危篤
心臓が生まれつき悪い撫子は入退院を繰り返していた。そんなある日響音の携帯に着信が…。
「ごめんね。ちょっと体調崩して検査入院してたから携帯触れなかった。」
そう返事が来た。私は胸の中にあった何かとてつもなく重たかった物がスーッと消えていくのを感じた。
「なこちゃん大丈夫?二学期は学校来れそう?」
そう問うと
「ことちゃんは本当に心配性だなぁ。大丈夫!二学期も元気に学校行くよ!」
そう返事が来て私は安心した。
それからは本当に元気そうな声で電話をくれる撫子に私は心から大丈夫と思えるくらいだった。
しかし、彼女は私を安心させるために元気なふりをしているだけだということに私は少しも気づかなかった。
夏休みも後1週間になった頃私の携帯に1本の電話が入った。
見るとそこに表示されてる名前は桜撫子だった。私は嬉しくて嬉しくてすごく明るい元気な声で
「なこちゃん!どうしたの?暇だった?」
と電話をとるなりそう話した。
しかし電話の向こうからきこえたのはわたしがあまり知らない女の人の震えた声と何か機械の音。
「もしもし?なこちゃん…?」
もう一度撫子か確かめると
「……ことちゃん…ですか?…撫子の…母です…。」
私は撫子の電話から撫子以外の人のしかも母親からの電話に訳が分からなくなり時が止まった。
携帯は耳にぴったりと付けているのになぜか音がしない。
その時、ドアをノックする音がして現実に戻った。
「ことね?もうすぐ夏休み終わるけど宿題は終わってるの?」
と私の母がドアを開けながら言ってきた。私はすかさず
「終わってるよ。今電話中だから後で話そう!」
と言って入ってきた母を追い出した。
「もしもし…。あの、どうされたんですか?」
半分くらい気づいていたが答え合わせをするかのように私は撫子の母親にそうたずねた。
「ことねさんと言うのね…。娘がいつも嬉しそうにあなたのこと話してくれたのよ。……娘はね…今…」
そこまで言うと会話が途切れ、向こうから泣いている声がきこえた…。私は今撫子の身に何が起こっているのか大方わかった気がした。
少し落ち着いた撫子の母親から
「娘は今…危篤と言っていつ命の火が消えてもおかしくない状態なの…。意識がなくなる直前に娘があなたに会いたいと言ったのよ。親バカで迷惑かけるのは承知の上で………ことねさん、撫子に会ってもらえないでしょうか…。」
私は何をしてあげたらいいのか、行って出来ることは何なのかすごく悩んだ。でも
「わかりました…。支度をしてそちらに行きます。」
そう答えると場所を教えてもらい電話を切った。