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未来の王は姿を隠す   作者: 水無月 霊華
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注意事項

 俺達がしばらく待っていると何人かの生徒と教師が二人入って来た。教師は筋肉ムキムキと、フードで顔を隠している教師二人組だ。なんか個性が強い…。

 それにしても外部生はこんだけしかいないのか?今年は特に多いとか言ってたけど全然少ないな。だって九人しかいないんだぞ。九人!


「よし、全員揃ってるな。じゃあ、今から鳳凰学園においての絶対に守らなければいけない注意事項を伝えるぞ!」


 俺が生徒たちを観察しながら色々と考えていると筋肉ムキムキの教師が話しだした。なんか改めてみるとキモいな筋肉が凄すぎて。

 ていうか、学校説明じゃなくて注意事項を伝えるってどういう事だよ!普通、学校説明しながらその間で伝えるものだよな!注意事項って!学校説明吹っ飛ばすっておかしいだろ!?


「あの、学校説明はしないんですか?」


 どうやら不思議に思ったのは俺だけではないようだ。みんなナナの言葉に頷いている。そうだよな。普通は学校説明をするよな。


「うん? 学校説明なんていらんいらん。生活していればそのうちわかるようになる。」

「え?でも担任の先生には学校説明をするから集まるようにって言われましたけど。」

「注意事項の説明だけするって伝えたら来ない奴がいるかもしれないだろう?それは困るんだよなー。」


 俺はドキッとした。俺も学校説明じゃなきゃこなかっただろうからな。面倒くさいから。

 俺みたいなやつがいるからと言うことか。納得納得。


「理由は分かりましたがやはり説明はするべきだと思います。」


 俺の内心のドキドキになど気づいていないだろうナナが尚も言いつのっている。


「確かにそれも大事だ。だがな、それよりももっと重要なんだよ。この注意は。お前達、この学校を退学したいか?したくないだろ?」

「はい、そうですね。でもそこまではないでしょう?」


 筋肉教師が脅しをかけてきたが俺を合わせてこの教室にいる外部生は誰一人として本気にしていない。


「はは、信じてないな?それも仕方ないか。まぁ、とりあえず聞いとけ。いいな?」

「はぁ…」

「聞きたくないなら帰ってもいいぞ。まぁ教師に対しての態度が悪いと(とら)えさせてもらうがな。」

「えっ…わ、分かりました。聞きます。」


 不満に思っているのが表情から伝わったのか、教師の権力を行使してきやがった。おい!職権乱用だろ‼


 そんな俺たちの内心は分かってるだろうに筋肉教師はさっさと話し始めた。


 そしてその内容は俺にとって、いや、俺たち外部生にとって衝撃的なものだった。


 まず、この世界が魔法実力主義ということは伝えたよな?

 それはこの学園の教育方針でもあるんだとか。この学園は学力はもちろんだが魔力の強さによってクラスや寮が決まるらしくクラスは上からSS・S・A・B・C・D・Eとあり、SSクラスは生徒会や風紀委員のみのクラスでほとんどが栄光七家や上流財閥の人たちで構成されている。

 筋肉教師が言っていたが魔法の才能は血筋で決まるらしい。だから必然的に上のケラスに上流財閥の子供が多い。

 S・Aクラスも上流財閥の子供がほとんどだ。

 だからD・Eクラスには外部生か下流財閥の子供しか毎年おらず、差別の対象にもなってるらしい。

 そして寮も特級寮・上級寮・中級寮・下級寮と分けられている。

 特級寮が一番位が高く、ここにも生徒会や風紀委員、あと各クラブの部長クラスしか暮らしていない。

 上級寮以下はクラスによって分けられており、S・Aクラスは上級寮、B・Cクラスは中級寮、D・Eクラスは下級寮だ。寮内でも差別があり、クラスが上の者たちが下の者たちをこき使っているらしい。これは学校側も容認している事だそうだ。

 だが、俺が驚いたのは別のことだ。この学園では上の者たちが下の者たちに命令するのは当たり前のことでそれに逆らえばこの学園では暮らしていけない。過去、逆らったものが何人か外部生にいたらしいがこの人たちは殴る蹴るの暴力だけで済めばいいほうで、悪いときには集団リンチやレ○プ(男も女も)にあった人もいたそうだ。

 これは流石に学校側も見逃すわけにはいかず、問題になったそうだが加害者が財閥の者たちで被害者が外部生の平民であったことから加害者は一ヶ月の謹慎、被害者は他校への転校という形になったらしい。

 前世の日本では考えられないがこの世界ではこれが普通のことで絶対に守らなければいけない事でもあるのだ。俺は改めてここが異世界なのだと実感した。いくら前世と同じ名前の国でも制度も常識も全く違う。前世の常識は全く役に立たない世界。

 12歳までは水門家の、その後はおじいちゃんやおばさん、おじさん達に守られていて分かったようでいて本当は全く分かっていなかったらしい。この世界が俺の知る日本ではないということを。この学園では守ってくれる人はいない。自分の身は自分で守らなければいけない。

 それが確認できただけでもここに来て良かったのだろうと俺は思うことにした。


 筋肉教師の話はここで終わりだったが聞いて良かったと俺は思う。他の奴らも途中からは真剣に聞いていたから俺と同じ気持ちだろう。

 筋肉教師はもう一度「上のクラスの奴らには逆らわないこと」と、念を押すと俺たちに寮に帰るように言ってから部屋を出ていった。

 俺もナナ達と一緒に寮まで行った。なんと!ナナ達はBクラスらしい!俺はCクラスだからコウとは一緒の寮だ!やった!!

 うん?なんで試験受けてないのにCクラスなのかだって?それは俺にも分からん!


 その後、途中で女子寮に行くナナとは別れた。コウと中級寮まで来ると夕飯は二人と一緒に食べることになり、「三時間後に寮の入り口で!」と約束をして別れたのだった。


 うん?そういえばなんで教師が二人もいたんだ?もう一人、あのフードかぶった人は何も話さなかったし…。ま、今考えても仕方ないな。



 俺は些細なことと思い、この時の疑問をすぐに忘れてしまった。

 このあと、それを心底悔やむことになるとは知らずに…。


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