表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

よう来たな、まぁ座れや B面

特別を与える者

作者: たんばりん

2021年 テレビ一体型のブルーレイレコーダーが壊れた時のお話



 妻はいつも特別をくれる。


 何気ない日常、ごく当たり前の行動。多くの者が忘れ去るような思い出。そんな「普通」に妻は魔法をかける。


 バスガイドの案内に1人相槌を打っている。ホテルに泊まれば「お客さまの意見」に感謝の言葉を書く。外で食事をすれば「アレコレがおいしかった」と感想を伝える。


 そんなこと、と人は言う。


 しかし私は想像する。いつも一人でしゃべっているバスガイドは、返事をもらえて張り合いが出たのではないかと。毎日のルーチンワークでベッドメイクをしているホテルマンは、感想がもらえて嬉しかったのではないかと。おいしいと評価されたシェフはより一層力を入れて料理を作るのではないかと。


 もちろんみんな仕事でやっているのだ、そんなものがなくったって働くだろう。だけど。


 いつもの仕事、いつもの行動、変わらない日常として消費されていく思い出。そんな忘れられてしまう記憶に、妻の言葉はストップをかける。


 それは私に対しても同じだ。


 妻のテレビについているブルーレイレコーダーが壊れ、ディスクへのダビングができなくなったのだ。どうしよう、と妻が言う。どうしようも何も修理依頼すれば良いだけだ。私はテレビメーカーに連絡する。古いテレビは部品がなく直らないかもと言われたが、やがてエンジニアから修理できそうだとの連絡があった。


 修理の日時を決めて電話を終えると、一連の行動を横で見ていた妻が言う。


「凄い、ありがとう」


 誰が見たって凄くない。誰もが当たり前にやっていることだ。だが妻はそんな当たり前を拾い上げ、凄いと言ってくれる。それだけで、忘れられるはすの日常が私の記憶に残るのだ。特別な出来事として。


だから妻よ、私からも言わせてくれ。


「いつも特別をありがとう」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
挿絵(By みてみん)
― 新着の感想 ―
[良い点] なんてすてきなリア充!!!(嫉妬とかはないですよ!!) 素晴らしい奥様、素晴らしい旦那様で、ほっこりします(*'ω'*)
[一言]  素敵。心があたたまるエッセイをありがとうございます
[一言] イイハナシダナー! まぁ、日常的にありがとうって言うのって素敵ですよね。そんな当たり前のことなんですけど、エッセイとしてまとめた作品みると、なんだかとても胸に来ます。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ