表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/9

Ⅲ (2)

(しかも、あのかわいい顔は、これからも変わったりしない!!)


 恭二の脳内で、無数の白いハトたちが、教会の屋根から青い空へと飛び立つ。

 鳴り響く鐘の音。舞い上がるカラフルな風船たち。

 傍らには、純白のウエディングドレス姿の静香の姿――。


『目も好きだけど、俺は静香の全部が好きだから』


 なんとか脳内のハトや鐘を鎮めて、メッセージと照れるウサギのスタンプを静香に送ったところで、恭二はそっと息を吐いた。

 椅子に深く腰掛け、さっきまでのことを思い返す。


(――落ち着け、俺)


 そもそもさ。万が一、ちょっとくらい顔が変わったって。静香は静香じゃん。

 優しくて癒し系で優秀な、俺だけのお嫁さん。


 ……俺のバカ。結婚考え直すとか、ありえねーだろ。

 まったく、何考えてたんだよ、われながら。静香に心配かけて。


 何かに駆り立てられるように、恭二は立ち上がった。


 驚く皆の前で、口を開く。


「静香さんのお父さん、お母さん」


 未熟すぎる自分だけれど。

 両家の親と静香に、この思いが届くように。


「安心してください。俺、何があっても静香さんを守ります。だって静香さんは、俺が選んだ、世界でたった一人の女の子なんだから」


 テーブルを囲む5人の顔を見回した。


「だから、昔のことはどうか水に流していただいて。これから先、俺たちのことを、どうぞよろしくお願いします」


 背筋を伸ばし、深く頭を下げると、誰からともなく拍手が起こった。

 顔を赤らめ、上目づかいで笑いながら、恭二は椅子に座り直した。


 テーブルの向こうで、涙ぐむママさんの肩に静香と父が優しく手を置くのを、こちら側から恭二の両親が見守っている。


 ちょうどそこへ、タイミングを見計らったようにデザートのフルーツタルトが運ばれてきた。もしかしたら、個室でのさっきまでの騒ぎに、部屋に入るのを遅らせてくれていたのかもしれない。


 タルトも、続くコーヒーと店の特製チョコレートも、いつも通り素晴らしい美味しさだった。

 恭二の宣言の余韻も相まって、部屋は和やかな空気に包まれる。あれほど表情が硬かった父も、すっかりリラックスして、静香の父となにやら笑い合っているようだ。


(まったく、親父のやつ。何やってんだか)


 その様子を見ながら、恭二は苦笑した。


(これだからボンボン育ちは困るんだよな。まあ、お坊ちゃんなのは俺も同じだけど)


 向かいの席では静香が、コーヒーカップの陰で、柔らかな笑みを浮かべていた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキングに参加しています。クリックしていただけたら嬉しいです(ぺこり)
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ