第19話「遅すぎた罪禍の突き付けと、無情すぎる救済」
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『!?』
オートロが天袖を暗殺する為に配置した闇の部隊「コラカゲ」。
彼らの攻撃に隙はなく、彼らの配置にミスはない。三六〇度、地面はちょっとお留守だけども、そこ以外に死角はない。
何があろうとも全身全霊で撃ち抜く。手加減なんて考えない、同士討ちなんて考えない。命じられた命を刈り取る為に。
ベンチに座ったままの天袖は実に隙だらけ。彼の背後、一番近くに迫っていた「コラカゲ」も、あと一秒さえ間に合っていれば、攻撃が天袖の胴を貫いていたのは間違いない。
「……っ!?」
彼らの突撃を押し返す——そんな突風が吹かなければ。
天袖に迫っていた二二の刃。そのどれもが、実際に天袖に刃を届かせる事なく吹き飛ばされる。
(……ナンダ!?)
その攻撃が上空からだということに気づけたのが、オートロの幸運だった。
全力でその場を飛び退く——のではなく、機能の半分を犠牲にしてでも、擬態を緊急解除して天袖に向かって跳ぶ。……攻撃はすぐにやってきた。
肌を切り裂くような冷たさに、吹き荒ぶ冷風。数瞬前までオートロがいた場所は、極低の冷気によって白銀世界へと変貌。天袖を中心に数十センチの空間を残して、全てが停止していた。
『……ッ、……ギリ、ギリカ……!』
オートロ達への攻撃——それは、天袖を護るための攻撃。
であれば、天袖の近くに行けば攻撃を回避できるということになる。
『……ッ、……ハァ、ハァ……!』
必死に飛び込んで、オートロは身をもってその説を証明していた。
「……もういい?」
飛び込んできたオートロをキャッチした天袖が、腕の中のオートロに問いかける。
『……アァ、助カッ、……ゥグ!?』
命を狙われているというのに、緊張感の無いヤツだ——そう思った矢先、オートロの体は浮き上がり、誰かに投げ飛ばされた。
凍りついた木に叩きつけられて、地面に落ちる。
『……グッ、……誰ダ!?』
よろよろと、残ったアームで体を支え……浮遊機能を瞬時に取り戻す。
オートロが自力で移動できるのは自分で転がったり浮遊機能を有していたりするからだが、掴まれて投げられる瞬間、オートロは氷漬けにされていた。
機能を凍てつかせられていたために、宙を浮く力を失って木に激突したのだ。
オートロを、一瞬とはいえ完全に凍結させる。そんな芸当が可能な敵の出現に、オートロは戦慄していた。
「ばーか。敵に名乗る名前なんてあるかよ、テメェ」
天袖とオートロの間に立ち、オートロを睨みつける正体不明の——敵。
「らすのみ……」
予想もしていなかった人物の登場に、天袖は思わずその名を呟く。
「…………」
『ラスノミ……アァ、家族カ。イツダカ言ッテタネ』
くるり。……反転して、ラスノマィは天袖の頬を引っ張った。
「……教えないって、言ったばっかりだよな? それをなんで言うんだ? ああ?」
「いひゃい」
緊張感の無いやり取り。まるでオートロが彼らの視界の中に居ないようだ。
——今ならやれる。……そうオートロが思い、行動しようとした瞬間。
「……やめとけよ。〝七権獄〟は未だ発動中だ。一瞬でも【敵対行動】をすると再び囚われるぞ」
『…………っ!!』
武器が。……音もなく突き刺せる筈だったオートロの槍が、いつの間にか凍結していた。
確実に殺せる。そう確信していたオートロの自信は一瞬でひっくり返されていた。
その驚きのあまり、オートロは——
『……っ、何なんだお前!? 権能縛りだぞ!?』
「やってんのは、ボクだけどわたしだってじゃねぇよ。……天袖だ」
『……!?』
天袖を見る。……だが、そのきょとんとした顔には、相変わらず殺意のかけらも無い。
「……それにお前。言葉が剥がれてるけど、良いのか?」
『————』
振り回されている。……それを自覚して、オートロは黙り込んだ。
『…………』
黙り込む代わりに、今まで寝ていた「コラカゲ」達を天袖達に差し向ける。
ラスノマィは、降ってきた時と同じように風で吹き飛ばすのではなく、今度は天袖を抱えて上空に跳んだ。
(……〝七権獄〟に反応しない……こいつら死人か?)
「……そいつら、人間じゃないのな」
普通の人間であれば、この短時間に起き上がってくることすらあり得ない。答えの確認を求めない独り言のようなラスノマィの科白に、オートロは新しく生やしたアームを構える。
『……ドウスル?』
「……帰るよ。馬鹿に仕置きもしなきゃいけないしな」
ラスノマィは天袖を睨んだ。……それに、天袖は俯く。
『……ソウカ。——なら、思いっきりぶん殴ってやってくれ。そいつに血を吸われたせいで無架は重症だからな』
声が変わる。——より憎しみのこもった声へと。
「……え」
それを聞いて天袖の表情が変わり、
『——タマタマ日光ニ体ヲ晒シタセイデ半身火傷状態。戦闘ニモ復帰出来ナクナッタ。……ドウシテクレルンダ、ナア!?』
「……なら、人間の血を吸わせろ。それでそいつは自前の回復力で治る」
オートロとは対照的に、あくまでも冷静に——ラスノマィは言った。
『何故ソウ言イ切レル』
「『吸血鬼化の対策はしていた筈なのに吸血鬼化してしまった』——だろ?」
『……………………』
「ならそれで治るよ。……それで、もう二度と日光には肌を晒すな。天袖に接触する気がないなら、だけど」
『……ソノ情報ニハ、感謝スル』
「別にいいよ。元はと言えばコイツがボクだけどわたしだってに無断で、他人から吸血したのが悪い。それじゃあ」
言って、ラスノマィと天袖は姿を消す。何かを潜って、何処かへと消えてしまった。
『……トリアエズ、帰ルカ』
……無断で勝手な行動に出たのはオートロも同じだ。
この後の報告はどうあっても穏便には済みそうに無いな——と、統括長と無架の二人の顔を思い浮かべながら、オートロは「コラカゲ」達に帰還を命じた。




