4 冷蔵庫てめえのせいで・・・
飯がある程度食い終わったのを確認して、
姉の方にこう言うことにした。
「・・・お前・・・住むところあるのか?」
この言葉を俺が言った瞬間、
きょとんとした後、
スーっと視線を妹の方へ・・・。
妹は首をブンブン振っている。
姉の方は妹の反応を見て何かを悟ったのか、
小さくため息を吐く。
そして、姉の方が何かを言おうとするが、
その前に、
俺はこんなことを言う。
「・・そ・・「残念だったが、気が変わった。」・・・は?」
「お前達には絶体にあの金を返してもらわないとな・・・。」
俺はできるだけ悪ぶって、そんなことを言う。
姉の方は顔を真っ青にしている。
「そ、そんなの当然です!
ちゃんと、バイトでも何でもしてかえ・・「信用できない。」・・・なっ!」
「だから・・・。」
俺が彼女に近づいていく。
「ちょ、やだ・・・こ、こないで・・・。」
こいつは何を勘違いしたのか、
どこか弱弱しそうに抵抗する。
「は、初めては好きな人と・・・。」
「へへへ・・・じゃねえよ、バカ。」
こつん。
「痛っ!」
「・・・はあ・・・。
信用できないから、ここで働け、住み込みだ。
いいな!」
「へっ?」
「お前じゃ話にならん、
なあ、妹、ここで働かないか?」
「・・・うん・・・。」
俺は懐から、スッとあるものを取り出す。
「よし、契約成立!
一応、この借用書にサインを・・・。」
「って、なんでそんなもの持ってるんですかっ!?」
「ん?
やっと復活したか・・・。」
「ええ、おかげさまで・・・ではなく、なんでそんなものを・・・?」
彼女は困惑しつつ、
そう俺に尋ねる。
「いや、親父が常にこれは持っておけって・・・。」
「・・・もしかしてやく・・「いや、親父は堅気の仕事だから、そう言ってたから!」・・・。」
俺はそう返す。
まあ、堅気だから、堅気の仕事だからと、行ってるだけで本当はなにやってんのかわからんのよね・・・
と付け足していると、
妹の方がどこで見つけたのか、
針で指先を傷つけて・・「ってお前なにやってんだっ!」「何やってんのよっ!」
姉と俺は慌てつつ、
救急箱から、
消毒液とバンドエイドを取り出し、
手当てする。
「・・・映画でこれ見た、でも流石にナイフはこわかったからこれ・・・。」
と針を指差して、
容疑者・・・いや、被疑者か?
はそんなことを言っていた。
当然、正座中だ。
「・・・おいおい・・・借用書に血判って完全にそっちの世界じゃねえかよ・・・やめてくれ・・・。」
俺はかなり引いていた。
「・・・ん、やってみたかったのに・・・。」
と残念そうな彼女の元から、
姉が借用書をふんだくり、
さらさらさらっと書き込み、
「はい、どうぞ!」
と渡してきた。
「・・・・・・。」
唖然としつつも受け取ろうとすると、
手が離れない。
・・・渡してきたんだが、手を離さない・・・。
もしかして・・・怖いんか?
実質借金みたいなもんだもんな・・・それが目に見えちまう・・・。
取り下げてやろうか、
などと考えていると、
彼女は、
「・・・これからよろしくお願いします・・・。」
ああ、挨拶ね・・・
あはは・・・それを言うのが嫌なほど軽蔑されたのな・・・。
などと若干心が傷つけられていた俺に、
彼女は、
それと・・・
と続け、
「ありがとう!」
と花が咲くような笑顔を浮かべるのだった。
・・・ちっ・・・。
「・・・そろそろデザートできてんだろ。」
俺は恥ずかしさを隠すように冷蔵庫に向かう。
元はと言えば、お前に何も入ってなかったせいで・・・
などと冷蔵庫を責めつつ、
いっぱいになった中から、
ゼリーを取り出し、持っていく。
持っていくと、
妹の方が目を輝かせ、待っていた。
・・・まあ、こんなのもありか・・・。
などと思っていた。
こうして、
借金姉妹は俺と暮らすことになった。