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第14話:両親から手紙が届きました

体調を崩した2日後。すっかり体調も戻ったので、今日から討伐に参加だ!早速森の奥に入って行くと、魔物の群れが現れた。いつも通り、攻撃魔法を掛けて行く。


「クレア、後ろ!」


ジークの声で慌てて振り返るが、既に魔物がすぐ後ろに迫っていた。しまった!やられる!そう思ったのだが、どこからともなく炎が飛んできて、魔物を焼き尽くした。


「おい、大丈夫か?」


私の元に駆け寄ってきたのは騎士団長だ。どうやら騎士団長が炎を放って助けてくれた様だ。


「騎士団長様、助けていただきありがとうございました」


きっと怒鳴られる!そう覚悟しながら頭を下げたのだが…


「怪我は無いか?」


なぜか心配そうに私の顔を覗き込む騎士団長。その瞳からは、怒りが感じられない。


「はい、大丈夫です」


「それならよかった。とにかく敵に背を向けない様に気を付けろ」


「はい!気を付けます」


なぜか怒鳴られなかった。いつもなら絶対怒鳴られるのに!一体どうしたのかしら?


その後も順調に魔物を倒し、いつもの様に午前中には討伐は終わった。急いで食事の準備をして皆に振舞う。


午後の稽古は皆と一緒に行った。そう、最近は騎士団長直々の稽古は無くなり、皆と平和に稽古をしている。有難いのだが、なんだか物足りない気もするのはなんでだろう。


ただ、なぜか私を気に掛けてくれる騎士団長。色々とアドバイスもくれる。あんなに怒鳴り散らかしていた騎士団長が、まるで別人の様になった。もしかして、別の人物が憑りついたのかしら?


そう思う程、怒鳴られなくなったのだ。あまりの変わりように


「騎士団長って元々あまり怒鳴らない人なの?」


そうジークとハルに聞いた。


「お前鈍いな。まあ、お前のおかげで俺たちもあまり怒鳴られなくなったから、有難いんだけれどな」


全く回答になっていない事を言って笑っているジークとハル。言っている意味がさっぱり分からない。


午後の稽古を終え、夕食を食べた後は恒例のティータイムだ。今日はマフィンを焼いた。そう、このティータイムが物凄く好評なのだ。いつもの様に、ジークとハルの側に行こうとした時、騎士団長に呼ばれた。


「ちょっといいか?渡したいものがあるんだ」


渡したいもの?なんだろう?とにかく、騎士団長に付いて行く。


「これ、お前の両親からの手紙だ。俺宛の手紙の中に入っていた。お前に渡してくれとの事だ」


そう言って手紙を渡してくれた騎士団長。両親からの手紙。そう思ったら、緊張で手が震えた。


「ありがとうございます。でも、どうして騎士団長様宛の手紙の中に、家の両親からの手紙があったのでしょうか?」


「どうやら俺の母親に、お前の両親が頼んだようだ。ん?逆か。俺の母親がお前の両親に手紙を渡してやるから書けと言ったのか?」


騎士団長の言っている意味がよく分からないが、とにかく有難く受け取っておいた。


なんて書かれてあるのかしら?気になるが、今は皆もいるし後で読もう。急いで皆の元へと戻った。


「クレア、騎士団長に何か言われたのか?」


なぜかニヤニヤしながらこちらを見て来るジークとハル。


「うちの両親から手紙を預かったみたいで、渡してくれたの」


「なんだ…でも、よかったな」


なんだとは何なのよ!この人たちは一体何を期待していたのかしら?


ティータイムの後はそれぞれテントに戻って休む。早速手紙を開けて読む事にした。そもそもなぜ騎士団長のお母様経由で手紙が届いたのかも気になるし!


そこに書いてあったのは意外なものだった。


あの後、やはりお母様はショックで寝込んでしまったらしい。そしてお父様とお兄様は今回の王女の仕打ちを、社交界で包み隠さず話した様だ。元々評判の悪かった王女は、さすがに今回の事件は酷すぎるという事になったらしい。


そんな中、我が家に手を差し伸べてくれたのは、バーレッジ公爵夫人だった。


ん?バーレッジ公爵夫人だと!確か王妃様の妹よね。そんな高貴な身分の人が、どうして?て、先を読めばわかるかも。


何々

バーレッジ公爵家の3男、ウィリアム様も王女に難癖をつけられ、騎士団長として討伐に参加しているですって!


という事は、騎士団長は公爵令息だったの?ひぃぃぃぃぃ、そんな高貴な身分の人が、こんな魔物討伐部隊を率いているなんて!


おっと、また話がそれてしまったわ。続きを読まないと!


息子の事もあり、今回の件で完全に怒り狂ってしまった公爵夫人の協力の元、何とか私を討伐部隊から抜けられる様動いてくれているとの事。ただ、陛下も王妃様も王太子殿下も生憎ずっと留守で、後半月ほどで帰って来るらしい。それまで頑張って欲しい。


どうか無事で!


ざっくりこんな感じの事が書かれていた。


そうか、社交界でも話題になっているのね。でもまさか、バーレッジ公爵夫人が動いてくれているなんて。そう言えば、サミュエル様の事が全く書かれていなかったわ。


サミュエル様も社交界で叩かれていないといいけれど…て、私は一体何を考えているのかしら。もう婚約者でも何でもないのに。でも、5年という長きにわたって一緒にいたせいか、彼への思いを完全に断ち切る事が出来ないのも事実だ。


何となくテントにいたくなくて、外に出た。そのまま川の近くまでやって来て、そっと水に触る。冷たい。でも、気持ちいい!


ここに来てまだ1ヶ月ちょっとしか経っていないのよね。なんだかもう何年もいる様な気分だわ。それだけ、色々な事があった。ここに来てから、物凄く忙しくて今まで家族の事やサミュエル様の事をゆっくり考える暇もなかった。


でもこうやって手紙を受け取ると、どうしても考えてしまう。あのままエミリア王女が何も言わなかったら、今頃はサミュエル様と幸せに暮らしていたのかな…


そう思ったら、涙が込み上げて来た。必死に涙をこらえる為、空を見上げた。そこには、今まで見た事のない美しい星空が広がっていた。


「なんて奇麗なのかしら…」


そう言えば、夜中毎日のように稽古に励んでいたが、夜空を見上げた事はなかった。そうか、こんなにも美しい星空が、ずっと私を見守ってくれていたのね。


その場に座りこみ、しばらく美しい星空を見つめるクレアであった。

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