ゴミ屋敷のような耳の中で①
異世界で再度、理容師として再出発を果たして早2ヶ月。本当に夢のように充実した日々をすごしている。
今の生活と仕事があるのはベルダさんという心優しい神様のおかげだ。
感謝してもしたりない。
いつか恩返しができればいいのだけど……
もう一つ運が良かったのは、私がいるこのピエタムは大きな町ではないがルシンという、この世のものとは思えない程の美しい輝きを放つ鉱石が採れるソルランという所への中継地点らしく一攫千金狙いの冒険者が多く滞在し賑わいを見せている。
冒険者たちは長い間髪を切れず、お風呂にもなかなか入れないそうだ。
なので、ありがたいことに理容師は重宝されているようだ。
私も開院してから、20人以上の髪を切らせてもらった。
どのお客さんの髪ももっさりと伸びきっていて、癖も強くて、ボリューム満点で非常に切り甲斐があった。
故に耳の中もファンタスティックドリーム!!
珠玉のような耳垢の数々を掃除できて最高に幸せだったぁ。
長い旅路の苦労を感じさせるような素晴らしい汚れの数々に私の心は躍った。
そして全部終わったあと、すっきりとした様子で笑顔になって帰られるお客さんの顔を見るのはたまらなく嬉しい。
ひとりで愉悦に浸り不振な笑みを浮かべていたとき"ギギギ”
と音を立ててドアが開いた。