55 対決
「見つけたぞ」
と、オレは総司令官の前に立ちはだかった。
「褒めてやろう。よくあそこから出られたものだ」
「うるさい、黙れ。オレを騙し、利用しやがって」
フッと鼻で笑う総司令官。
「それでなんの用だ」
卑怯な手で吸血魔人らに対する仕打ち。そんなことをしておきながら、とぼける気か。
「てめぇは殺しすぎた」
「まだ全然足りないが」
もう言葉を返すつもりはなかった。
てのひらを司令官に向ける。
「やめてくれ。兄を殺さないでくれ」
背後から掴みかかってきたのは、オレの護衛だった。
「さっきのアンタの話で事情はよくわかった。けど応じられない。アイツは目の前で多くの吸血魔人らを殺した。吸血魔人らをここに連れてきたのはオレだ。オレはしっかり関わっちまったんだよ。だからこの手でアンタの兄を殺す」
オレは魔族だ。たとえヒト族が魔人族に殺されようとも、逆に魔人族がヒト族に殺されようとも、どうだっていい。本来ならば高みの見物ができていたはずだ。勝手にやってろと。だが今回はそうじゃない。
総司令官が口角をつり上げ、軍剣を抜く。
「俺を殺すつもりか? 悪いがまだ死ぬわけにはいかない。死ぬのは吸血魔人が絶滅したあとだ。すべて終わったら、吸血魔人の血が半分流れている弟を殺し、次に自分を殺す。これで汚れた血はこの世から消えるのだ」
軍兵らがザワザワし始める。
「そ、総司令官はいまなんて言ったんだ」
「弟には吸血魔人の血が半分流れてるって?」
「じゃあ、総司令官にも半分の血が……」
総司令官をじっと見つめる護衛。
信じられないものを見ているかのような目。
ショックの大きさを隠し切れていなかった。
「兄さん……俺まで殺すつもりだったのか……」
オレにしがみつく護衛の手が緩んだ。
その隙にするりと抜けだし、総司令官と対峙する。
「冒険者風情が! 俺を殺せるとでも思ってるのか」
総司令官の手から魔法陣。青い光が生じ、軍剣を包んだ。
オレも魔法陣を浮かびあがらせ、エアーブレイドを発動。
総司令官が軍剣を振り、オレも振った。低音が響いた。
剣と剣とのぶつかり合いというより、魔法と魔法の剣戟だった。
剣じゃ負けない。ましてやヒト族や魔人族ごときに。
こっちは一族に伝わる剣術をマスターしているのだ。
実際、総司令官との剣術対決は、オレが圧倒的に押していた。
総司令官は剣を振りながら部下に言う。
「お前ら、なんで俺を援護しない?」
慌てて構える軍兵たち。
しかし……。
「もううんざりだ。総司令官の命令に従うのも、多くの魔人を殺すのも!」
剣先を総司令官に向ける軍兵がいた。
彼に続く軍兵も次々と出てきた。
「俺もだ」「俺も」「俺だって」「俺もだ」……
それ裏切りか? 上司に反旗を翻すってどうなってるんだ?
軍って、厳しい組織だろ? 最も統率が重視されるところだろ?
ヒト族なんて所詮はこんなものか。
いいや、ヒト族の皆がそうだとは限らないな。
それに魔族だって、古くからの親友を裏切るヤツだっている。
もちろんこの場にいる軍兵の全員が、反総司令官ということではない。
全体の半分弱か三分の一程度にすぎない感じだ。
軍兵同士での剣戟が始まった。
一方、オレは総司令官を追い詰めていた。
すると総司令官が剣を投げ捨てる。剣を諦めたようだ。
その両手にそれぞれ魔法陣が生成された。
飛んでくるのは、氷の矢や光の矢。
降り注ぐのは、赤い雨や黒い雪。
後者は敵味方関係なく襲っていった。
矢をかわすのは割りと簡単だったが、雨や雪はどうしようもなかった。
だがオレは魔族。ツノはなくとも防御力はそれなりに高い。
致命的なダメージを受けることはなかった。
それに対し、軍兵らはヒト族であり、多くの者が倒れていった。
死者だって少なくなかろう。
おい、総司令官……。
お前は味方の部下まで巻き込んで殺すのか。
だけどちょうどいい。いまヤツの周囲に軍兵はいない。
ならば得意のミニファイヤを見舞ってやる。
周囲の被害を気にせず放つチャンスだ。
ポン、ポン、ポンと連発した。
ほう? ミニファイヤくらいじゃ死なないか。
だったらもっと強力なアレをぶっ放してもいいだろう。
両手を総司令官に向ける。
ヤツも同じ動作をしていた。
「おい。なんで俺が若くして総司令官、すなわちコーリシャス伯爵領の実質トップになれたと思う? 教えてやろう。あの幻の火系魔法『フレア』を習得できたからだ! いま見せてやろう。死ねっ」
フレアだと? 噂に聞くフレアか?
最上級メガファイヤよりさらに上だという……。
いいね。きょう幻を目にできるわけか。
面白い! やってくれ!! 見てみたい。
オレのファイヤと勝負してくれ。
オレと総司令官は、そろって自分自身の技名を口にした。
「ファイヤ!!!!!!!!!!!!!!」
「フレアアアアアアアアアアアアアアアア」
ここまでお読みくださり、ありがとうございます!!
【評価】と【ブックマーク】で応援をお願いいたします。
下の ☆☆☆☆☆ を ★★★★★ に変えてくださると、
最高にうれしいです。




