猫ちゃんの耳がSOS!!①
「ありがとうございましたー。また、髪が傷んだら来まーす!」
「よろしくお願い致します。」
「あ! あとはー、枝毛談義もしたいでーす!」
「是非! 素晴らしい枝毛見つけてきます。」
「そうだ。店長さんの名前教えてくださーい。あ! わたしはリヤっていいまーす。」
「リヤさんですか。素敵なお名前ですね。私はアイザワと申します。」
やったー! 常連客が増えた!
こうやって交流の輪ができるのがたまらない。
この仕事をしていて最高の瞬間だ。
今日のお客さんはリヤさん1人だけだったが充実した日だった。
「すみません。お使いを頼まれて頂けませんか?」
「はい! いつでも行けますよ。」
「ありがとうございます。では、消毒液と脱脂綿、白雲膏、青蛇膏を通りの薬問屋で買って来てください。私の使いと言えば出してくれます。」
「わかりました。」
「朝の診察で必要なのを忘れてしまって。ご迷惑かけてしまいます。」
「いえいえ。ベルダさんは私の命の恩人ですから! このくらいお安い御用です!」
「アイザワさんは本当に良い人ですね。問屋の地図と買い物リストを記した紙を渡しますね。」
閉店後すぐだったので服と化粧がそのままだったから素早く出発することができた。
方向音痴なので悪戦苦闘しつつ薬問屋のにたどり着いた。
「すみません。」
ドアを開けると同時に挨拶する。
「ん? 見ない顔だな。」
強面の店主に睨まれ足がすくむ。
「べ、ベルダさんに頼まれてました!」
ヘタれて変な言葉遣いになる。
「ああ、ベルダ先生の使いか。すまない。最近、用途不明で劇薬を買いに来る輩がいてな。警戒してたんだ。」
と店主はハニカミ笑顔で言った。警戒していただけで恐い人ではなさそうだ。
「あの、ベルダさんからの注文用紙です。」
言葉で伝えるより見せたほうが正確に伝わるだろう。
「用意するするから少し待ってな。」
待っている間お店を見回す。
エキゾチックな雰囲気で消毒液のような、お香のような、薬草のような。
いろんな香りが混ざり合った独特な匂いがする。
多種多様な薬がたくさん置いてある。
客が手に取れる薬と奥の店主しか取れない薬がある。
「ほら。注文の薬。全部袋に入れたぜ。」
「ありがとうございます。」
お代を渡す。
「まいど。ベルダ先生と同居してるのは君か?」
「はい。そうですが。」
「先生が言ってたぜ。"真面目で誠実な素晴らしい人が医院を手伝ってくれるようになった"って。」
え? あ? ベルダさんが私のことをそんな風に思ってくれていたなんて!!
店主の爆弾発言にうろたえながら店を後にした。
とっても嬉しい。そして少し恥ずかしい。真面目で誠実な素晴らしい人だなんて。
帰ったらベルダさんの顔しっかり見れなくなるよ。
浮かれながら歩いていると小さな毛玉? 生き物がうずくまっている!?
恐る恐る近づくと耳と左前足怪我した猫の顔に大きな垂れ耳が付いた生き物がいた。




