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第10話:ここに来て一気に疲れが出た様です

討伐部隊に参加して1ヶ月が経とうとしていた。すっかりこの生活にも慣れた。そのおかげか、最近騎士団長に怒鳴られる事も少なくなってきた。


でも…なぜか隣に居る事が多い。正直言って、恐怖でしかない。そもそも女が大嫌いと言っていたのに、なぜ私の側にいるのだろう。あぁ、そうか。ここに来た時、”お前を男として見る”と、はっきり言われたのだった。


そう、私は騎士団長の中で男なのだ。もしかすると、騎士団長に部下として認められたのかもしれない。それなら嬉しいが、やっぱり側に来られると怖い。


今日も午前中討伐を終えて、いつも通り昼食の準備をした。なんだか頭がボーっとする。気のせいかしら?治癒魔法を掛けるが、やっぱりボーっとする。それになんだか、体もだるい。健康だけが取り柄なのに、風邪でも引いたのかしら?


もし騎士団長にこの事がバレたら、きっと“体調管理が出来ないなんて、お前は騎士失格だ!”そう怒鳴られるだろう!とにかく、いつも通り振舞わないと。


食事が始まると、そっとジークとハルの元へと向かう。チラッと騎士団長の位置を確認する。よし、あっちの方で食べているわね。


「あれ?クレア。お前顔赤くないか?」


「本当だ、なんだか赤いぞ。熱があるんじゃないのか?」


速攻でジークとハルに気づかれた。


「気のせいよ!私は物凄く元気よ!ほら、早く食べないと冷めるわよ」


「それならいいけれど…」


どうやら誤魔化せたようだ。よし、私も早く食事を終わらせないと、きっと騎士団長がこっちに来る。そう思ったのだが、なぜか全く食欲がない。


「なんだ、クレア。食欲がないのか。大丈夫か?お前この1ヶ月死ぬほど頑張って来たから、疲れが出たのだろう!騎士団長には俺から話を付けてやるから、もうテントに戻れ」


「ありがとう、ハル。そうさせてもらうわ」


そう言って立ち上がろうといた時、一瞬意識が飛んで倒れそうになった。これはマズい、そう思った時、後ろから誰かに抱き止められた。


「おい、お前どうしたんだ?体調が悪いのか?」


この声は騎士団長だ!ヤバイ、怒られる!


「騎士団長様、受け止めていただきありがとうございます。ちょっと立ち眩みがしただけなので、大丈夫です。それではこれで!」


後はよろしく!そう目でハルに訴えたので、大丈夫だろう。早くテントに戻ろう、そう思って騎士団長から離れようとしたのだが…


「お前、顔が赤いぞ。熱があるんじゃないのか?とにかく俺がテントまで運んでやろう」


そう言って抱きかかえられた。


「騎士団長様、大丈夫です!自分で歩けますから!」


さすがにそこまでしてもらう理由もない。そもそも、自分で歩く事が出来るのだ!


そう訴えたのだが

「何を言っているんだ!さっきも倒れそうになっていただろう。万が一、そこら辺で倒れたらどうするんだ!」


そう言われてしまった。まさか騎士団長に抱きかかえられるなんて。それにしてもこうやって見ると、騎士団長って意外と華奢よね。それなのに、鬼の様に強い!一体どれくらい厳しい稽古を積んだのかしら?


あ~、なんだか頭がさらにボーっとして来たわ。


テントに着くと、ミノムシを広げた騎士団長。その上に私を寝かせた。このミノムシ、布団代わりにもなるのね。初めて知ったわ!でもやっぱり、ミノムシはミノムシになって寝るのが一番よね。


「大丈夫か?体は辛くないか?多分疲れが出たのだろう。大体ここに来て1ヶ月程度で体調を崩す奴が多いからな。治癒魔法を掛けてもいいが、今回の様に疲れから来ている場合は、自力で治した方がいい。とにかく少し辛いかもしれないが、大人しく寝ていろ」


「ありがとうございます。騎士団長様」


「また定期的に様子を見に来るから」


そう言うと、テントから出て行った騎士団長。鬼だ鬼だと思っていたが、意外と優しい面もある様だ。せっかくなので、ゆっくり寝かせてもらおう。きっと寝たら治るはず。そう思い、目を閉じた。



あぁ、熱い、体が…熱い。

あまりの体の熱さに目を覚ました。物凄く体が熱いし、汗も物凄くかいている。それに、喉が渇いた。


「水…」


無意識にそう叫んでいた。


「起きたのか?ほら、水だ。飲め!」


そう言って水を渡してくれたのは騎士団長だ。手渡された水を一気に飲み干す。


「ありがとう…ございます」


苦しすぎて話すのもやっとだ。


「お前、物凄い熱だな。さすがにこれはまずい。薬草を持ってくるから、少し待っていろ」


薬草?薬草は苦いから嫌だな…そう言えば、昔風邪を引いた時、薬草を飲むのを嫌がった私に、サミュエル様が口移しで飲ませてくれた事があった。サミュエル様…今頃私の事はすっかり忘れて、エミリア王女と幸せに過ごしているのかしら?


そう思ったら、涙が止まらない。ダメだ、体が弱っている時は、どうしてもそんな事を考えてしまう。


そう言えば、お父様やお母様、お兄様は元気かしら?お母様は極度の心配症だ。体調を崩していないといいが。お父様とお兄様は、陛下や王太子殿下に抗議をしていないといいけれど…


マレアや料理長たちは元気でやっているかしら?あぁ、考えれば考える程、会いたくてたまらなくなってきた。


いくら思っても、もう会えないかもしれないのに…


ダメだ、頭がボーっとする。

そしてそのまま、意識を手放したのであった。



翌日

う~ん、温かい…この温もりは、サミュエル様?

ゆっくり目を開けると、そこにいたのはなんと騎士団長だ!私を抱きしめ、スヤスヤ眠っている。


これは一体どういう事なのかしら?全く理解できない!そっと抜け出そうとしたものの、ギューッと抱きしめられていて抜け出せない。体の大きさ的に、どうやら私は騎士団長の抱き枕になっている様だ。


どうしよう、何でこんな状況になっているのだろう。ふと周りを見渡すと、水や薬草を潰す道具などが置いてあったので、もしかして騎士団長自ら看病してくれたのかもしれない。


という事は、夜通し看病してくれて、疲れて眠ってしまったという事でいいのよね。そう言えば以前副騎士団長が言っていたわ。


“ウィリアムはああ見えて、誰よりも仲間思いなんだよ”

て。そうか、私も騎士団長に仲間と認めてもらったって事か。それに私の様な下っ端にも夜通し看病してくれるなんて、実はいい人なのね。


ふと騎士団長の顔を眺める。この人、1つ1つのパーツをとっても物凄く美しい。サミュエル様も美しかったけれど、比ではないわね。て、もうどうしてこの名前が出て来るのよ!とにかく騎士団長を起こそう。


「騎士団長様、起きてください。騎士団長様」


「う~ん」

ゆっくり瞼を上げる騎士団長。うぁぁぁ、美しすぎる!その姿が美しすぎて、一瞬ドキッとしてしまった。


「お前、元気になったのか?」


「はい、騎士団長様が私の看病をして下さったのですよね。ありがとうございます!」


深々と頭を下げた。


「元気になったのならいいよ。ただ、もう少しゆっくり休んでいるといい」


「はい、そうさせて頂きます」


どうやら病み上がりという事で、ゆっくりできる様だ。でももう完全に復活したのだけれどね。


「それじゃあ俺はもう行くけど、ゆっくり休んでいろよ」


そう言うと、なぜか私の頭を撫でて出て行った騎士団長。完全に子ども扱いだ。これでも17歳なんだけれどな…


まあいいか!再び眠りに付いたクレアであった。

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