一年第一試験開始
鳳凰学園では五ヶ月に一度、総合試験というものが行われる。
総合試験とは、魔法・学力においての総合的な実力を競い合い、学内での順位を決めると同時にクラスわけも行う試験だ。
一年の最初にある総合試験が、これから先の学校生活の地位を決めると言っても過言ではないのだ。
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一週間後。試験当日。
俺達はホールにいた。入学式の時に使ったあの豪華なホールだ。あの時、椅子が所狭しと並べられていた空間には、今は大勢の学生達が整列して集まっている。
今、試験開始前の開会式というものが行われているからだ。一体どこの体育祭だ!と思うが、そこはこの学園の特異性を考えれば諦めるしかないのだろう。
あ、ついでにいえば俺がこうして説明してる間にも開会式は続行中だ。丁度今は、風紀の委員長という人が挨拶、いや注意事項の説明か?まぁ取り敢えずそういう事をしているところだ。
『……………お前ら、これが新学期最初の試験だ。我々風紀や生徒会・部活長はそれぞれの試験会場の監視をしている。不正を働いた者はすぐにわかるからな。そして不正が発覚した場合、即失格となるので気をつけるように!どうか君達の健闘を祈る!以上!』
・・・・・・。
「「「きゃーーーー!!応援ありがとうございます!大河様〜!」」」
「っ…。」
俺は耳を塞ぎたくなった。風紀委員長の挨拶が終わって数秒間、悲鳴が起きなかったから大丈夫だと思った途端に突然声を上げるんだから、これは最悪以外の何者でもないよな。
まぁそれも当たり前か。なんと言ったって風紀委員長、葛西 大河はワイルド系イケメンで、お姉様基質の女の子達に大人気だ。それにこの学園で生徒会長と人気を二分する人でもあり、二人の親衛隊は互いにいがみ合ってるとか。まぁ会長と違い、風紀委員長の親衛隊だからあまり過激な事はしていない、というか出来ないらしいが。
え?何で俺がそんな事を知っているかって?それはだなー……………暇だったからだよ!この一週間、学校以外の時間する事がなくて暇だったんだよ!座学は勉強しなくても前世の記憶と今世の知識で分かるし、魔法の訓練なんて本気でしたら俺が誰だか気づかれてしまう!ということはだ、コウ達からも釘を刺されたし、暇だし、もう学校の事を調べるぐらいしかないじゃないか。本当は知りたくなかったけど仕方なく調べたんだよ!その結果得たのがこの知識さ!
あとついでに言うと、風紀委員長の葛西 大河は俺の元従者だ。即ち、水門家にいた頃の従者という訳だ。はぁ。
「皆ー!急いで試験会場へ移動してねー。」
「え?」
俺は聞こえてきた言葉に反応して周りを見渡す。
学生達は皆それぞれに席を立って移動を始めていた。どうやら俺が色々と考え込んでいる間に開会式は終わっていたらしい。
やばい!ほとんど説明を聞いてなかった!
俺は慌てて席を立つと、Cクラスの生徒を見つけて取り敢えずその後ろをついて行った。
✽✽✽
「おーい!次の組の奴ら入ってこーい!」
俺は教師に呼ばれ、同じ組の五人と試験会場に入る。
あの後、俺はCクラスの奴の後に着いていき、Cクラスの教室で筆記試験を受けた。手応えは上々だった。
その後、一時間の昼休憩が与えられ、今は魔法実技試験の最中だ。
「次!十六番!」
俺の二つ前の奴が呼ばれた。
魔法実技試験は、自分の得意な属性魔法を試験会場を破壊しない程度で撃ち、その威力や魔法の発動スピード・コントロールなど、魔法についての色々な技量を見る試験だ。
今見た限り、この学園は世界に誇る教育機関というだけあり、Cクラスの生徒でもそこそこの実力だ。ただ、そこそこはそこそこ。栄光七家や上流貴族には遠く及ばない。もちろん俺にも。
魔法は加減が難しい。特に力が強い者がそれを隠そうとするなら尚更。そこで俺は、他の人間の真似をする事にした。正確に言えば、俺の前三人の威力・発動スピード・コントロールを混ぜた力で撃つことにしたんだ。それが一番加減がしやすく、バレない範囲だから。
「次!十八番!」
「はい!」
遂に俺の番号が呼ばれた。
やっぱりいざとなったら緊張する。でも、隠し通すなら、しっかりやらなくては!
「今から正面にいくつかの的が出てきます。それを順番に撃ってください。」
「はい。」
俺は教師の説明に頷く。ルールは分かる。前の奴のを見てたからな。ただ、的が出てくるのはランダムみたいだからそこは気を付けなくては。
「では宜しいですか?」
俺は教師の問いかけに、一度深呼吸をしてしっかりと頷く。
「お願いします!」
「では、…始め!」
✽✽✽
「では、皆さんお疲れ様でした。まだ試験の疲れが残っているでしょうから、今日と土日は寮でしっかり休んでください。試験結果は月曜日の朝七時に張り出されます。結果次第ではクラス移動もありえますので皆さん心の準備をしておくようにお願いします。月曜の授業は昼から行われます。皆さん忘れないで下さいね。……では、解散!」
俺は結月先生の最後の言葉を受けて席を立つ。
今日は早く寮に帰って休みたかった。別にこれといって疲れているわけではないが、きちんと35位をとれているのか心配なのだ。今更心配しても意味がない事は分かっているが…。
俺は帰路につきながら、月曜日の結果を考えて今から憂鬱だと深いため息を吐く。
気が抜けていた為に、それを見つめている者の存在には気づかずに。




