5:異世界人
川沿いに下って行くと開けた場所に出た。
焚火の跡やテントの杭を打ったような跡、そして土が車輪のような跡で窪んでいることから、ここは簡易野営地のような場所らしい。
そこから川を辿るのをやめて、この野営地への正式な入口である林道を進む。
野営地で待ってもよかったが、林道が足首まで雑草を生やしており、最近はあまり使われていないようだったし、まだ日は高い。
町や村へ直接行く道で構えてもいいだろう。
林道を歩くことまた体感十分程。
拓けた大きい道に出た。
この道は石が敷き詰められるように埋められている。朝方までいた廃村ではこんな手の込んだことがされていなかったことから、この世界の住人には石を敷き詰めることでさえ簡単ではなく且つこの道は重要な道で町もしくは大きい都市に続く街道であるのだろう。
ここで張り込もう。
街道に面した茂みに隠れて少人数の旅人や商人を待つ。
なに5時間程経って来なかったら村に戻ろう。
今日中にと焦る必要はない。流石に二日三日以内には鴨が通るだろう。
待っている間にナイフ以外の武器。そうだな車輪のような後があったことから馬車を止めれそうな道具でも作成しておくか。流石にナイフ一本じゃ心もとない。
少し森の奥に入り、細い若木をへし折り、皮をはぎ取り中の繊維質を裂いていく。
元の場所に戻り、それを編む。
一、二時間時間程度で終わるだろう。
丁度編み終えるころに、馬の蹄の音が聞こえてきた。
ナイスタイミング。
息を潜めて、遠目に観察する。
馬に跨った図体が大きく筋骨隆々の男が一人見える。
生きている、初めての異世界人か。
容姿は死体でみたようにあまり俺の世界と変わらないよう人間のように思える。
アジア人ではないようだ。
だけれども、外国には余り行ったことがないから、具体的にどこの国や地方の人種に似ているとかそこまではわからない。
でもあいつは獲物になりそうもないことだけはわかる。
あの男は革のようだが鎧を纏っており、叩き切る用の直剣を腰に携えていた。
つまり、俺が昨晩遭遇したゴブリンや廃村を襲ったであろう盗賊は珍しくないのだろう。
その中で昼とはいえ、一人で移動しているということはかなりの猛者である確率が高い。
先手は俺が確実に取れるがその後どうなるか想像がつかない。
俺は武術の達人とか死線を掻い潜ってきたわけじゃない。
一応シュミレートしてみる。
茂みからスリングで石を投擲する。
高速で飛んできた医師になすすべもなく頭を打つ…。
いや外した、男は腰の剣を馬上で構えながら馬の腹を蹴った。
無理だ。今飛び出したところで馬を止められない。
最悪死んでしまうだろう。
…以上だ。
ということでこいつはスルーする。
気づかれないよう、身をできるだけ低くかがめて息を止める。
パカラ、パカラ、パカラ、
一瞬こちらの茂みを見られた気がしたが
ばれなかった様だ。
ふぅ…。
今編み終えた投石紐、スリングの練習でもしてこようか。
手頃な石を拾い、また森の奥へ入っていった。