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Ⅳ (2)

 目の前では恭二が、砂糖を入れたコーヒーをスプーンで混ぜている。ふとした仕草に滲み出る彼の育ちの良さに、静香は苦笑した。


 金払いのいい裕福な家の、気のいい次男坊。しかも実家同士は近すぎず遠すぎず。

 健康で多少は損得勘定もできて、頭の切れこそないけれどそれなりの学歴はある二十代。


 いいえ、むしろ切れなどないところがいい。私の会社の経営に余計な口を挟むような夫など、いらないのだから。


 ……たしかに、後継者について、口約束はしたけれど。

 時期が来れば、彼も周囲もいやというほどわかるはず。彼と私の二人の内、社長の座にふさわしいのは、いったいどちらかということが。


 そしてそのとき、幼い頃から贅沢の味を知っていて、損得勘定もできる彼なら。立場をわきまえてくれるはずだ、きっと。


(――こんな良い物件、絶対に逃がしたりしないわ。私の選んだだんな様)


 音を立てずにカップをソーサーに戻すと、目が合った恭二に静香は微笑みかけた。


「ほんと、お料理だけじゃなく、デザートやチョコレートまで美味しかったね。今日のお店、恭くんがここに決めてくれて、大正解」


 ゆっくりと、彼の両親に視線を移す。


 目を細めて見返す二人に、静香は柔らかな声で告げた。


「恭二さんに選んでもらって、よかったです。本当に」




【 了 】




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