退学については
「・・・と言う事でいいですね?河野 慎哉君?」
「…はい。」
俺は第二副会長の問いかけに、やっとか、と思いながら頷いた。
外を見るともう夕日が沈みそうになっている。確か俺がここに来たのは昼頃だった筈だ。一体何時間こいつ等は俺の処遇について話していたのか。
結局、俺の処遇は一年第一試験で、総合35位以内に入ることが出来なければ即退学という所に落ち着いた。俺もそれで退学にならずに済むなら別に構わない。
俺は一先ず安堵からこっそりと小さくため息を吐いた。
「では、本番まで頑張って下さいね。」
第二副会長は俺のそんな様子に気付いているのかいないのか、心にもない言葉をかけてきた。
「はい。…それでは、失礼いたします。皆様の貴重なお時間を頂いてしまい申し訳ありませんでした。」
俺はそれに微笑みで応えると、一刻も早くこの場を去ろうと、退出の挨拶とお礼を口にすると、そそくさと部屋を後にした。
「はぁ……。疲れた…。何で俺がこんな目に………って、ナナ!?何でここに!?」
生徒会室を出ると、何故かナナが廊下に立っていた。
「いやー。どうなってんのか気になってねー。ここで待っちゃいました!テヘッ」
テヘッ、じゃねぇよ!そしてそんなキラキラした目を向けるな!生徒会と合っても嬉しくもない俺に対してその目はいかんだろ!俺の神経をガリガリと削るな!
俺は内心で理不尽な怒りをぶつけながら、表面では苦笑をこぼした。
「………どうにもなっていませんよ?普通の話し合いをしただけです。」
「話し合いってどんな?」
ナナの視線から俺は思わず目をそらす。
それを聞くのか!俺は一体どう答えればいいんだ!…………いや、ここで誤魔化すのはよそう。本当の友人を作りたいなら、極力秘密は作らないこと、これが俺の前世での鉄則だったしな。
よし!決めたら即行動!ここでは話せないから場所を移さなければ!
「ナナ、中で話したことを知りたいならまずは場所を変えよう。あと、ついでにコウも呼んでくれ。」
「うん!わかった!じゃあ、コウの部屋に行きましょう!今なら女子でも双子の私はまだ行ける時間帯だからね!」
「う、うん。」
俺はナナの勢いに若干押され気味になりながら、ぎこちなく頷く。
てか、何でも決めるの早いよな、ナナは。
即断即決!を地で行く奴だ。まぁ、そういう所も嫌いではないけど。
「シン!行こう!コウに連絡したら来てもいいって!」
「そうか。じゃあ、行くか。」
いつの間にかコウに連絡を入れていたナナに促され、俺は共に寮へと向かった。
✽✽✽
――――コンコン
部屋の前に立ち、扉をノックするる。数秒も経たないうちに中からドアが開かれ、コウが出てきた。
「いらっしゃい。ちょっと散らかってるかもだけど、そこは我慢してくれ。」
部屋から出てきたコウはいつもよりラフな格好をしていた。
中に白いTシャツを着て上から青色のパーカーを羽織っており、黒色のスラックスを履いている。
こういうのも何だか、めっちゃ似合っていた。これぞ爽やか少年だ!というぐらいには。
ただ、何故部屋着なのにそんなに気合が入っているのかは謎だ。
「ああ。夜遅くにごめんな。同室者の奴にも迷惑をかけただろう?」
「いや、それは別に大丈夫だ。俺の同室者はこの部屋に帰ってこないから。なんせNo.9のエリート生だからね。」
「……………え―――!?」
気づいてしまった疑問点から目を逸らそうとして別の話題を降ると、更なる爆弾が投下された。それもさっきの疑問など吹き飛ぶぐらいの。
「No.9のエリート生!?No.9って言うことは、一年にして三年のエリート生を抜いているっていうことか!?どれほど凄いかは良く分かんないけど、取り敢えず何か凄い!」
「どんだけ凄いか分かんないのかよ!俺はその発言に驚きだよ!」
「うっ!仕方ないだろ!興味がなかったんだから!」
「いやいやいや!この学園に通うなら制度ぐらいきちんと確認しようよ!」
「別にいいだろ!今から知っていけばいいんだから!知らなくても不自由ないし!」
「あっただろ!不自由!この前の皆様との食事の時、俺が直前にエリート生がどんなものか説明してなかったらお前失態働いてたかもしれないだろ!」
「知らねぇよそんなん!別に何ともなかったんだからいいだろ!」
「なっ!せっかく教えてやったのに!じゃあ、今度から教えなくていいんだな!」
「ああそう「ちょっとストープ!」…………ナナ。」
俺とコウの口喧嘩がヒートアップして、収集がつかなくなってきた頃、ずっと固まっていたナナが会話に割り込んできた。
反射的に睨みつけてしまった俺に怯むことなく、ナナは言葉を続ける。
「もー!二人共!だめだよ!廊下で騒いだら近所迷惑になるでしょ!」
ナナは肩を怒らせ、プンプン怒っている。
確かにナナが言うように俺達の周りはギャラリーが集まっていた。どうやら相当目立っていたらしい。恥ずかしくなり、俺は顔を赤くして俯いた。
ナナはそんな俺の様子に気づかないようで、更に言い募る。
「もう!喧嘩するなら部屋の中でしてよ!」
ナナはそう言って俺達の背中を部屋に向けてグイグイ押してくる。
この時、俺とコウ、ギャラリーに至るまで、俺達の心はまとまっていただろう。
(((おい!注意するのはそこじゃない!喧嘩をとめろよ!!)))
と。
俺とコウは何だかやる気を削がれ、顔を見合わせる。そして互いに苦笑を漏らすと、ナナに背を押されるまま部屋へと入ったのだった。




