夢
咲子に呼ばれ後をついて行った響音は撫子との思い出の場所に着いた。撫子の話で盛り上がり咲心と別れた響音は…。
「ここは……。」
そうボソッと言葉がこぼれた。
「そうです。姉との1番の思い出の場所…ですよね?」
そう答えながら振り向いた咲心さんは悲しい表情だった。
「そう。ここはなこちゃんとの1番の思い出の場所…。でもどうしてここに?」
そう質問すると咲心さんはバックからなにかを取り出し
「これ…姉から預かったものです。本当は入学した時に渡すつもりでしたが…。」
渡された手紙を開封した。
「〜ことちゃんへ〜
この手紙を読んでくれてるってことはちゃんとさきが渡してくれたんだね!
私、ことちゃんに最期まで言えなかった事がある。本当はね、私は生まれて10年の余命宣告をされてたの。でも、入退院を繰り返しながらも16歳まで生きられた。でももう死期が近いんだなぁって思ってた。高校入学して初めて体調崩した時から。だから夏休み入って直ぐ入院した時はもう死が目の前まできてるんだって思った。最後にことちゃんが握ってくれた手も、言葉も本当にあたたかくて嬉しかった。私の初めての親友だからとても。入院の方が長くて友達もいなかった私に、入学初日からことちゃんという大切な友達ができた時から私は病気を忘れるくらい明るくなれた。だから最後にちゃんと言いたい。
死ぬまで黙っててごめんなさい。
友達…ううん。親友までになってくれてありがとう!
私はことちゃんに出会えて本当に幸せです!」
そう手紙に綴られてた。
「ことねさん、私ことねさんが羨ましい。私でさえも笑顔に出来なかった姉を笑顔にしたこと。家族という近すぎる距離にいたからかもしれないけど、それでも何か笑顔になれる方法があると思ってました。だからことねさんと友達になったらきっと姉を笑顔にした理由がわかるだろうと思いました。そして仲良くしてから気づいたんです。純粋で明るくて太陽みたいな人だと。私は姉を笑顔にすることにとらわれすぎてて自然じゃ無かったんだと。」
私は咲心さんの言葉をきいて嬉しかった。
それからその日はなこちゃんの話で盛り上がり咲心さんと別れた。
ちょうど桜家と私の家の中間付近にある公園の横を通ったとき、そこに撫子がいた。
「なこ…ちゃん…?」
「そうだよ。私の手紙読んでくれたんだね。ありがとう。私、死んでからずっとことちゃんに言えなかったこと後悔してた。そしたらね、多分神様だろうね。ことちゃんと会うの許してくれたの!」
「なこちゃん…。会いたかった。すごくすごく会いたかった。いっぱい話もしたかった。なのにいなくなるなんて…。それも急に…。」
「ことちゃん、ごめんね。」
30分程だろうか。撫子と話した。すると撫子が
「もう、本当のお別れの時間がきたみたい。」
そう言った。本来なら生きた人間と死んだ人間が出会うことはなくこうやって触れ合える状態にはならないだろう。しかし、生きた人間である私は欲の塊だった。
「なこちゃん行かないで!…もっと話そうよ!…もっと遊ぼうよ!またいなくなるなんて嫌だよ…。」
「ごめんね。でももうお別れなんだ。ことちゃんのことずっと好きだし大事な親友。だから、ことちゃんがおばあちゃんになって寿命を迎えた時また会おう!…私と仲良くしてくれてありがとう!」
そう言うと暖かい光とともに少しずつ撫子の体が透け始めた。
「…絶対だよ!わたしがおばあちゃんになって寿命がきたら、絶対また会おうね!約束だよ!」
泣きながら撫子に訴えた。
「うん。約束!…それまでしばらく…バイバイ。」
そう言うと強い光とともに撫子の姿はなくなった。
気づくと私は公園のベンチに寝ていた。空は紫色に近く、夜が始まろうとしていた。