2:猪?の肉とこれから
あれから30分が経過した。
もう使われることがないだろう家屋にお邪魔して、火種を起こした。
悪戦苦闘するかとも思ったが存外早く火を起こすことが出来た。
今は猪(と呼んでいいかはわからないがまぁ猪でいいか)の肉を木の枝に刺して焼いている最中。
肉を低温でじっくり焼き上げて温度を維持することが美味しいステーキになるコツだけどけれども、火の調整がかなり難しい。
猪は自分で調理した事はない。現代日本でイノシシを解体、調理すること等一般的にはないから当たり前ではあるが。
本当は焼き加減はレアが好きなのだが寄生虫等がいる事を考慮してミディアムに。
しっかりと火を入れるが、されど焼きすぎないように気を張る。
そして大きめの葉っぱの表面を軽く炙り、肉を包む。
余熱で中まで火を通す為に暫く放置する。
その間にさっき回収した胃袋や膀胱を炙り、息を吹きかけ膨らませる。
余分な肉や脂、血が落とすと、獣臭が臭いが根気よく加工すれば簡易水筒になる。
瓢箪のようなものがあれば良いのだが、今は無いので仕方がない。
水瓶のようなものはあれど、水筒になりそうなものはこの村になかった。
2日、3日はこの村に滞在してもいいかもしれない。
そろそろいいかな。
葉の包みをゆっくりと開けて、ナイフで肉を切るといい感じの具合になっている。
「いただきます」
…なかなか、美味しい。
野生動物だが、飼育された豚よりの油の質があっさりしている。
だけれど…かなり獣臭い。
これは仕方がないが何か香辛料が欲しくなる。
お次は肝臓、レバーだ。
俺はレバーがかなり好きで、ねっとりとした舌触りと、血の鉄感が堪らない。
…ほぅ。これも美味しいな。
これは俺が普通に生活していた頃に食べた中でもかなり上位にくる…気がする。
だけれども、人間のレバーを超えることはないな。
やはり、肉は美味い。本当に久々にステーキを食べれて身体が喜んでいるのを感じる。
食事を終えて、肉の残りを半分に分けて片方を叩いて薄べったく平らにし、焼く。
これは夜の内に干しておき、ジャーキーのようにして持ち運べるようにしようかと考えている。
もう片方は調理はせず、食事中に燻しておいた大きな葉っぱで生肉を包んで、水瓶に漬けておく。
多分これで明日まで腐ることはないだろう。
今日は久々に色々なことがあったな。
刑務作業や、狭い刑務所の中では味わえない自然の空気。
充実した一日だったな。
いや、人肉が足りてないな。
早く人間を攫って食わないと頭がおかしくなりそうだ。
もう何年も食えていない。
あぁアアアあああああああああぁあぁ考えただけで発狂しそうだ。
刑務所の中では仕方がなかったが、自由である状態で好物を食えないことがこんなにストレスを感じるんだな。
そうだ。明日は川沿いを下って行こうか。
川の近くには村や町ができやすい。
だが俺には身分を証明出来るものがないからすんなりと入れてはくれないだろう。
という事は、街道で待ち伏せして旅商人や、それに準ずる誰かから襲わないとな。
大体の予定は決まったかな。
さて、寝るか。