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第5話:討伐部隊に何とか置いてもらえそうです

しばらく待っていると、奥から男性2人を連れた案内人がやって来た。1人は銀色の髪に金色の瞳をした物凄い美青年。もう1人は緑色の髪にグレーの瞳をしたこれまた美青年。ここは美青年パラダイスなの?そう勘違いしてしまう程、2人共とても美しい顔をしていたのだ。


「おい、お前ふざけているのか!!!女は二度とよこすなとあれほど言っただろう!!」


「も…申し訳ございません!エミリア王女の指示でございまして。それでは私はこれで!」


銀色の髪の男性に怒鳴りつけられ、物凄いスピードで帰って行く案内人。


「お前、どういうつもりでここに来たんだ!俺たちを追って来たのなら、とっとと帰れ!」


物凄くドスの効いた声で私を睨みつける男性。ヒィィィィ、怖すぎる!


「ウィリアム、そんな怖い声を出したから、彼女が怯えているよ。僕は副騎士団長のデビッド、こっちは騎士団長のウィリアムだよ。それで、どうして君はここに来たのだい?」


緑色の髪の人が話しかけて来た。どうやらこの人は優しそうだ。


「エミリア王女に、討伐部隊に参加する様に命じられたのです。それで、ここに来ました」


「クソ、あの女!本当にろくでもない事をしやがる!!」


青筋を立てて怒鳴る騎士団長。美しい顔が台無しだ…


「なるほど、という事は、僕達目当てで来た訳ではなさそうだね。でも、この場所は物凄く危険だよ。既に沢山の騎士が命を落としている。君の様な令嬢では、秒殺で殺されちゃうよ」


悪い事は言わないから帰りなさい!そう言いたげだ。でも、私は帰る訳には行かない。大切な家族と使用人の運命がかかっているのだ。


「なんな事は百も承知です。でも、私はどうしても帰る事が出来ない事情があるのです!正直魔法もあまり使った事がありませんし、きっと足手まといになるかとは思いますが、死に物狂いで頑張ります。だから、どうかここに置いてください。お願いします!」


必死に頭を下げた。そう、もう私にはここで生き残っていくしか道は残されていないのだ!


「そこまで言うなら置いてやってもいい!ただ、俺は女は大嫌いなんだ。だからお前を男として接する。それでもいいか?」


「はい!大丈夫です!」


こんなにお美しい顔をしているのに、女嫌いなのね。まあ、そんな事はどうでもいいわ。


「ウィリアムもそう言っているし、よろしくね。それで、君の名前は?」


「クレアと申します」


「クレアね。よろしく!それじゃあ、早速皆に君を紹介するよ。こっちにおいで」


優しい副団長に連れられ、テントがいくつも張られている場所へとやって来た。


「皆、ちょっと集まってくれ」


副騎士団長の言葉で、皆が集まって来た。ざっと見たところ、20人程度しかいない。まさかこの少ない人数で、魔物と戦っているの?そんな疑問が湧いてきたが、さすがに今は聞けない。


「今日から僕達の仲間になったクレアだ。仲良くしてやってくれ」


「クレアです、どうぞよろしくお願いします」


しまった!つい、いつもの癖でカーテシーを決めてしまった。


「なんだ、どこかのお嬢様か。悪い事は言わない。こんな物騒なところから、早く逃げた方がいい。速攻で魔物に殺されるぞ」


何処からともなく言葉が飛んできた。その瞬間、笑い声が上がる。何なのよ、こいつら!バカにしないでよ!


私は腰に備え付けられている短刀を手に取った。そして次の瞬間、腰まであった長い髪を短刀でバッサリ切ったのだ。


「おいおい、正気か!そんな事をしたら、今後しばらくは令嬢として生きて行けないぞ!」


周りからざわめきが聞こえる。


「私は、この場所に家族の未来を背負って来ているのです!もう令嬢としての未来はとっくの昔に諦めているので、ご安心を!」


そうだ、私は家族を守る為にここにいている!ごめんね、マレア。あんなに髪は切るなと言われていたのに、速攻で切ってしまったわ。でも、後悔はない。これでもう後戻りはできなくなった。この地で、精一杯戦うのみだ。


「という事だから、これからよろしくね。さすがに長旅で疲れただろう。君の寝床に案内するよ。こっちにおいで」


副騎士団長に連れられ、やって来たのはテントだ。


「一応君は女性だから、1人でここを使ってくれ。それにしても、あんなにも奇麗な金髪だったのにね。ほら、こっちにおいで。整えてあげるよ」


そう言うと、肩くらいの長さになってしまった私の髪を、ナイフで整えてくれた副騎士団長。この人はやっぱり優しい。


「ありがとうございます、副騎士団長様」


「どういたしまして。とりあえず、今日は初日だからゆっくり休んで」


そう言って出て行った副騎士団長。やっぱり布団はない様で、ミノムシの様な物が1つ置いてあるだけだ。これはどうやって使うのかしら?


「やあ、クレア。俺はジーク。こっちはハル。俺たちがお前の面倒を見る事になったから、よろしくな」


そう言ってテントに入って来たのは、茶色の髪に茶色の瞳をしたジークという人と、金髪に緑の瞳をしたハルという男性だ。


「ジーク様、ハル様、どうぞよろしくお願いします」


「様は要らないよ。そもそも、様付けで呼ばれると、なんだか背中がくすぐったくなる」


そう言って笑ったジークとハル。


「それにしても、久しぶりの令嬢だな」


ん?久しぶりの令嬢。


「確かにな。クレアが来る少し前まで、よく騎士団長と副騎士団長目当てに令嬢たちがやって来ていたんだよ。大体1日もしないうちに逃げ出していたけれどな。でも、クレアは騎士団長や副騎士団長目当てでもなさそうだし。何でここに来たんだ?それに、さっき“家族の未来を背負っている”て言っていたよな。それってどういう事だ?」


どうしよう、初めてあった人に、今回の出来事を話してもいいのかしら?


「まあ、話したくないなら話さなくてもいいよ」


私の反応を見て、すかさずそう言ってくれたジーク。


「1つ聞いてもいいですか?」


「ああ、構わないよ。でも、敬語は無しな」


敬語もダメなのね。


「分かったわ。あの、魔物討伐部隊ってもっと大きな組織だと思っていたけれど、20人くらいの部隊なのね」


「ああ、あまり多いと騎士団長の目が行き届かないから嫌みたいだ。それに、弱っちい奴が来ても、騎士団長のスパルタに付いて行けずに、すぐに逃げ出すしな。だからいつも20人くらいかな」


なんですと?騎士団長のスパルタ?一体どれだけ厳しいのかしら?私、大丈夫かしら?一気に不安になって来た。


「おい、大丈夫か。顔色が悪いぞ…」


「ええ、大丈夫です!とにかく私はここに何が何でも残らないといけないの!どうか、よろしくお願いいたします」


物凄い勢いで頭を下げたせいか、若干引いているジークとハル。


「とにかく明日も早いし、今日はゆっくり休めよ。それじゃあな」


そう言ってテントから出て行こうとした2人。


「あの、ちょっと待って!これはどうやって使うの?」


そう、このミノムシみたいな物の使い方がよく分からないのだ。私の質問に、なぜか2人が顔を見合わせ、そしてお腹を抱えて笑い始めた。


「ハハハハハハ!クレアは本当に何にも知らないんだな!そんなんじゃあ速攻で騎士団長に追い返されるぞ!これはな、寝袋と言ってこうやって使うんだ!」


ハルが笑いながらも教えてくれた。どうやらこのミノムシに入って、自分がミノムシになって寝る様だ。


「ありがとう、ハル。とにかく自分がミノムシになればいいのね」


「ミノムシ?アハハハハハ!クレア、面白すぎ!」


なぜか再びお腹を抱えて笑う2人。なぜ笑われているのかよく分からないが、皆良い人そうで良かったわ。

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