4:ゴブリンを食す
あれからゴブリンを4匹中2体捌き、解剖した。
見た目は到底食欲を唆られるようなものではない。だが見た目がグロい物は美味いと相場は決まっている。例えばアンコウとか。
と思っていた時期が一瞬だけあった。
いや、実はなかったが自分を騙しながらの作業した。
では、捌いてみてゴブリンはどうだったかというと、変に筋肉が発達してしまっており食べてもかなり繊維質で殆どの部位が硬すぎるし、臓物も何故か変な臭いがするし、結局辛うじて食べれそうな部位だけを残して残りは火に焚べた。
夢中になって解体していたからか、空は朝焼けに照らされている。
時間が経つのが早いのは何処の世界も一緒だな、と思考の片隅で黄昏れながら、ゴブリン肉をぐちょぐちょ叩きミンチにしていく。
辛うじて食べれそうな部分とは言ってもも流石に顎が疲れそうだった為苦肉の策である。
なので肉団子に成形してこれまた串に刺して焼いてみようのコーナー。
俺は人間の肉は生でそのまま食べるのが結構好きなのだが、ゴブリンの肉は挑戦してみようとも思わない。こんな硬くて生臭く、且つ寄生虫がどれほど存在しているのかわからないのだから。
ミンチを捏ねている間に想う。
香辛料、調味料のことを。
よく考えたら味付けなしの肉団子って美味いのか?
うーん。これ駄目なんじゃないか。
実は俺は不味いもの、味がしないものが食えない。
獄中生活では臭い飯を食ってたんだからいけるだろうという意見もあるかもしれない。
しかし実は刑務所飯は結構美味いのだ。
中でもやはりカレーが美味い。
何百人という単位で作られているから、食学生の給食みたいな感じを想像してくれたら近いかもしれない。
…俺は誰に話しかけているんだ。ずっと1人で過ごしてきたから自分語り、というより1人会話が多い。歳を重ねても意外と精神年齢は上がらないものだ。
取り敢えず話を戻して。
肉団子をどうするか。
このまま焼いて食べるのか?
いやいや少し待て、ゴブリンの血を煮詰めればいい塩梅なソースになるかもしれないな。
家の中に沢山置いてあった小さめの壺にゴブリンの血を半分程入れる。
あとは沸騰させて煮詰めていくだけ。
簡単だが、期待値は低めだ。
その間に残りのミンチも丸めて肉団子にしていこうかな。
焼き上がり、食べていく。
「いただきます」
モグモグ…ふむ…。
一口目の感想が獣臭い…。
だが、食感は弾力がありもちもちしている。
なんだろうこの残念感は。
ミンチにしたことで、想像していたよりも筋は気にならない。
次はゴブリンの血のソースにつけて食べてみる。
口に入れると獣臭さは軽減したが鉄の匂いと生臭さが気になる。
しかし、少し感じる塩気と喉舌触りの良いねっとりしたソース、味は結構いける。
そこだけは満足かもしれない。
総括するとゴブリン肉はあまり食わない方がいいかもしれないが、血のソースをつけて食べるとまぁまぁ食えるようになる。
弾力が結構強めなので、もしかしたら他の肉と合い挽きにして香辛料で臭みを消せば、ボリュームや満足感がアップしそうだ。
口元を水瓶ですすぐ。
「ごちそうさまでした」
火を消して、外に干していた簡易水筒の材料を別の木の枝に括り付ける。
よいしょっと。肩に棒を担ぐ。
俺の体内時計は午前十時ぐらいと言っている。
今日は街道を見つけることを目標に川沿いを散策してみるか。