第21話:最終決戦を迎えます
翌日、いつも通り朝早く起き、朝食、さらに昼食の準備も行う。またこの前みたいに意識を無くすといけないので、念のため夕食の準備もしておいた。
「クレア、ちょっといいか?」
私を呼び出したのは騎士団長と副騎士団長だ。一体どうしたのかしら?まさか、足手まといだから付いて来るな、とかじゃないわよね。
「クレア、単刀直入に言う。お前はどうやら伝説の騎士の様だ」
伝説の騎士?なんだそれは?
「伝説の騎士とはね。100年に一度産まれると言われる騎士で、どんな魔物でも光の力で倒すと言われる、いわば無敵の騎士という事だよ。この前の討伐の時、クレアの放った光で確信したんだ。君が伝説の騎士だってね」
「私が…伝説の騎士?」
あり得ない!私は今まで普通の伯爵令嬢として生きて来たのだ。そんな物凄い力を持った騎士だなんて!
「クレア、信じられないかもしれないが、これは事実だ。そして前回の戦いで、お前の中に眠る力が完全に目覚めた様だ。クレア、ジャイアントスネークのメスは、お前が倒せ!」
騎士団長、今なんて言いましたか?
「あの、騎士団長様?」
「もちろん、俺も側にいるし、他の隊員たちもお前を援護する。ジャイアントスネークのオスが退治されたことで、洞窟内ではメスを守ろうと、沢山の魔物が集まっているはずだ。とにかく、俺たちがその魔物たちを倒すから、お前はメスを倒せ。それしか、俺たちに勝算はない」
真剣な顔で話す騎士団長。
「分かりました。騎士団長様がそうおっしゃるのなら、私、精一杯頑張ります!」
私の言葉を聞き、困った顔で笑った騎士団長に頭を撫でられた。
「本当は、お前にこんな恐ろしい事を頼みたくはないのだが…すまない…」
「大丈夫ですわ。ただ、出来るかどうか分かりませんが頑張ります!」
次の瞬間、騎士団長に抱きしめられた。最近よく抱きしめられるが、やはり抱きしめられると嬉しいものだ。つい抱きしめ返してしまった。
「は~、完全に両想いじゃん…何この茶番劇…」
隣で副騎士団長が何かを呟いているが、声が小さすぎて聞こえなかった。なんて言ったのかしら?
「それじゃあ、行こうか!」
私から離れた騎士団長の掛け声で皆の元へと向かう。そして、さっきの作戦を他の隊員たちにも話していた。
「クレアが伝説の騎士…」
皆かなり驚いている。そりゃそうだろう。私も正直信じられないのだ。
「クレア、お前が伝説の騎士だったんだな。俺はお前と一緒に戦えて誇りに思うよ。しっかり援護してやるから、ジャイアントスネークのメスを必ず倒せよ」
そう言って励ましてくれたのはハルだ。周りの皆も頷いている。
「さあ、行くぞ!」
騎士団長の言葉で、皆馬にまたがる。もちろん私は、騎士団長の馬に乗せてもらった。なんだかこの場所が、私専用の特等席の様な気がして少し嬉しい。
馬を走らせること15分。あの洞窟に着いた。この前とは違い、洞窟の近くには沢山の魔物たちがいた。きっとジャイアントスネークのメスを守っているのだろう。
「洞窟の外で戦う部隊と中で戦う部隊に別れよう。デビッド、お前は外の部隊を率いてくれ」
「分かった!」
「とにかく一気に洞窟の奥を目指すぞ!クレア、お前は極力戦うな。俺がお前をジャイアントスネークのメスの元まで連れて行く。他の者は援護を頼む」
「任せてください!」
どうやら話はまとまった様だ。
「それじゃあ行くぞ。僕について来い!」
副騎士団長と外で戦う部隊が一斉に魔物たちに攻撃を仕掛けた。
「今だ!中に急げ!」
一気に馬を走らせる騎士団長。それに続く隊員たち。それにしても、物凄く広い洞窟だ。馬を普通に走らせても、余裕で通れる。しばらく走って行くと、魔物の群れが現れた。
「炎」
皆が一気に攻撃を掛ける。
「騎士団長!ここは俺たちが引き受けます。クレアを連れて早く奥へ」
そう叫んだのはハルだ!
「すまない、ここは頼んだぞ!」
さらに奥に進んでいく。しばらく進むと、いた!ジャイアントスネークだ。オスの2倍はあるであろう大きな体。とぐろを巻いてこちらを睨みつけている。周りにはいくつもの卵がある。きっとあの卵から魔物が産まれるのだろう。
あまりの大きさに、怖くなって騎士団長にギューッとしがみつく。
「大丈夫か?」
そう言って私を包み込むように抱きしめてくれる騎士団長。騎士団長の温もりを感じ、少し落ち着いたところで、2人で馬から降りた。
次の瞬間、毒を吐きかけて来た。そして物凄いスピードでこちらにやって来る。
毒がかからない様に、バリア魔法を掛ける騎士団長。いよいよね!
こちらにやって来るジャイアントスネークに向かって手をかざす。そして、魔力を集中させる。私の中に眠る魔力よ、今目覚めて!
次の瞬間、物凄い光が洞窟中を包み込む。
「ぐぁぁぁぁぁぁ」
ジャイアントスネークのうめき声が聞こえた。倒せたのかしら?でも、魔力を使いすぎたのか、体に力が入らない。
「クレア、大丈夫か?」
「ハーハー、何とか…大丈夫です…」
そのまま騎士団長に抱きかかえられた。ふと辺りをを見わたすと、ジャイアントスネークが横たわっている。こうやって見ると、やっぱり物凄く気持ち悪い。近くにあった卵も全て割れていた。
「騎士団長、クレア!大丈夫か?」
ハルたちが物凄い勢いでこちらに向かって来た。
「ああ、クレアが一撃で倒したからな!」
倒れているジャイアントスネークを見つめるハル達。
「お前、あれを一撃で倒したのか…」
明らかに引いているのが分かる。止めて、そんな目で見ないで!
「それで、他の魔物たちはどうした?」
「クレアの放った光のおかげで、一瞬で消えました。それにしても、どんだけクレアの力は凄いんだよ」
そう言って苦笑いをしている。
「とにかく戻ろう」
騎士団長に抱きかかえられたまま、馬に乗せられた。横抱きのまま、騎士団長の膝の上に座る形になっている。
「騎士団長様、それでは辛いでしょう。いつも通りの乗り方で大丈夫です」
そう訴えたのだが…
「そんな事は気にしなくてもいい。とにかくしっかり捕まっていればいいから」
そう言って優しく微笑んでくれた騎士団長。その笑顔が物凄く眩しくて、そして何より私の鼓動がうるさい。ギューッと騎士団長に抱き着き、顔を埋めた。騎士団長の温もりをいつも以上に感じる。
このまま、ずっとこうして居られたらいいのに…そんな身勝手な考えまで浮かんでしまう。
でも、ジャイアントスネークを倒した今、もう王都に帰るだけだ。帰ったら、もう二度と騎士団長には会えないだろう。そう思ったら、また胸が苦しくなった。
今だけ、今だけはこの温もりを感じていたい…




