猫ちゃんの耳がSOS!!③
「マオシュは素早いからな。」
男性はスーツを脱ぎシャツ姿になった。
そして、見るからに上等そうなスーツを地面に置いたのだ。
「……あのー。スーツ持ちましょうか?」
勇気を出して恐る恐る聞いてみる。
「済まないな。しかし、まだ疑い晴れていない。手を縛らせてもらう。」
「逃げません。本当に怪しい者じゃありませんから!」
と必死の抗議も虚しく素早く両手を縛られてしまった。
ただ、縄や金属ではなく肌触りの良いハンカチだった。
男性は息を深く短く吸うとマオシュちゃんが逃げた茂みをじっと見ている。
私も思わず息を呑む。
がさ、がさと微かに音がする。
すぐそこにいる。
と思ったときには男性は茂みの前に移動していた。
さっきまで茂みから2、3mくらいの位置にいたはずなのに。
近くにいたのに足音が全く聞こえなかった。
この人プロかヒットマンか? 用心棒だとは言っていたが。
すると、マオシュちゃんが警戒した様子で顔と前足を私達に見せた。
その瞬間ウシャーという、うめき声とマオシュちゃんを抱いた男性がいた。
「すごい! 保護に成功しましたね。」
私は男性に駆け寄る。
「あ、腕、引っ掻かれて怪我してるじゃないですか!」
見ると7、8cmくらいの縦に割れた痛々しい傷があった。
「これくらいなんともない。」
「ダメです! 甘く見ないでください。傷に菌が入り込んで高熱を引き起こす。最悪の場合、破傷風で亡くなることだってあるんですから!
私が居候させてもらっている医院に行けば貴方とマオシュちゃんの怪我も看てもらえますし、私の疑いも晴れます。一石三鳥です。さあ、行きましょう!」
自分でも信じられないくらいに早口だった。
「分かった。心配してもらったことは礼を言う。だが、疑いは晴れた訳では無いからな。」
と言いいながら男性は布を解いた。




