閑話 依頼
「で、どうだった?フレン?」
私、フレン・リトリーに質問を投げかけたのは鳳凰学園の理事長であり、私の恋人でもあるジレン・マーキスだ。
「駄目だ。いなかった。今回は外れだ。」
私達はある方々の依頼で今年入学する外部生を調べていた。
私は先程、外部生への学校説明?に付いて行き、依頼内容である水門家の次男様捜索の手がかりを探そうとしたのだが結局何の発見にも至らなかった。
「はぁー、そうか…。いなかったか。お前の見逃しって事はないのか?」
「それはない。私が見逃しをするはずがないだろう?」
言っておくが私はこれでも鑑定系魔法の世界ランクNo.17の実力者だ。日本には私以上の鑑定者はいないだろう。その私が気づかなかったということは今回はいなかったという事か、もしくは、私よりも実力が上だという事だ。
前者なら十分あり得るが後者はほぼないだろう。だが、絶対にないとは言い切れない。
私は実際に会ったことはないが水門家の次男様。水門 剣哉様は日本に知らぬ者はいないだろうというくらい有名な方だ。わずか四歳にして大学レベルの勉学をマスターされ、五歳の時には上級魔法も扱われていた。性格も穏やかで品があり、多くの方から慕われていたとか。
そしてそんな方が姿を消したのはわずか十二歳の時。今から約三年前だ。
当時、栄光七家や財閥の方々が全力で捜索されたが居場所は愚か、痕跡すら見つけられなかったという。
あの時は大ニュースになったから私でも知っている。
「そうだよな。お前が気付けないなら日本に分かる奴は他にいないよな。…はぁ、でもお前がいなかったと言うならこの学園には入学しなかったって事だよな…。」
「そうだろうな。ところでジレン、逆に私は聞きたい。何でこの学園に入学すると思ったんだ?私達が探している方は自分から家を出て行ったのだろう?だったらここに来るわけがない。違うか?」
そう、ずっと疑問に思っていたんだ。自分から出ていった方が自分からここに戻ってくるか?と。今回の依頼はこの学園から探し出して欲しいという依頼だったがこの学園にいるとは思えない。
「そうだな。普通はそう思うだろうな。」
「では何故?」
「俺も詳しくは聞いていないが約束したらしい。高校生になったら一緒に学校に行こうね、と。」
え、まさか。
「理由ってそれだけか?」
「ああ、そうだ。」
いや、それだけ?この学園にいるかもしれないって思った理由ってそれだけ?え?嘘だろ。
「それは、何というか…。」
「フレン。お前はあの人に会ったことがないから分からないだろうがあの人は約束は絶対守る。だから俺もこの依頼を受けたんだ。」
「そう、か。お前が言うならそうなんだろうがもし、死んでいたとしたらその約束は。」
「あの人は死なねぇよ。あの人が死ぬなんてありえない。」
これだ。私は死んでる可能性も視野に入れて捜索してる。だが、こいつ等は次男様に一回でもあったことがある奴らは全員こう言う。
「あの人は死なない。」と。
その確証がどこから来るのかは分からないが皆そう言う。
まるで、どこかの宗教のようだ。私は人をここまで虜にする次男様に一種の恐怖を抱いている。それを表に出したりはしないが。
「では、報告は以上か?フレン。」
「ああ。」
「そうか。では、今日の仕事はまだあるか?」
「ああ。寮監としての仕事がまだ残っている。」
「ではそれが終わった後に俺の部屋に来い。」
「は?」
「今日はお前の仕事が終わり次第俺に付き合ってもらうぞ。いいな?」
「・・・・・・え?」
「い・い・な・?」
「あ、ああ。分かった。」
「では、もう行ってもいいぞ。夜は絶対に来いよ。」
ジレンは俺の返事に満足そうな表情で頷きながらもそう言った。
そんな念を押さなくてもきちんと行くよ。約束破ったら後が怖いし。
「あと、夜なんだが一つして欲し…」
「じゃあ、私は失礼する。」
俺はジレンの話を遮って急いで部屋を出た。何か嫌な予感がしたからな。最後まで聞かない方がいいだろうと判断した。
あ、そういえば一つ報告するの忘れてたな。
外部生の中の一人から少しおかしい気配がしたって。まぁ、一瞬だったら気のせいだと思って何の反応もしなかったが一応報告だけはした方が良かったかな?
……というか、どうせ夜に会うんだし、その時でいいか。
私は報告ミスをそう簡単に纏めると本来の仕事場に早足で戻ったのだった。




