耳かきのしすぎダメ絶対②
「これは医療の領域なので先生を呼びます。」
こりゃ大変だと。私は急いでベルダさんを呼びに行った。
「ベルダさん。大丈夫でしょうか?」
診察室で一人カルテを見ていたベルダさんに声をかけた。
「ええ。現在は患者さんはいませんし、急ぎの用もありませんが。」
「今いらしているお客さんがおそらく、外耳道炎と真菌症、鼓膜穿孔等の疑いがあります。」
「!?それは大変ですね。診察しましょう。」
ベルダさんと理容室に向かい、診てもらった。
「こんな状態では相当辛かったのでは?かゆみだけではなく痛みや熱感もあったでしょう。」
「そうなんですよ~。痛痒くて~でも耳かきが止められなくて。」
「……2、3週間の入院が必要ですね。当然ですが耳掃除は完治するまでは禁止です。」
「えぇ~そんな殺生な。オレの生きがいがぁ。」
「生きがいで健康を害するのは依存です。しっかり矯正していきますので安心してください。」
それでも、嫌だ、嫌だ。と嘆いている患者さんに私は提案した。
「わかりました。では、耳介の掃除はどうでしょうか?」
「へ、耳介?」
あまりにも騒がしいのでつい、声が出てしまった。
「耳介は耳全体のことです。耳は凹凸が多いので耳垢溜まっていることが多いのです。掃除したことありますか?」
「えっと、あまりしてません。」
「ベルダさん。耳介掃除大丈夫ですかね?」
ベルダさんに確認するのを忘れていたのでハラハラしながら聞く。
「常識の範囲内であれば問題ありません。」
「ありがとうございます!それでは、施術しますよ。」
「いいんですかぁ!よろしくお願いします。」
早速、耳介を観察する。
おーこびりついている。
木を見て森見ずだなぁ。こんなに汚れていて掃除しがいがあるのに。
カーブの奥にある溝を軽く耳かきですくうだけで匙が一杯になった。
「ほら!すごいですよ。見てください。」
取った耳垢を患者さんに見せる。
「おうー!!こんなに溜まったいるとはぁ!」
と喜んでくれたようだ。
その後も溝とくぼみしっかり優しく綺麗にした。
少しでもリラックスできるように耳ツボマッサージも行った。
「いいですか。耳掃除は最低でも2週間に1回。ガリガリするのではなく、優しくしてくださいね。」
「大抵の人は耳掃除は本来、行わなくとも自然と出てくるものです。しかし耳の毛に絡まって出てこれない耳垢もあるので有効なのは小指が届く範囲までです。これからの入院生活でしっかり悪癖を矯正しますので安心してくださいね。」
大切なことなので2度言いましたと笑顔で穏やかに語りかけてベルダさん。だけど、どこか有無を言わさない迫力があった。医師の本気だ。
「治療も我慢も不安だぁ。」
弱くつぶやきため息を吐く。
「大丈夫です!ベルダさんは名医ですから大船に乗った気持ちで。耳掃除はたまのご褒美として大切にしましょう!」
その言葉に
「頑張ってみます。」
と患者さんは言ってくれた。




