第33話:思わぬ人物が乱入してきました
扉が開き、陛下、王妃様、王太子殿下の順でゆっくりと部屋に入って来た。そしてなぜかそのまま私の前へとやって来る。
「クレア嬢、王都に帰って来た時も話はしたが、エミリアのせいで酷い目に合わせてしまった事、本当に申し訳なく思っている。今回の件は、王族として有るまじき行いで、決して許される事ではない。本当にすまなかった」
陛下が深々と頭を下げた。さらに王妃様と王太子殿下も続けて頭を下げる。ちなみに謝罪はこれで2度目だ。どれだけ律儀なのかしら。
「皆様、どうか頭をお上げください。私は本当に大丈夫ですので」
慌ててそう伝えたのだが…
「何が大丈夫なんだ!あの女のせいで、どれほどクレアが傷ついたと思っているんだ!謝って済む問題ではない!」
隣でウィリアム様が陛下たちを怒鳴りつけている。
「そう怒るな、ウィリアム。クレア嬢には申し訳ないと思ったから、お前の望む通りに話は進めてある」
「当たり前だ!そもそも、お前たち王族があの女を甘やかしたから、ろくでもない女になったんだろう。あれくらいしてもらって当然だ!」
そう言えば、王太子殿下とウィリアム様は従兄弟なのよね。そう考えると、改めてウィリアム様って凄い人よね。
「とにかく、クレア嬢には今後しっかり償いをさせてもらうつもりだ!クレア嬢、私たちに出来る事があったら何でも言ってくれ」
「ありがとうございます」
特に何かを望む事はないが、とりあえずお礼だけは言っておいた。
「それから魔物討伐部隊の団員たち。ジャイアントスネークを倒すと言う快挙を成し遂げてくれた事、心より感謝する。そして褒美だが、事前に希望する事を聞いていたのだが、概ね希望通りの褒美を与えるつもりだ。さらにそれとは別に、1人5000万ベルを与える事になった」
「5000万ベルだって!褒美だけでなく、金まで貰えるのか。それも大金じゃないか!」
周りからざわめきが起こる。確か平民の年収が250~500万ベル程度だから、大体10~20年分のお金ね。これは大きいわ!
「そう言えば、クレア嬢からはまだ褒美の話を聞いていなかったね。何がいいかい?」
急に褒美と言われても…しばらく考え込むが思いつかない。
「また決まったら教えてくれ。君が伝説の騎士で、ジャイアントスネークを倒した張本人と聞いている。遠慮はいらん。何でも好きな物を言ってくれていいからね」
そう言って微笑んだ陛下。何でもと言われると、余計困る。後でウィリアム様にも相談してみよう。
「それじゃあ、各自の褒美内容が書かれた書類を今から配る。希望した褒美内容と差異が無いか確認してくれ」
陛下が近くにいた執事たちに指示を出した。次々に書類が配られていく。もちろん、ウィリアム様にも配られた。書類に目を通すウィリアム様。なんと書かれているのかしら?気になるわ!そんな私に気が付いたウィリアム様が話しかけて来た。
「クレア、俺は侯爵になる様だ。比較的温暖で作物もよく育つ領地を貰える事になった。ちなみに、新しい苗字はバーケットだ。君の家と家の苗字を掛け合わせて、俺が決めたんだ」
なるほど、確かに今の苗字でもあるバーレッジ性は、義兄様が継いでいるから使えない。その為、新しく爵位を受ける場合は、新しい苗字を準備する必要がある様だ。
「ウィリアム様は侯爵様になるのですね。凄いですわ。それに、新しい苗字も素敵です!」
結婚と同時に新しい苗字を名乗るらしい。という事は、私はクレア・バーケットになるのね。なんだかあまり変わり映えがしない気がするが、まあいいか。
ふと周りを見渡すと、皆嬉しそうに書類を眺めていた。一体皆、何をご褒美に貰ったのかしら?後で聞いてみよう。
その時だった。
バン!
豪快にドアが開いたと思ったら、物凄い勢いでエミリア王女が入って来た。
「ウィリアム、やっぱり来ていたのね!会いたかったわ!」
そう叫びながら、嬉しそうにこちらに走って来るエミリア王女。私を押し退け、ウィリアム様に抱き着こうとしたところを、突き飛ばされていた。
「ちょっと、ウィリアム!何をするの!」
ウィリアム様に文句を言うエミリア王女。
「何をするだって?俺に触れようとしたから、それを拒んだまでだ!そもそも、俺に触れるな!俺に触れていいのは、ここにいる婚約者のクレアだけだ!」
私の腰を抱き、はっきりとそう告げたウィリアム様。今までに見た事が無いほど冷たい目で、エミリア王女を睨みつけている。
「クレア嬢!あなたのせいで、私は酷い目に合ったのよ!サミュエルはあなたに返すわ!だから、ウィリアムは私が貰うから!そもそも、ウィリアムは元々私のものだったのよ!この泥棒猫!」
「誰が泥棒猫だ!もとはと言えば、お前がクレアから体を使って婚約者を奪い、さらに魔物討伐部隊にまで入れたくせに、よくそんな事が言えるな!俺はお前の様な我が儘で傲慢で、男にだらしない女は大嫌いなんだ!二度と俺の前に姿を現すな!視界に入るだけで腹ただしい!おい、ブライアン!なぜこの女がまだ王宮にいるんだ!隣国に送り込んだのではなかったのか!」
物凄い勢いで王太子殿下に詰め寄るウィリアム様。隣国に送り込むとはどういう事だろう。
「もちろん手配は整えているよ。先方も若い嫁が貰えると喜んでいるし!でも、エミリアが嫌がってね。どうしても嫁ぎたくないと、駄々をこねているんだよ」
「当たり前でしょう!どうして私があのデブハゲオヤジの元に嫁がないといけないのよ!それも、一回りも上なのよ!絶対にイヤ!」
「仕方ないでしょう!あなたは色々な男性と体の関係を持っていた事が、国中の噂になっているのよ。相手は隣国の第三王子だし。男にだらしないあなたでもいいと言ってくれているの!確かに見た目は少し残念かもしれないけれど、男は見た目ではないわ!」
王妃様がエミリア王女に諭している。どうやら隣国の第三王子に輿入れする事が決まったようだが、当の王女は嫌がっている様だ。
その時だった。
「やっぱりここにいたんだね。エミリア!」
部屋に入って来たのは小太りの男性だ。頭は…残念な事になっている。
「ギャー!どうしてあなたがここに居るのよ!助けて、ウィリアム!」
ウィリアム様に抱き着こうとしたエミリア王女をかわし、首根っこを掴むと、そのまま小太りの男性に差し出した。
「殿下、お久しぶりです!わざわざこれを引き取りに来てくださったのですね。ありがとうございます。さっさと持って帰って下さい!もちろん、返品不可でお願いします」
そう言って、笑顔でエミリア王女を差し出すウィリアム様。
「ウィリアム殿、久しぶりだね。そうそう、王太子殿下から聞いたよ。君がエミリアを僕の元に嫁がせてはどうかと提案してくれたみたいだね。ありがとう、僕はずっとエミリアが好きだったんだ!それじゃあエミリア、行こうか?」
そう言うと、エミリア王女を担いだ小太りの男性。
「嫌!絶対に嫌!助けて、ウィリアム!」
必死に叫ぶエミリア王女に、笑顔で手を振るウィリアム様。
あまりの突然の出来事に、皆口をポカンと開けている。
「コホン、皆の者、褒美に目を通してもらったかな?申請した褒美と差異があった者はいないか?」
今起こった出来事を、どうやら無かった事にした陛下が、皆に褒美の差異を確認している。騎士団の皆も、なぜか普通に「ありません」と答えている。
「それでは、今日はこれで解散とする。皆の者、わざわざ足を運んでもらってすまなかったな。気を付けて帰ってくれ」
そして当たり前の様に解散となった。
気になるエミリア王女だが、第三王子に連れられ、そのまま隣国へと向かったらしい。ウィリアム様の話では、第三王子は見た目が残念なだけでなく、極度のマザコンとの事。そのせいで、嫁の来てが無かったらしく、30過ぎてもずっと良い縁談に恵まれなかったらしい。
いくら第三王子とはいえ、そんな人の元に嫁がせるなんて、さすがに可愛そうな気もしたのだが…
「あの女は少し苦労した方がいい!それに、王族共も同意しているのだから、問題はないよ」
そう言い切ったウィリアム様。まあ身内が同意しているのなら、私がとやかく言う事は出来ない。何はともあれ、もうエミリア王女に何か言われる事はなさそうだ。
少し優しめでしたが、とりあえずエミリア王女のざまぁ無事終わりました。エミリア王女はとにかく美しいものが大好き。そんな王女にとって、見た目が残念な男性に嫁ぐ事は、屈辱でしかありません。
あと少しで完結予定です。
もうしばらくお付き合い頂ければ嬉しいですm(__)m
よろしくお願いしますm(__)m




