猫ちゃんの耳がSOS!!④
「解いてくれてありがとうございます。
「構わない。」
「あの、その布で腕を止血したほうが良いのでは?」
男性の腕からは血が出ていた。
「そうだな。」
と腕に布を巻いた。
その後は少しでも疑いを払拭しようと
理容師をしていること、病院に居候していることなど身の上話を沢山した。
「着きましたよ。ここが私が居候させてもらっている病院です。」
これで身の潔白が証明できると意気揚揚に裏口から鍵を開けた。
「ただいまです。ベルダさん。ちょっとこっちに来てくださーい。
と私は少し声を張り上げて言った。
「はーい。」
ベルダさんも素早く応えてくれる。
数秒後小走りでこちらにやって来た。
「おかえりなさい。お使いありがとうございます?」
マオシュちゃんを抱えた私と男性がいたのが予想外なベルダさんは
言い終わる頃に疑問符がついていた。
「この方は?」
「この人は……」
男性のことを説明しようとしたその時
「すみませんでした。」
男性が私に向かって頭を下げた。
「貴女を疑っていたが、間違いだった。」
「やっと、私を信じてくれたんですね!」
やった、良かった。疑いが晴れたんだ。
と喜んでだが。その直後にふと、どうしてそう思ったのかが気になった。
「どうして、私が売人じゃないと思ったのですか。」
「実はここに来るまでの話で違う可能性がある。と感じていたが、決定打はその方だ。」
とベルダさんの方を見た。
「ベルダという医師の噂は聞いている。貧民や格差を問わず診察する名医だと。
その縁者が違法薬物で人間を食い物にするはずがない。という結論に至った。」
ベルダはいろんな人にすごく尊敬されている名医なんだ。
そばにいれる私は幸せだなぁ。
沁み沁み思ったがそれより今はマオシュちゃんと男性の怪我を診てもらわないと!
「あの、ベルダさん、この方とこの子が怪我しているので手当てしてください。」
「早急に診察室へ行きましょう。」
私たちは診察室へ向かった。
先ずはマオシュちゃんの容態を診た。
「耳の付け根と足に深い外傷が見られますね。あと耳の中が痒いのか掻き壊しがありますね。おそらく真菌だ。麻酔をして外傷の消毒と縫合等行います。」
麻酔注射にマオシュちゃんは少し抵抗したが無事投与できた。
さっきまでは暴れるほどだったのに衰弱しているようだ。
麻酔が十分に効くまでの間に男性の処置に移った。
「思いの外深いですね。縫合するほどではないですが。野良のマオシュはいろんな病原菌を持っているので患部をしっかり洗って、傷テープを貼って。包帯をしていきましょう。」
そう言って。ベルダさんは処置を開始した。
「傷口が染みて痛いと思います。」
「大丈夫です。」
アルコールをたっぷり浸したガーゼが傷口に触れる。
私だったら痛みで悲鳴をあげそうだけど男性は声を上げるどころか表情も全く変わってない。引っ掻かれた時もそうだったな。
痛みに慣れているんだ。
用心棒をしている言っていたし。
ベルダさん素早く、丁寧に手当てをしていった。
「これで処置は終わりました。あとは、抗生物質を3日間処方するので夕食後に飲んでくださいね。」
「ありがとうございます。治療費はここにおいておきます。では。」
薬を手にとってお金を棚に置いた。
「え!? こんな大金頂けません。」
棚に置いてあったのは通常の治療費の十倍近くする額だ。
「いえ、俺は彼女に十分な証拠もなく疑った。通常なら罪になる。治療費と迷惑料を合わせたものです。」
「待ってください!」
足早に外に出ようとする男性をベルダさんが引き留める。
「あの、私に教えてください。非合法薬物のこと売人のこと。貴方の知っていることを。」




