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未来の王は姿を隠す   作者: 水無月 霊華
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閑話 『見つけた』

 あの子の気配を感じた。

 今日は高等部の入学式。あの子は彼らとの約束を守ったのだろう。




 私は三年前、あの子の突然の失踪を知ったあの時の事を思い出す。




✽✽✽

 

 


『父上!それは本当ですか!?剣哉がいなくなったって!?』


 私は思わず父上に詰め寄った。

 学校から帰ってくるなり、書斎に呼ばれて伝えられた話は、到底信じられるものではなかった。

 

『間違いない。従者に出ていく事を伝えて、魔法で眠らせてから姿を消している。』


 その報告に私は驚きを隠せなかった。

 剣哉は、弟は、決して人に向けて自分の利益のために魔法を使ったことがなかったからだ。

 

 聞きたい事は山ほどあったが、今は行方を追う事を優先する。


『行き先は!?』


 私の質問に父上は首を横に振った。


 行き先は告げなかったという事だ。

 弟は賢い。下手したら私以上かもしれないのだ。

 それに魔法に関しても、()()()()()弟に勝てる人間は世界中探してもいなくなっているだろう。


 そう、()()()だったのなら。


 今の弟はまだ未熟。生まれてたったの12年で、その道のプロにかなうとは思わないほうがいい。


 ()はうっそりと笑う。

 弟にはもちろん。両親以外と一部の使用人以外には誰にも見せたことのない笑みで。


隆治(りゅうじ)、表情が崩れている。』

『はい、すみません。』


 父上に指摘され、私は慌てて表情を戻す。


 いけない。ここには普通の使用人もいるんだった。


 私は気持ちを新たに入れ直すと、父上に向き直り口を開く。


『父上、私は捜索班に加わりたいと思います。』

『ああ、構わない。』


 父上がすぐに許可を出したという事は、私が何を言うのか分かっていたということだ。

 私は頷くと、退出の挨拶をして部屋を出る。

 

 

 そのまま一度捜索班に顔を出し、自由に動く許可を(無理矢理)貰った。


 どうせすぐに見つかるだろう。

 その時そう思っていた弟の行方は、だが、それから三日経っても一向に知れなかった。



 それは一週間、一ヶ月経っても同じで、三日に一度顔を出している捜索班では一部から諦めムードが漂っていた。


 私は一向に進展しない捜索に、もっと範囲を大きくするようお願いするため、父上の元へと向かった。


『父上!お願いがあります!』


 一切のマナーを無視して、扉を開けながら言ったその言葉に返ってきたのは、酷く疲れた声だった。


『…何だ、隆治……。』


 私はとっさに言葉を発せず、驚きで固まる。父上のこんな覇気のない声は、初めて聞くものだった。


 書斎にいた父上は、一ヶ月前よりやや痩せたように見える。

 目の下には隈が出来ていて、とても疲れているのが分かった。


『ち、父上。体調が悪いのではないですか。きちんと休まれていますか?』


 私はここへ来た目的も忘れ、父上へ心配の言葉をかける。


『私は大丈夫だ。それより、お前の方はどうなんだ。剣哉は見つかりそうか?』


 父上の言葉に本来の目的を思い出し、首を横に振る。


『捜索は一向に進展しておりません。何処へ行ったか痕跡も全くなく、探索系世界ランクNo.36の者にも協力してもらいましたが、居場所はわからないとの事です。』


 私はありのままを報告する。

 どうせ何を言ったところで、父上は正確な情報を把握しているはずだ。

 これは私を試す行為。


 まったく…、疲れているのに息子を試すとは驚きだよ。

 


 私の報告に父上は『そうか。』とだけ呟くと、何かを考え込む。

 数秒程で顔を上げた父上は、何かを決心したような表情をしていた。


『隆治』

『…はい、何でしょうか。』


 いつも通りの父上の声に、私は背筋を伸ばし返事をする。

 

『捜索班を解散させよ。水無月から後三年程の捜索は凶と連絡が来た。』


 水無月家の水占はよく当たる事で有名だ。そのお陰で栄十六家に名を連ねたと言ってもいいくらい。

 その水無月が弟の捜索をこれから三年はするなと言ったのなら、感情を押し殺してでも辞めなければいけない。

 私は悔しさで拳を握りしめながら、ゆっくりと頷く。


『っ!はい、分かりました。』

 

 そうして部屋を退出した俺は、三年後までこの悔しさ、悲しさ、絶望の感情を胸にしまい込む事を決めた。


 三年後、弟をもう一度探す事のできるその時まで……。




✽✽✽




 少し懐かしいことを思い出してしまった。


 あの時は焦りで周りが見えていなかった。今なら分かる。

 弟は鳳凰学園に絶対に入学する。約束を果たす為に。



 だから今度は絶対に見つけ出そう。私以外は気づかないかもしれない。

 だが、家族で同じ属性を操る私なら絶対に見つけられる。

 弟は全ての属性を使えるが、やはり水門家の血筋。水だけは他の属性の二倍は上手く扱えていた。

 だから弟の体からは常に少量の水の魔力が漂っている。同じ属性を扱う者しか分からないぐらいの少量の魔力が。



 待っていてね剣哉。()も君との約束を守るから。



 剣哉が五歳。()が九歳の時に交わしたあの約束を…。



✽✽✽



『剣哉。俺は何処にいようとお前を見つけてあげる。だから泣かないで。』


『……ヒック…う、うん。絶対だよ?僕もりゅう兄様をを見つけるから、りゅう兄様も僕を見つけてね?』


『うん、もちろん。何処にいようと何年かかろうと必ず見つけるから。』


『…うん!』



✽✽✽


 かつての約束。決して色褪せる事のない大事な約束。

  

 俺は絶対に約束を破らないよ、剣哉。

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