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【クロウディプレート】「全ての終焉を司る樹」を体に宿す少年は、世界を憎む少女達と共に深呼吸をする。  作者: 絹鍵杖
滅國の再帰姫 第四章 恋か、敵か

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第34話「異世界転生って」

天袖は無架に殺された。……だけどそれは全て作戦のうちだった!?死んだはずの天袖が、ラスノマィの呼びかけに、体を起こす――!?

『……ンー、不味イナ』


「……何が?」


『コノママダト、確実ニバレル。何カ隠レ蓑ヲ考エナイト……』


「べつにいいんじゃない? バレたらバレたで、別の方法を考えれば」


『ワカッテナイナァ。今アル生活ガドレダケ貴重ナノカ』


「でもどうしようもないよね。いずれこうなるのはわかってたようなものだし」


『都合ヨク現レテクレナイモノカネ、白馬ニ乗ッタ王子サマガ』


「わたしの代わりに復讐を成し遂げてくれるような?」


『違ウヨ。身代ワリニナル……ウウン、デキレバ殺サレルコトヲ承諾シテクレル王子様ガイイナ』


「なにそれ。そんなの、現れるわけないじゃん。物語でもそんな都合のいいコマ、用意してくれないよ」


『ソウスレバ、キミノ地位ハ安泰ダシ、身元ガ疑ワレル心配モナクナル』


「わたしのわがままに他の人の生涯を付き合わせることなんてできない」


『キミノ我儘ジャナイ。ソシテコレハ、キミダケノ復讐デモナイ』


「……」


『ヤルト決メタンダロウ? 一人モ傷ツケズニ終ワル復讐ガアルモノカ。タッタ一人ノ為ジャナイ。コチラノ方ガ犠牲ガ多イカラ復讐ヲスルンジャナイ。彼ラ一人一人ガ抱イタ無念ノタメニワタシ達ハ行動スルンダ。ダッタラ誰ヲ巻キ込モウガ、復讐対象以外ノ何ヲ攻撃シヨウガ、関係ナイ。キミノ目的ガ達成サレルマデワタシハ止マラナイゾ』


「……何が王子様よ。わたし達は目的がなかったらただの一般人を巻き込むただの殺人鬼じゃない」


『報道サレル殺人犯ノ「行い」ニ、一般人ハ怯エル。ダガ彼等ハナニヲ以テソノ人間ガ殺人ヲ犯シタノカ、報道サレル程度ニシカ理解スルコトハナイ。理由ナンテ後カラツイテクルモノサ。後ニナッテ同情サレタリ、理解サレタリスルンダロウ。ダケド許シハサレナイ』


「……目的が何であれ、わたし達は『殺人鬼』……」


『ソウダ。彼ラニトッテワタシ達ハタダノ殺人鬼ダ。ヒョットシタラ死ヌマデソノ認識カモシレナイケド。ダケド忘レルナ。ワタシ達ノ目的ハ正義ジャナイ。彼ラガ我々ノ目的ヲ理解スルノハ、彼ラガ死ニ絶エル時、ツマリハ我々ノ思イガ彼ラニ届イタ時ダ』


「そうだね、……でも」


『?』


「わたしが王子様だったら、きっと素通りするよ。泥水に落ちた小汚い娘なんて」







△◯







 二回目の吸血ができなければ無架は死ぬ。それが事実であることに間違いはないが、それが達成されなかったからといって、天袖が「ゲームオーバー」になるとは限らない。

 天袖が死に、無架が去った商業エリア。

 二人が天袖の作ったドームの中で戦っていた影響か、ラスノマィが想定していたよりも現場の破壊は少なかった。

 ただ全くの無傷とはいかない。地面は無架の『柳牙』が残した斬撃やドームの破片が落ちてきた衝撃でぼこぼこにえぐれている。誰が見てもここで戦闘があったことに気づくだろう。階層を覆っていた障壁は解除されたし、この被害を想定していたかは不明だが、色々が市民の目に触れるよりも前に、レッテルの「後片付け部隊」が真っ先に派遣されてくることはまず間違いない。天袖と無架の戦いが決着するまでオートロを天袖達に近づけさせないようにしていたラスノマィも、オートロが撤退したので彼らの作戦が終了したと判断し、無架に殺された天袖を回収しに来ていた。

 腕を切られ、完膚なきまでに叩きのめされた天袖の死体。

 雨に濡れるその死体に向かって、ラスノマィは話しかけた。


「……二回目はできたのか?」


 誰に? ……もちろん、「生き返った」天袖に対して、だ。

 天袖に話しかけるラスノマィの声に緊張感はなく、怒りや安堵のため息もない。

 当然彼女は知っていた。無架には絶対に勝てないこと、天袖が負けたり死んだ程度でいなくなったりはいないということを。ただそこに「天袖は無架から吸血できるか」が挟み込まれるだけ。……これは、最初から結果の見えている戦いだった。

 ラスノマィがオートロを足止めし、オートロの武装を破壊し尽していたのも、天袖の死体を回収させないためだ。

 ラスノマィの問いかけに、天袖は悔しさをにじませる。


「できたけど、取られた……」


 言って、天袖は左腕で顔を覆う。切断された腕も再生していた。


「取られた? 吸血し返されたのか」


「……うん」


「……そっか」


 それは、天袖の負けだ。これではただ無架に殺されただけ。

 だが、これでもう天袖が無架に命を狙われることはない。生きていることを知られればまた狙われるに違いないが、そうなる前にさっさと街を出てしまえばいい。……天袖は絶対に拒否するということを考えて、ラスノマィは首を横に振った。


「…………」


 ラスノマィの手を借りて立ち上がる天袖。その顔は、何かの思案顔。


「どした?」


 彼らの居場所へ戻るためのゲートを黎術でこじ開けながら、ラスノマィは天袖にその顔の意味を問いかける。天袖はラスノマィの目を見て、口を開いた。


「……前さ、らすのみは『異世界転生は事実上不可能だ』って、言ってたよね」


 意味不明な問いかけに、ゲートの中に架けていたラスノマィの指が外れる。


「……言ってたっけ? ってかなんでフィクションの話?」


 ゲートをかけ直しながら、ラスノマィは天袖に問い返した。趣味娯楽を知らない天袖からそんな単語が出るとは思ってもいなかった。


「フィクションじゃないよ。碌亡の持ってた絵本のことが、この世界ならどれだけ『できそう』なのかなって話、したじゃん」


 絵本。自分の描いていたものと漫画の区別がついていない。

 別人のようなことを言い出したから驚きはしたが、単にそれについて話したいというだけのようだ。

 ラスノマィは安堵した。……そして、天袖の質問に応える。


「……あー、したっけ?」


 といっても、ラスノマィの中にある天袖との思い出話などすべてが大切すぎて、どれのことなのか逆に思い出せない。大切な思い出を一つのファイルにまとめて保管しているのではなく、一つ一つをデスクトップに飾っているようなものなのだから。


「可能性を跨ぐなら穴からしかない、でもこっちの世界から出ていこうとしたり入って来ようとしたりするなら、穴の中の域物に殺される、って」


 天袖の言葉がラスノマィの記憶を呼び起こす。……確かに、話した。彼女の記憶では確か、何に対しても臆病になっていた天袖の気を引きたくて、碌亡が読んでいた本を借りて(ぶんどって)二人で一緒に読んだものだ。……文字は読めなくて、大半は絵や碌亡から聞いた単語のことだけしか話せていないけれど。


「……ああ、言ってたような気もするけど、それがどうしたんだ?」


 その問いかけに、天袖は無架との戦闘中、彼が掴んでいた違和感を話す。




「……無架って、この世界の人間なのかな」




「――」


 衝撃が、ラスノマィから言葉を奪った。


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