深淵の谷間に潜むモノ②
「俺も行きます。ベルダは友人なんだ。」
「そうなんですか!」
初めてベルダさんと交友関係持った人と出会ったかも。
「ベルダさん。今、少しよろしいでしょうか?」
診察室の扉をノックする。
「はい、どいぞ。アイザワさん。え? ギャンさん!? 」
「おお! 久しぶりだな。耳の調子がおかしくてな。耳掃除名人に助けて貰いに来たんだ。」
「そうですか。アイザワさんの耳掃除は素晴らしいでしょう!」
キラキラ笑顔でベルダさんが言う。
うぅ~。嬉しいよぉ! 素晴らしいなんて。
「そうだな。最高だ。」
お客さんもニカッと笑ってくれた。
「お客さんの耳掃除をしたのですがとても取りづらいところに耳垢があってベルダさんに監督してもらおうと思ったのでが、今お手隙でしょうか。」
私はベルダさん事の詳細を説明する。
「すみません。あと10分程で患者さんが診察に来るのでその後でよろしいでしょうか?」
「ああ、待っている。診察が終わったら世間話でもしよう。」
「ええ。喜んで。」
とベルダさんは微笑んだ。
「では、お待ちしています。」
私達は診察室を後にした。
理容室に戻って私はお客様に質問した。
「お客さんはギャンさん。言うんですね。」
「ああ。俺はギャンと言う。ピエタムや周辺の街で自警団の隊長をやっています。仕事柄怪我をすることが多くて、ベルダに手当てしてもらっているうちに仲良くなったんだ。」
「自警団の隊長さんだなんて素敵ですね。」
自警団の隊長さんか。すごいな。
いろんな荒事を治めてきたのかな。
……もしかしたらこの人ならルーノさんのことなにか知っているかもしれない。
自警団と用心棒って似ているし。
「ギャンさん。つかぬことをお聞きしますが、用心棒のルーノさんという方をご存知ですか。この間お世話になって。」
ギャンさんは少し驚いた顔をした。
「彼がこの街に来るのは珍しいな。ルーノはジャスティファイの幹部だ。幹部の中では市中の人々にも慕われている仁義派だ。」
「そのジャスティファイとは何でしょうか?」
「元々は自警団集団だったが大きな組織となって、今は地獄の沙汰も金次第な組織だ。まぁ、ナイフのようなので存在ですね。便利で守ってもくれるが凶器で害にもなる。」
「そんな組織があったんですね。」
確かに危険な匂いがするなぁ。
「そういえばジャスティファイの命令で近々ソルランに出向くようだ」
「ええ! ソルランってとても危険な場所なんですよね!? どうしてそんなところに。」
「詳しいことは知り得ない。しかし内部抗争と言われている。一部の過激派連中は本当に危ないからな。違法な薬物を製造して売買しているとか。」
ルーノさんが私を違法薬物使用者だと思って警戒していたのもそのせいか。
「この会話は他言無用にだ。まぁ、噂する程度では危害は加えたりは無いと思うが。」
「わかりました。」
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