寮の部屋で
「キャー!出て行けー!」
俺は今、非常に困っていた。
俺が寮の自分の部屋を開けると、男が制服を脱いで着替えているところだった。
そう、お・と・こ・が着替えていたのだ。断じて女子ではない。
だが、この悲鳴は完全に女子のものだ。だが、出しているのは男だ。一体こんな声がどこから出ているのか…。
というか、うるさいな。ちょっと黙ってくれないかな。扉は閉めたから廊下には聞こえてないと思うけど。俺の耳がおかしくなりそうだ。
「おい!ちょっと落ち着けって!取り敢えずそんなに恥ずかしいなら叫ぶ前に服を着ろ!」
「キャ!触るな!変態!」
取り敢えず叫ぶのを止めてもらおうと思い腕を掴んだら今度は変態!って言われて突き飛ばされた。
何だ変態って、男が男の腕を掴むのが変態行為になるのか?そんなわけあるか!おかしいだろ!
まぁ、服を着てくれたし、叫ぶのも辞めてくれたのでもう何も言うまい。
「ちょっと!人の部屋に勝手に入ってきてどういうつもり!?まぁ、どうせ僕目当てだったんだろうけどさ。僕の着替えシーンが見れたんだから今日はもう帰ってよね!いくら僕のファンだからってルールはちゃんと守ってよ!」
こいつ何言ってんだ?いきなり弾丸のごとくペラペラと意味の分からないことを喋りだしたぞ。
「おい、ちょっと黙れよ。というか、ファンってなんの事だ?それにお前のことなんて俺は知らないんだが。あと、ここは俺の部屋でもあるからな。出て行けって言われても困る。」
「は?僕を知らない?そんなわけ無いでしょ!この学校に僕を知らない奴なんているわけないじゃん!この、四葉 渚様をさ!」
そうか、こいつは四葉 渚って言うのか。ていうか、俺の質問は無視したなこいつ。
「で、何でまだいるの?早く出て行ってっていったよね?」
「は?いやいやいや、お前人の話聞いてた?ここが俺の部屋だから出て行けって言われても困るって言ったよな?」
「は?お前が僕の同室者?はは、ありえないね。そんな嘘はいいから早く出ていって。」
おい!にべもないな!ていうか、こいつ絶対俺がなんて言っても認めない気だろ…。
「お前が何と言おうと俺の部屋はここで、お前の同室者だ。」
「…は、はあああ!?じゃあ、お前が本当にあの、河野 慎哉なの!?」
はあああ!?それはこっちのセリフだよ!「あの」河野 慎哉って何だ!お前は一体何を聞いたんだよ!
「お前が言う「あの」河野 慎哉がなんの事かは知らないが確かに俺がお前の同室者の河野 慎哉だ。」
「お前がホントに河野 慎哉なのか?僕の同室者の?」
「ああ、さっきからそう言ってるだろ。しつこいぞお前。」
「えー。何か期待はずれー。」
イラッ。こいつふざけてんのか?初対面で普通、期待はずれとか言うか?言わないよな?やっぱ金持ちは色々と違うな…。
もういいや。こいつの相手してても疲れるだけだし。俺も着替えたいし。
「俺、もう着替えたいからそこ退いてくれないか?」
「えっ?」
おい!えってなんだよ!まさか退かない気か?まだ、部屋を出て行けとか言う気か?マジでふざけんなよ。
「おい、早く退けって。」
「あ、わかったよ。」
お?やけに素直に退いたな。どういうつもりだ?まぁ、通れたんだし今はいいか。
「あ、おい!お前!入るのはいいが僕の寝室には近づくなよ!分かったな!」
「ああ、わかったわかった。お前の寝室なんか近づかないから安心しろ。」
俺は後ろを振り返ってそう言ってやった。
はぁ、気のせいだった。素直になったとか気のせいだった…。
そのあと、俺はコウ達との約束の時間になるまで寝室に立て籠り、時間が近づいてからこっそり部屋を抜け出して待ち合わせ場所へと向かったのだった。
何か無駄に疲れたな…。はぁ。




