。


 

 ……嗚呼、見るに堪えない。気色悪い。


 さっきまで馬鹿みたいに騒がしかった世界がまた、脳裏にちらつく。

 

 これでは目を閉じた意味がなくなる。見ないと誓った私の意思が陰る。

 あの世界の住人のようにはなりたくない。


 脳みそ、脳みそだ。これがあるから、完全に見えなくならいのだ。脳みそはこれまで見てきたものをちゃんと記憶して、鮮明に映し出す厄介な投影機だ。


 取り出してしまいたい。そんなことをすれば、死んでしまうことは分かっているが。私は許せない。私の意思に反する身体の構造だから。


 目玉に、人間が生きていけるだけの全ての機能を詰め込むことが出来るなら、自分でいちから設計し直したい。

 


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