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Ⅰ 告白 (1)

 よく晴れた週末の昼下がり。ホテルの最上階にあるフレンチレストランは、今日も着飾った客で賑わっている。


 奥の個室では、コース料理のメインの皿が下げられたところだった。当初の緊張もとけ、部屋の中には落ち着いた雰囲気が漂う。


 デザートを待ちながら、鈴木恭二すずききょうじは両家の家族をさりげなく見回した。


 両側に三席ずつ、ゆったりと配置された長方形のテーブル。向かいの席の静香(しずか)と、その隣の彼女の両親は、どうやらシェフ自慢の肉料理に満足してくれたようだ。


 静香たちにはこちらの地元までわざわざ足を運んでもらうことになったが、実家の行きつけの店を選んで正解だった。支払いは、父がもってくれるというし。


 自分の隣の母と、その向こうに座る父は、静香の両親である佐藤さとう夫妻と、それぞれ女親同士・男親同士でテーブルを挟んで談笑している。


 着物姿の母越しに見える父の表情が、やや硬いのが気にかかった。長男や長女と年の離れた次男坊の、結婚相手の家族との顔合わせとあって、お坊ちゃん育ちの父もさすがに緊張しているのかもしれない。


 今日の食事代は、父の会社の経費として処理されるのだろう。こういうとき、家が代々続く自営業というのはなかなか便利だ。たとえ、小規模な上、後継ぎは兄と決まっていても。


 恭二の視線に気づいて、静香が微笑んだ。


 東京の大学で、経営学部の同じ研究室のメンバーとして出会った彼女もまた、自営業の家庭で育っていた。しかも、偶然にも恭二の実家の隣の県で。


 静香の両親は中堅どころの食品会社を経営しており、恭二は一人娘の彼女と結婚した後は、婿養子として会社を継ぐ約束になっている。今日の鈴木・佐藤両家の顔合わせの食事会も、その点を確認するのが目的のひとつだった。


 正直なところ、慣れ親しんだ名字を変えるのは複雑だが、父の会社では既に、兄に加えて姉の夫も副社長の座に就いている。地元密着型の小さな企業の経営陣に、もはや自分の入る余地などないことを思えば、より規模の大きい静香の両親の会社を継ぐことは、十分魅力的だった。


 もちろん彼女も、そういった恭二の側の事情は了承している。合理的な感覚が似ているのも、彼女に惹かれた一因かもしれない。


 だが、なにより大きいのは。



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