1、冷蔵庫に碌なもんが入ってねえ
昔、
泣いた赤鬼と言う童話を呼んだことはないだろうか?
まあ、読んだことはないにしろ、
聞いたことくらいはあるだろう。
赤鬼は村人に嫌われていたけど、仲良くなりたかった。
そんな相談を受けた青鬼はある策を授ける。
青鬼が村人を襲い、
赤鬼はそれをやっつけて、人気者に・・・と言う策を・・・。
策は成功して、赤鬼は人気者になった。
けれど、青鬼はどこかへ行ってしまう。
赤鬼はその時、青鬼のことに心を痛め・・・。
なんていうやつ。
まあ、童話だからな・・・
いろいろ思うところはあるが、
それはなんだかんだ言って、
その2人?がいいやつだっから・・・。
・・・じゃあ、もし・・・
もしもだが、片方・・・いや、両方クソ野郎だったら・・・。
これは親友に裏切られ、
泣いた赤鬼・・・ではなく、泣かされた青鬼状態になった男の物語。
「あ~、馬鹿みてえ・・・
・・・やっちまったな・・・。」
青崎 清澄はそんな後悔に満ちた言葉を呟く。
「ガラになく、親切心なんぞ出すんじゃなかったな・・・。」
まあ、こんな風に落ち込んでいるのが無駄なのはわかるが、
そうせずにはいられない。
「この示談金でパ~っと遊ぶかな・・・って停学中にそれはまずいか・・・。」
こんな世間体を気にするような男が、
なぜ、停学中なのかって?
そんなの簡単・・・
・・・ある人物をブッ飛ばしたから・・・
なんかではなく、
・・・ある女に言い寄っただけ・・・
・・・チンピラみたくな・・・。
見かけだけ不良風の俺がそんなことをした理由。
そんなのも簡単・・・
・・・頼まれたから・・・
で、手にあるのはその示談金・・・。
要するに嵌められた。
なんであいつはこんなことしたのか、
まったく意味がわからん。
親友的なそいつにそんなことをされて傷心中・・・ってこと・・・。
・・・はあ・・・だりぃ・・・
まあ、示談金があることからもわかるようにただやられたわけじゃない。
あいつに頼まれたとき、
たまたま持っていたボイスレコーダーのスイッチがオンになっていたからな・・・。
(堅気の仕事だと言う親父に常にそれは持っておけ、
と言われたこれが役立つ日が来ようとは・・・。)
それを学園長をしているあいつの親父のとこに持ってって・・・。
あとは簡単、予想以上に示談金の額を決める話し合い。
ちなみにその時の会話は、
俺がキレていたこともあって、
あいつには電話中にして、
聞かせた。
額が上がっていくたびにあいつの顔が青くなっていくのがわかり、
ストレスの解消になった。
そして結局、俺は1500万もの大金をせしめることができた。
こうして、形としては、
俺は自分のもともと低かった評判を下げて、1500万を手に入れ、
あいつは1500万を支払い、彼女を手に入れ、もともと高かった評判を高めたというものになったわけだが、
はてさて、あいつが手に入れたものに本当にそれだけの価値はあるのか?
などと、自分がしてしまったことを面白おかしく解説していると、
・・・ぐう~っ!
・・・こんな時でも腹が減るのな・・・。
仕方ねえ、なんか作るか・・・。
そう思い、
冷蔵庫の中を覗く。
・・・・・・マヨネーズ・・・卵・・・ケチャップ・・・焼き肉のたれ・・・。
「・・・・・・。」
中身のあんまりさに茫然とする。
・・・買い物行くか・・・。
・・・そういやあ、米もなかったしな・・・。
腹が減ったのですぐさま、
買い物に向かおうとするんだが、
行くときに金が目に入る。
・・・ATM入るか・・・?
家に置いておくのが不安になった俺は、それもエコバックに入れ、
「流石にこれで一週間とか無理だから・・・しょうがねえよな・・・。」
1人暮らしなんだから、
親も姉妹もいねえししょうがねえだろ・・・。
いもしない誰かに言い訳しつつ、家を出る。