キセキの巡り合わせ
撫子が亡くなり、学校生活も楽しくなかった響音だったが、あることがきっかけで…。
私は走り去って行ったあの子は、きっと撫子が私の姿をみて心配になったから来てくれたんだとそう思うことにした。
そして新たなクラスメイトと入学式会場に向かい指定された席に着いた。そして15分後
「新入生、入場!」
という号令とともに続々と入場してくる新入生。
すると先程声をかけてきた撫子そっくりな子も入場していた。
私は2度見3度見して目をつむって心を落ち着かせもう一度目を開くもやはりそこには撫子がいた。
そして新入生の呼名が始まりその子の順番がまわってきた。
「桜、咲心」
「はい!」
名前は違ったが苗字が同じことに気づいた。
厳粛な式典も退場のみとなった。
「新入生、退場!」
〜♪
音楽とともに次々と退場する新入生。やはり何度見ても、どの角度から見ても撫子にしかみえなかった。
式典の全てが終わると私は咲心さんのところに急いだ。姿を見つけ
「咲心さーん!はぁ…はぁ…。…あの、咲心さんにきょうだいはいる?」
初対面と変わらない人からいきなり家族構成をきかれた咲心さんはびっくりした顔で
「今はいません。」
「…今は?」
「はい…。姉がいましたが、去年亡くなりました。…なので今はいません…。」
少し悲しげな表情でそう答えた。すると
「咲心〜!クラスは?」
と言いながら息を切らして近づいて来たのは撫子の母親だった。
私はわけがわからなくなったが挨拶だけはしっかりした。
「こんにちは。あの…お久しぶりです。」
そう挨拶すると
「え…?はぁ…はぁ…。!!?」
すごく驚いた顔をしていた。
「ことねさん?」
「はい!」
その様子を見ていた咲心さんは不思議そうな顔で見ていた。
「咲心、この人はね、ことねさん。撫子にとっても私にとっても大事な人よ。」
そう紹介すると
「ちゃんとした挨拶も出来ず申し訳ありませんでした。桜咲心と言います。姉を笑顔にしてくださりありがとうございました。」
すごく丁寧に挨拶され、私は圧倒された。
これが咲心さんとの出会いと会話である。
それからは撫子同様仲良くして一緒に遊ぶ仲にもなった。撫子は常に体調を気にしなければならず、外で遊ぶことはできなかった。だから撫子の分まで、咲心さんと沢山話、沢山外で遊んだ。
そんなある日、咲心さんに呼ばれ外出した。私は今から何をするのか全然わからず、ただただ咲心さんについて行くだけだった。
しかし徐々に懐かしい景色が目に入り、ついた場所は撫子との1番の思い出の場所だった…。