第32話:久しぶりに会った仲間たちは相変わらずでした
ウィリアム様と一緒に向かったのは、大広間だ。大広間に入ると、沢山の騎士たちが既に来ていた。
「クレア、久しぶりだな!元気にしていたか?」
私達を見つけると、皆一斉にこちらにやって来て、一気に囲まれた。
「皆、久しぶり!私は元気よ。皆も元気そうでよかったわ!」
「それにしても、討伐の時に着て来た服を着ているのか。せっかくクレアのドレス姿、楽しみにしていたのにな」
「本当にな。まさかズボンで来るなんて残念だ!」
えっ!皆私のドレス姿を楽しみにしていたの?それは予想外ね。
「でもクレアは、どんな姿でも魅力的だよ」
そう言ってくれたのは、副騎士団長だ。
「お前たち、黙って聞いていれば好き勝手言いやがって!大体クレアに馴れ馴れしく触るな!俺の婚約者だぞ!だからこんなむさ苦しい野郎どもがいる場所には連れて来たくなかったんだ!」
すかさず私を輪から引っ張り出すと、ギューッと抱きしめるウィリアム様。
「相変わらず騎士団長は嫉妬深いな。これじゃあクレアも大変だ」
「本当だな」
そう言って笑いが起きた。
その時だった。
ゆっくりとドアが開いたと思ったら、そこにはジークの姿が。
「ジーク!」
ウィリアム様の腕から抜け出すと、そのままジークに抱き着いた。
「ジーク、元気そうでよかったわ!もう怪我は大丈夫なの?ジークが大変な時に、意識を失っていてごめんなさい」
「クレアも元気そうでよかった。怪我は王宮治癒師に治してもらったから、もう大丈夫だ。来週から騎士団にも復帰予定だ。クレア、あの時俺を助けてくれてありがとう。お前のおかげで命拾いしたよ。メスのジャイアントスネークも倒したんだってな。凄いじゃん!」
そう言って頭を撫でてくれるジーク。
その時だった。
「クレア、いつまでジークにくっ付いているつもりだ?」
ウィリアム様の物凄く低くドスの効いた声が聞こえて来た。しまった…つい嬉しくてジークに抱き着いてしまった。
ゆっくりジークから離れた。その瞬間、すぐにウィリアム様に抱きしめられた。
「ジーク、クレアと俺は婚約を結んだんだ!そして、後2ヶ月半後には結婚する事も決まっている」
「知っていますよ。おめでとうございます」
ジークが気まずそうにそう言った。どうしよう、明らかにウィリアム様が怒っている。
「知っているなら、クレアにあまり馴れ馴れしくしないでくれ!クレア、婚約者がいるのに他の男に抱き着くとは、一体どういう事だ!」
今度は私の方を見たウィリアム様。怖い…怖すぎる…
「ジークは兄みたいなものでして。嬉しくてつい…以後気を付けます」
「確かにクレアがジークを兄の様に慕っているのは知っている!でも、だからって抱き着いていい理由にはならない!今回は見逃してやるが、次はない!覚えておけ!」
ひぃぃぃぃ
昔の恐ろしかった騎士団長だわ!最近ウィリアム様が優しかったから、すっかり油断してしまった。
「ウィリアム、そんな恐ろしい顔をしているから、クレアが怯えているだろう。本当に嫉妬深い男は嫌だね。せっかく感動の再会をしていたのに、水を差すだなんて」
私達の間に入って来たのは副騎士団長だ。今のウィリアム様に文句を言えるのは、彼くらいしかいない。
「お前は黙っていろ!たとえ感動の再会でも、抱き合う必要はない!」
「副騎士団長様、庇っていただきありがとうございます。でも、今回は私が軽率な行動を取ってしまったので、ウィリアム様に怒られても仕方がないですわ。ウィリアム様、ごめんなさい。ジークも、迷惑を掛けてごめんね」
とにかく皆に謝った。これで落ち着いたわよね。でも、何とも言えない空気が流れている。せっかく皆と再会できたのに!何とかしないと!そう思った時、ふいに口を開いたのはハルだ。
「それにしても、騎士団長は少し嫉妬深すぎますよ。あまり嫉妬深いと、クレアに逃げられますよ」
今それを言うの?これはウィリアム様の怒りに油を注ぐだけでは!そう思っただのが…
「クレア、騎士団長の事嫌になったら、俺が貰ってやるよ」
「俺も候補に入れてくれ」
「俺も」
「僕も」
なぜか一気に盛り上がる団員たち。
「お前ら、ふざけるな!クレアは俺の婚約者だ!どうしてもクレアが欲しい奴は、俺を倒してからにしろ!いつでも相手になるぞ」
ニヤリと笑ったウィリアム様。
「騎士団長に勝てる奴なんてこの世にいないぞ!」
「無理だ」
なぜか頭を抱える団員たち。
「ほらお前たち、命が惜しければクレアの事は諦めろ!騎士団長、クレアの事幸せにしてやってくださいよ。あいつ、色々と苦労しているみたいだから」
「わかっている!命に代えても幸せにする。だから安心しろ、ジーク」
なぜかがっちり握手を交わすウィリアム様とジーク。何なのかしら、この光景は…
それにしても、皆相変わらずね。こうやって皆を見ていると、なんだか物凄く心が温かくなる。
その時だった
「皆の者、静粛に!国王陛下と王妃様、王太子殿下がご入場されます」
その言葉を聞き、皆服装を整え、背筋を伸ばす。
いよいよね!




