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Ⅱ 謝罪 (1)

「――違うんだ!」


 沈黙を破ったのは、その日ずっと言葉少なだった恭二の父だった。


「家のことや、性格なんかじゃなかった。晴美はるみさん、君の、その、見た目が……」


 晴美さん、と呼びかけられた静香の母が、大きな目を不思議そうに見開く。


 父が、言いにくそうに言葉を続けた。


「……二十歳を過ぎた頃だったかな。君はその、目が……変わっただろう? 二重に、そう、今と同じくっきりした二重まぶたになったよな」


「……ええ」


 静香の母が眉根を寄せた。


「亡くなった両親が二重だったし、二重まぶたは優性遺伝と聞いていたから。子どもの頃は一重でも、いつかはそうなるものだと思っていたわ。あなたにも、あのときそう説明したはずだけど」


「それなんだ!」


 テーブルに手をついた父が、ひどく悲しそうな顔になった。


「すまない、晴美さ……じゃない、佐藤さん。正直言って、僕にはその……元の顔が。昔の君の、一重の頃の目元が、好みのど真ん中だったんだよ。その点、ぱっちりした目になった君は、もう……」


「……見損ないましたわ、恭介きょうすけさん」


 静香の母が、別人のような低い声で父の名を呼んだ。


「見た目で女の価値を決めるなんて」


 父から視線を外した彼女が、気を取り直したように恭二を振り返る。


「……まあ、それもみんな、過去のお話。恭二さん、あなたはお父様と違って、見た目なんかでうちの静香をどうこうおっしゃることはないと思いますけど」


 にこやかに話す声は、すっかり元の音域に戻っている。


「……はあ」


 なんとか答えた恭二を援護するように、そこで静香たち父娘が口を挟んだ。


「おいおい晴美、恭二君が困ってるじゃないか。ははは、まったく君はいつも、ブルドーザーみたいに猪突猛進なんだから」


「そうよママ、なにもこんな席でそんな話」


「だってあなたたち、こういうことは最初にはっきりさせておかないと。後になって黙ってたなんて風に思われたら、ねえ? そう思われません、鈴木さんの奥様?」



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