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未来の王は姿を隠す   作者: 水無月 霊華
14/28

迷惑

途中で、慎哉視点→浩太視点になります。

 翌日、俺が登校すると、昨日の食堂でのことは全校生徒に広まっていた。


「昨日のはどういうことですの!?貴方達、外部生ごときがあの方々と食事をともにするなんて、ありえませんわ!」

「そうです。そうです。ありえません!」

「中で何があったのか、洗いざらい話しなさい!」


 俺は教室に入った途端に、女子達に囲まれた。周りに視線を送っても、目をそらされるか、逆に睨まれるかだけ。これは助けは期待できそうにないな。


「ねぇ、貴方。聞いていますの?平民ごときが私を無視するとはいい度胸ですわね?」 


 ・・・ヤバイ。何か俺、今一瞬で追い詰められたんじゃないか?

 仕方ないな。ここは下手に出て、穏便に済ませるか。


「いいえ。無視などと、赤宮様に対して、その様な無礼な振る舞いをする訳がございませんでしょう?」

「あら、私の名前を知っていたの?」


 食い付くのはそこかよ。まぁ、話を反らせたから良かったのか?


「はい。私は外部生ですので、この学園に早く馴染みたいと思いまして、このクラスの方々の名前は全て覚えております。」

「そうなの。随分記憶力が良いのね?一日で全員の名前を覚えるなど。」

「いえいえ。私の記憶力はそこまで良くありません。ですので、昨日の夜、必死に覚えたのですよ。」


 これは嘘ではない。確かに、おれは昨日のあの自己紹介だけで、全員の名前を覚えることは出来た。だが、夜も確かにクラスの名簿表を眺めていたのだ。だからこれは嘘にはならない。はずだ。


「あらそう。随分熱心なことで。でもね、そんなに必死に覚えたところで、貴方のような平民と、友好関係を持とうなどという人は、このクラスにいるかしらね?ねぇ?皆様?どう思いまして?」

「ふふ。赤宮様。酷いですよ。そのような現実を突きつけては。平民君が泣いてしまいますわ。」

「あら、そうかしら?それはごめんなさいね?平民君?」

 

 クスクスクスクス


 教室内に一斉に笑い声が広まった。

 これは完全に馬鹿にされてるな。まぁ、何か言い返すつもりはないけど。こんなガキみたいなイジメに付き合ってやる義理はないし。

 俺は一応、目の前の赤宮サマに頭を下げて、自分の席に座った。

 これで無礼だ何だとは言えないだろう。



 しばらくして、俺をいじめる事に飽きたのか、クラスのミナサマは、グループで雑談をしはじめた。


 これで一先ず落ち着けるな。

 というか、さっきのは何だったんだ?昨日の食堂でのことを聞きたかっんじゃないのか?何で俺をイジめる会がスタートしたんだ?おかしいだろ。

 ・・・まぁ、いいか。考えるの面倒くさいし。昨日の食堂での事を聞かれなかったと言うことで、今回は良しとしよう。


「おーい。お前ら席に着けー。」


 俺が一人、うんうんと頷きながら自分を納得させていると、ホスト教師と結月先生が教室に入ってき。え?もうそんな時間か?余裕を持って来たつもりだったんだけど。・・・・あ、さっきのか。あのイジメで時間取られたのか。もう、最悪だな。


「あー。今日は欠席はいないな。よし。じゃあ、ホームルーム始めるぞー。」

「「「「「はーい!!!」」」」」


 なんていい子のお返事。さっきと違いすぎて怖いよ。何なのこのクラス。


「じゃあ、まずはクラス委員を決める。例年通り、入試の成績上位二名の者になってもらうが、一人はもう決まってるな。学級委員長は黒宮 怜斗。引き受けてくれるよな?」

「ああ。」


 えっ!?怜斗!?怜斗がクラスの成績一位なのか!?へー。成長したなー。あの泣き虫だった怜斗が学級委員長か。何か感慨深いものがあるな。


「じゃあ、あともう一人の学級委員だが………。」


 ああ。そうか。もう一人いるのか。怜斗と一緒なら、出来れば優しいやつがいいな。怜斗がクラスで孤立しないように一緒にいてくれるようなやつ。って、今の怜斗には必要ないか。何か、昔基準で考えちゃうな俺。駄目だな。俺の中の皆は、三年前で止まってるみたいだ。昨日の食堂でも感じたけど、皆三年前とは全然違うのに。この癖は直さないとな。


「河野 慎哉。」

「・・・・・。」

「・・・・・。」

「・・・・・。」


・・・ヤバイ。何か幻聴が聞こえたぞ。

 この流れで俺の名前が呼ばれたのだとしたら、これは俺に副委員長をしろと言ってるということになる。そんなことあり得る訳がないのにな。


「河野 慎哉。無視とはいい度胸だな?」


 幻聴じゃなかったー!ヤバイ。どうすればいいんだこの状況。今のは完全に俺が無視したと思われたよな。まぁ、確かにそのとおりだけれども!でも、仕方ないだろ。幻聴だと思ったんだから!


「ハイ。ナンデショウカ?センセイ。」

 

 ・・・片言になったー!緊張しすぎて片言になっちゃったー!先生からの視線が痛い。


「河野 慎哉。副委員長。なってくれるよな?」


 あ、片言はスルーするのね。それはありがたい。

 でも、その笑顔は怖いよ。ここで笑うなよ。しかもこの雰囲気。俺、断れないじゃん。もう、嫌だー!


「はい。お引き受けします。」


 俺は投げやりな気持ちで返事をした。もうどうとでもなれ!


 こうして俺は、一年C組、副委員長になったのだった。

 もう、この学園辞めたい。



✽✽✽



「海鮮パスタとジェラートを一つお願いします。」

「私も海鮮パスタと蜂蜜ヨーグルトを。」

「俺はトマトピザとショコラケーキを一つ。」


 俺は今、食堂にいる。

 あの後、副委員長になった俺は、クラス中から睨まれながら、授業を受け、昼休みに入ると一番に教室を出て、食堂に来た。そこで待ち合わせをしていたコウとナナと合流して、今、昼食を食べはじめている。と言う状況だ。


 ちなみにこの事を二人に話すと、


「副委員長?でも黒宮様と一緒でしょう?ならいいじゃない。頑張って!」

「頑張れ。シン。」


 なんとも軽い返しだった。


「酷いな。もう少し心配してくれてもいいのでは?」

「そうだねー。でも私達が心配しても何も変わらないし、するだけ無駄じゃない?あ、でも、相談にはのるから何かあったら絶対言ってね!」


 確かにそのとおりだけど。ナナ。俺は今、悲しいよ。マジで少しくらい心配してくれても良いんじゃない? 


「・・・・・。」


 コウ。無言で肩に手を乗せるのはやめてほしいな。逆に悲しくなるから。

 はぁー。俺の友人達は何でこんなに酷い奴らなんだ。


「「「「キャー!!!!!」」」


「「「「「ウォー!!!!!」」」」」


 俺が絶望に打ちひしがれていると、昨日と同じような悲鳴が入り口付近から聞こえてきた。

 声の発生源で何があったのかなんてもう見なくても分かる。

 エリート生達が来たのだろう。

 俺はシリアスな雰囲気を台無しにされて少し怒りながらも、未だ続く悲鳴をうんざりしたように聞いていた。


「ねぇ。俺はもう教室に戻るけど、二人はどうする?」


 丁度昼食も食べ終わったので、いいタイミングだと思い、俺は食堂から出ることにした。


「私はもう少しここにいるね。まだデザートも食べてないし。」

「俺もここにいるな。こいつ一人だと心配だし。」


 二人共まだここに残るらしい。

 一応理由を言ってはいるが、それは嘘だろう。本当の理由はエリート生達を見るためだと思う。さっきから目線がずっと入り口にいってるし。間違いない。

 昨日のアレのせいで今日の朝から大変だったって言うのに、憧れというのは変わらないらしい。

 まぁ、その気持ちは分かる。

 俺にも憧れの人はいるからな。


「じゃあ、俺はもう行くね。二人はゆっくりしてきなよ。」

「うん!じぁね〜。」

「ああ。また放課後な。」


 俺は二人と言葉を交わして、食堂をあとにした。

 

◆◇◆◇


 俺は食堂から出ていくシンの背中を黙って見送った。

 あ、今躓きそうになった。危ないな。


「何ニヤニヤしてるの?気持ち悪い。」


 俺がシンの後ろ姿を見ていると、妹のナナが辛辣な事を言ってきた。


「気持ち悪いって酷いな。俺はただシンを見送ってるだけなんだが?」

「それが気持ち悪いのよ。シンがそんなに気に入ったの?」

「ああ。そうだな。気に入ったよ。でも、それはお前もじゃないのか?」

「そりゃあね。気に入ってるわよ。シンは総受けに出来ると思うからね!」

「………そうか。」


 出た。ナナの腐女子発言。

 ナナは昔から生粋のオタクで腐女子だ。家の母と父の影響を受けたのだろう。母と父もオタクだからな。

 そして、ナナは妄想が行き過ぎてよく暴走するから、その度に俺が尻拭いをしている。いい迷惑だ。


「ナナ。あまりシンをそういう対象として見るのはどうかと思うぞ。バレて絶交されたらどうすんだよ。」

「それなら大丈夫よ。バレないようにすればいいんだから。」

「…………そうかよ。」


 ナナのこの自信は一体何処から来るんだよ。まったく。


「おい。お前達。」


 俺がナナに色々と諦めてため息をついていると、誰かに声をかけられた。


「はい?なんですか?…………………せ、生徒会長、様。」


 俺が声の方に振り返ると、我が学園生徒会長様が腕を組んで立っていらっしゃった。

 え、何でここにいらっしゃるんだ?そして何で俺達は話しかけられてるんだ?


「生徒会長様!な、何の御用でございましゅ、しょうかぁ!?」


 俺が考え込んでる間にも、ナナが話しを聞いていた。張り切って声を出したわりには噛んでるな。


「ああ。お前達に聞きたい事がある。」


 あ、噛んだことはスルーするのか。そうか。


「聞きたい事でございましょうか!?」


 ナナ。緊張しすぎだ。声が裏返ってるぞ。聞いてるこっちが恥ずかしい。


「昨日、お前達と共にいた外部生の男はどこにいる。」

「外部生の男?……………あ、シンの事ですか?」

「シン?」


 生徒会長様は誰だそれはというふうに首をかしげた。

 そうだよな。シンじゃ誰だか分からないよな。でも、これはヤバイんじゃないか?このままシンの本名言ったら、この方々は絶対シンに会いに行くだろうし。そんなことになったらシンは全校生徒の注目の的になる。これは本名を話すわけにはいかないな。


「シンって言うのは、河「シンの本名は私達二人共知らないんです!お役に立てずにすみません!」………えっ?」 


 俺はシンの本名を言おうとしたナナの言葉を遮って、生徒会長様にそう言った。ヤバイ。勢いだけで嘘をついてしまった。ナナが簡単に本名を言おうとするから。


「本名を知らない?」

「はい。そうです。一応、初対面の時に聞いたのですが、愛称で呼ぶようになってから忘れてしまって。お役に立てずに申し訳ございません。」


 俺は頭を下げた。これでいい。ここまでしたなら嘘だとは怪しまれない筈だ。多分。


「そうか。」


 生徒会長様は、納得したように頷くと、この場を去って行こうとした。だが。


「待って待って〜!」


 そんな生徒会長様の足を止めたのは、昨日食堂で話しかけて来た先輩だった。


「何だ。(あきら)。もうこいつ等に用はないだろ。」

「うん。そうなんだけどね。多分俺、昨日シンっていう子と話してるから聞いてみたくて。だからちょっと待ってよ(れん)。」


 どうやら昨日の先輩は彰様というらしい。しかも、生徒会長様と名前で呼び合う間柄でもあるらしい。

 ごめん。シン。俺、お前をかばいきれないみたいだ。


「ねぇ。昨日一緒に座ってた子だよね?シンって。」

「えっと、はい。そうですけど。」

「あー。やっぱりそっかー。あの子がシン。確か、本名は河野 慎哉君、だったよね?」


 昨日の先輩、改め、彰様はそう聞いてきた。何故か俺を見ながら。

 ・・・あー、これバレてるな。さっきのが嘘だって言うこと。笑顔なのに目が笑ってないし。この方は逆らっちゃ駄目な人種の人間だ。ごめん。シン。俺はお前を売るよ。


「えーと、確かそんな名前だったような気がします。すみません。よく覚えてなくて。あ、でも、エリート生の四葉 渚様と同室だったって言ってました。」

「そうなのか。……………渚!いるか!?」

「………はい?何ですかー?彰先輩。」


 彰様が声をかけると、後ろの集団の中から、男子生徒が一人出てきた。

 うわー。この方が四葉様か。写真では見たけど、やっぱり実物はもっと可愛いな。見た目は完全に女子だし。声でしか見分けつかないな。


「渚、お前河野 慎哉と同室だって?」

「河野 慎哉?誰ですかそれ。」


 シン。お前、名前すら覚えられてないぞ。

 まぁ、お前も四葉様を知らなかったからお互い様か?


「あー、そうか。お前は名前覚えるのが苦手だったな。」

「なっ。違います!覚える必要がないだけです!覚えようと思えば一度で覚えられます!」

「そうか。そうだな。で、話を戻すけど、お前の同室者は外部生で、茶髪茶眼の男子生徒?」

「同室者?…………………あー。あの平凡顔のことですか?なら僕の同室者ですよ。僕は認めてませんけどねっ。」


四葉様は一気に不機嫌になり、怒ったように顔をそむけた。

シン。お前は何をしたんだ。一体。


「じゃあ、河野 慎哉で決定だね。ねぇ、二人共。俺達を河野 慎哉の所まで案内してくれないかな?」


彰様。一応疑問系ですが、それは俺達に選択権はありませんよね?


「分かりました!お任せください!」


俺が返答に困っていると、ナナが何の迷いもなく引き受けた。


(おい!ナナ!何でそんな簡単に了承するんだよ!)

(別にいいじゃない!どうせ断れないんだし!それに、こんな美味しいシチュエーション見逃せないわよ!)


どうやらナナは腐女子の血が騒ぎ出したから引き受けたらしい。これはまた俺が尻拭いをする羽目になりそうだ。


「それでは、シンの元まで案内いたします!」


俺は異様に張り切っているナナのあとを、ため息をはいて、大人しくついて行ったのだった。





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