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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

壊れたコップ

壊れたコップ

作者: てと

サラッとお読みください



今宵は月が綺麗だと窓から月をボンヤリと眺める。寝室には夫のジョエル様は来ない。別邸で愛人と二人きりの夜を過ごしているのだろう。


最初の頃はジョエル様と愛人を腐るほど憎んだ。でも、それも今日で終わり。私は死ぬ。未練は無い。


だからこの世界では今日も生きてる人間も、私の世界では死んだもの当然だ。もしも生まれ変わる事ができたなら、ジョエル様がいない世界にいたい。いっそ雨になって世界を塗りつぶしてしまいたい。


ねえ、ジョエル様……教えて?私の心の傷を見て満足しましたか?笑いましたか?私を嗤う一日で欲は満たされましたでしょう?


私の様な愛してもらえない粗悪品はこの世界で私だけでいい。だって、錆びれて落ちた歯車はこの世界じゃ小さすぎた。私がいなくてもまわる。


ジョエル様達が奏でる音はかなぎり声のようで。空虚な生活と次第に凍っていく心。毎日、泣き腫らした夜を越えた朝には変わっている?逃げ道も活路も迷路の中で幸せな未来を何度も探すけど暗闇ばかり。


愛人の言葉に壊され、使用人達からも馬鹿にされ、社交界での笑い者。何人の人にまた殺される。それは弱いからかな。情けない?それとも死は甘えかな? どうか教えてください、名前がちゃんとあるからいるはずでしょう?


ボロボロの心で「我慢し続けていれば幸せになれるかも」ってそんな考えはとっくに無くなったの。

 

拳銃に弾を込める。ただ普通の人生を生きていたかった。幸せになりたかったんじゃない、でもそれも無理で、何がいけないんだろうと歩み寄ろうとした。だが、ジョエル様は私を邪険にするばかり。


誰でもいいから生きてるだけで、息をしてるだけで偉いって私を褒め殺してよ。そしたら私がこんな方法でしか死ねない意味はなくなるから。


裸足のままジョエル様のいる別邸へ向かう。別邸ではジョエル様と愛人が裸で眠っていた。ジョエル様は私の気配に気づき目を覚ました。


「なんの用だ。フィーネ、俺達を殺しに来たのか?」


「ジョエル様……ガラスのコップを落として割ってみて?その割れたコップに謝って?そのコップ治った?そういうこと……」


カチャッと自分の頭に拳銃を当てる。


この世界は狂っているんだ。人も周りも 国もそしてそこに存在する私も気づかぬうちに正解も常識も消えてく。


そして私は引き金を引いた。


引き金を引く瞬間、ジョエル様が顔を真っ青にして私に手を伸ばしたのは滑稽だった。


カチッ


「あら、外れでした。当たりは何発目でしょう?ジョエル様、どうかしましたか?」


「馬鹿な事は止めろ!!今すぐ拳銃を置け!!」 


「ジョエル様、壊れたコップは治りますか?」


「何を言っている……フィーネ、それを捨てろ!!」


「ふふっ、別に良いではありませんか。私が死んだ後、そこで眠りこけている愛人と結婚すれば」


カチャッ


カチッ


「ああ、また外れた」


「やめろ!!フィーネ!!」


カチャッ


「……愛してます、ジョエル様」


パンッ


ジョエル様が私に突進してきて銃口がずれたが死ねるだろう。でもどうしてジョエル様は泣いているのでしょうか。どうして謝り続けるのでしょうか。貴方はもう私の世界では死んだ人間なのに。  


顔に雨が降り注ぐ。温かな優しい雨が。



誤字脱字報告有難う御座います!

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― 新着の感想 ―
[一言] ちょっと、違う散り方の… 見せ付けずに静かに、人知れず散って行ったならば。 この旦那は、どういう風になったのか… その場合も気になった、2人の関係性… 旦那が謎すぎる…
[一言] まあ、さ。 ドアマットとして踏みつけられているひとの末路は、足元を掬って今まで踏みつけてきた奴をドアマットにするか。 ドアマットを辞めるか、しかないからな。 いつまでもそのままではいられ…
[良い点] 相変わらずの作風、惹かれます! 旦那視点も確かに読みたいですね! てか愛人と見せつけてるのにこういう風に されるとか思わないもんかなー
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