第1話:婚約破棄された上魔物討伐に行けと言われました
新連載始めました。
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「クレア、ウエディングドレスの準備はもう出来たかい?」
「ええ、もちろんです。来週にはサミュエル様と結婚出来るなんて、本当に夢見たいですわ!」
私の名前はクレア・マケット。17歳の伯爵令嬢だ。そんな私は大好きな婚約者、侯爵令息のサミュエル・カードリッド様と来週結婚する事が決まっている。その為、今急ピッチで結婚式の準備を進めているのだ。
「サミュエル様、お腹空いていないですか?今日は特製のタレで味付けした牛肉のサンドウィッチを作りましたの。食べてみてください!」
「相変わらずクレアは料理が好きだね。そうそう、クレアの為に、侯爵家にも君専用のキッチンを作ったんだ。これで思う存分料理が出来るだろう?」
「まあ、それは本当ですか?嬉しいです!」
サミュエル様にギューッと抱き着いた。そんな私の頭を優しく撫でてくれるサミュエル様。青色の髪に水色の瞳をしたサミュエル様は、容姿端麗で頭もよく、さらにカードリッド侯爵家の嫡男という事もあり、学院内でも非常に人気が高かった。
そんな私とサミュエル様が婚約したのは、今から5年前の12歳の時。たまたま参加したお茶会で、なぜか私を気に入ってくれたサミュエル様が、婚約を申し込んでくれたのだ。
正直当時は信じられなかったが、この5年、私だけを大切にしてくれていたサミュエル様。先月無事貴族学院も卒業できた。
そんなサミュエル様とついに来週結婚できるのだ。こんな嬉しい事はない!まさに、人生の絶頂と言っても過言ではないくらい幸せなのだ。
「クレア、それじゃあ僕も来週の結婚式の準備があるから、そろそろ帰るよ。それじゃあね、ごちそうさま」
私の額に口付けを落として帰って行ったサミュエル様。やっぱりカッコいいわ!早く来週にならないかしら!来週になったら、ずっと一緒にいられるのよね。そう考えただけで、ニヤニヤが止まらない。
幸いサミュエル様のご両親もとてもいい人たちで、お2人とも良い関係を築けている。そうだわ、来週の結婚式の会場に飾る、ボードを作らないと。
基本的に私の嫁ぎ先でもあるカードリッド侯爵家が結婚式の準備は行ってくれるのだが、私も何かしたいと思い、会場に飾るボードとウエディングドレスだけは、我が家で手配する事になったのだ。
ウエディングドレスはさすがに手作りできないが、ボードくらいは手作りしたい。そんな思いから、今メイドに手伝ってもらいながら、一生懸命ボードを作っている。
「お嬢様、大分ボードが出来て来ましたね。後少しです。頑張りましょう」
そう言ったのは、私の専属メイドのマレアだ。マレアも私の輿入れに合わせて、侯爵家について来てくれる事になっている。マレアと一緒に、どんどんボードを作っていく。その時だった。
コンコン
「お嬢様、旦那様がお呼びです。至急玄関にお越しください」
え?玄関?一体どういう事から?疑問に思いつつも、急いで玄関へと向かう。
「クレア、急に呼び出してすまない。実はカードリッド侯爵から呼び出しを受けたんだ。至急侯爵家に行く事になった。すぐに準備しなさい」
「わかりました。少しお待ちいただけますか」
急にどうしたのかしら?
疑問に思いながらも、急いで準備をしてお父様の待つ玄関へと戻った。
「お待たせしてごめんなさい。それでは行きましょうか」
2人で馬車へと乗り込んだ。
「お父様、急に侯爵様に呼び出されただなんて、一体何があったのでしょうか?」
「正直私も分からないのだ。きっと大した事ではないだろう。あの人はちょっとした事でも、すぐに呼びだすからな」
そう言って苦笑いをしているお父様。確かにお父様の言う通り、侯爵様は何かあるとすぐに呼びだしてくる。きっと今回も、大した事ではないのだろう。
しばらく走ると、侯爵家が見えて来た。
「さあ、クレア、行こうか」
お父様と一緒に侯爵家の屋敷に入って行く。使用人に案内されたのは、なぜか客間だ。いつもは居間なのに。不思議に思いつつも、部屋の中に入った。そこにいたのは…
侯爵様、奥様、サミュエル様、さらにこの国の第三王女でもあるエミリア王女だ。どうしてエミリア王女がここにいるの?
「マケット伯爵、それにクレアも。急に呼び出してすまなかったね。さあ、座ってくれ」
侯爵様に促され、お父様と並んで席に着いた。ふと見ると、なぜかサミュエル様の隣に、エミリア王女が座っている。どういう事なの?一気に不安に襲われる。
「実は、我が息子サミュエルとエミリア王女が恋仲という事が分かったんだ」
「え?どういう事ですか?」
侯爵様の言った意味が分からず、つい聞き返してしまった。
「頭の悪い女ね!だから私とサミュエルは付き合っているって言っているのよ!」
イライラしながらそう言い放ったのは、エミリア王女だ。
「これは一体どういう事ですか?サミュエル殿は、来週うちのクレアと結婚する予定ですよね。それなのに、どうしてこの様な事になってしまったのですか?」
お父様が必死にサミュエル様に問いかけている。ふとサミュエル様を見ると、唇を噛んで下を向いていた。
「申し訳ございませんでした…」
そう言って頭を下げるサミュエル様。その言葉が全てを物語っていた。そう、サミュエル様とエミリア王女は恋仲だったのだ。ずっと私だけを愛してくれていると思っていたのに…
そう思っていたのは、どうやら私だけだったようだ。一気に何かが崩れ落ちるのを感じた。私たちのこの5年間は、一体何だったのだろう…そう思ったら、悔しくて涙が止まらない。
「ビービー泣かないでよ。鬱陶しいわね!」
私の涙を見て、怪訝そうにそう言ったエミリア王女。
「申し訳ございません」
王女様の機嫌を損ねてしまってはいけない、そう思い、とりあえず謝っておいた。
「それで…今後は…」
お父様が侯爵様に聞いた。
「それがだな…」
バツの悪そうな顔をしている侯爵様。そんな侯爵様にイライラしたのか、エミリア王女が叫んだ。
「サミュエルは私と結婚する事になったの。悪いけれど婚約を解消してもらうわ!そうそう、結婚間近で婚約破棄だなんて、あなたも恥ずかしくて社交界に出られないでしょう?あなた、魔力がまあまあ強い様ね。だから、魔物討伐部隊に参加する事を命じます!」
魔物討伐部隊ですって…