ひとひらめ
はじめまして
紅井ぐみ(あかいぐみ)と申します。
こういったサイトを使う事、誰かに自分が書いた小説を読んで頂く事も初めてで。
正直不安でいっぱいです……。
粗末な作品になると思いますが気が向いたら読んで頂けると幸いです。
私のメンタルと脳みそが動く限り頑張って更新していきたいと思います。
~プロローグ~
『邪魔』『どんくさい』『のろま』『田舎者』『小汚い』『臭い』
悪口や罵倒を受けない日は無い……。
そしてその言葉は何処に行っても付いて回る。最早この『悪口自体が私自身』なのかもしれない……。
「「誕生日おめでとう!エミィ!」」
私の家にお父さんとお母さんの明るい声がこだまする。
「私の可愛いエミィちゃん!」
「今日はご馳走だ!いっぱい食べていいんだからな!」
お母さんは私を隣から、お父さんは私とお母さんを覆いかぶさるように後ろから力強く包み込む。
両親の温もりに包まれた私の目の前には、私の大好きなお母さん特製クリームシチューと、甘酸っぱいラズベリーにクランベリーソースがたっぷりとかけられた特製タルトが並んでいる。
美味しそうな匂いに思わず私の口の中に涎が沢山あふれ、今にも口からだらりと垂れてきてしまいそうだ。
私の村は貧相な区域で皆自給自足の生活を送っているが、唯一私の誕生日の日だけは私の大好きなお母さんの特別豪華なご飯が食べられる。
「よし、じゃあ冷めないうちに」
お父さんがそう言って両手をパチン!と合わせると。
「「「いただきまーす!!!」」」
その合図と同時に私は早々と湯気が立ちこもる熱々のシチューを口へ運ぶ。
「あっちゅ!あっちゅ!」
私は思わずそう声にだして舌を出す。その様子をみた両親は笑いながら「落ち着いてたべなさい」「冷めたらまた温めるから」と優しく注意する。
シチューを沢山食べるとお母さんが「ほ~ら、これからが本番でしょ~?」と満面の笑みを浮かべなら私の大好きなタルトをテーブルに運んでくる。
「私まだいっぱい食べられる!大きく切って!」
私の眼にはきっとハート模様が浮かんでいるだろう。
「はいはい、エミィってば欲張りさんなんだから」
「だって、お母さんの作るタルト大好きなんだもん!」
「あら、そう言ってもらえるとお母さん嬉しいわぁ~」
そういってナイフで大きくタルトを切ってくれた。
「わぁ~……!食べていい!?」
「勿論よ!さぁどうぞ、めしあがれ~」
「お父さんもた~べよっと!」
タルトを口に入れると、とろけるような甘さと、後からやってくる酸っぱさ、ラズベリーのプチプチとした食感にたまらず「ん~!!」と声を上げ、ゴクリと喉を通すと思わず顔がにへら~ととろける。
「おいしぃ~」
「おぉ~、今年のベリーはまた各段と酸っぱいなぁ~!!」
お父さんも私と同じように声をあげニコリと笑う。
「あらほんと……おぉ~酸っぱい!」
真冬の寒さの中で産まれた私は、私の誕生日だけは外の寒さを忘れさせてくれる程に温かい愛であふれる。
だから私は冬が好きだった。
自分の誕生日が待ち遠しかった。
そして、この幸せはいつまでも続く……
そう信じて疑ってなかった。