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偶然

 この物語はフィクションではありますが、実際に出くわした偶然の出来事を元に、それをかなり変えて、更に複雑に絡ませて、将来的な理想とかも組み込んで進めて行こうと思っております。

 ❝初見です❞

 「初見さん、いらっしゃい!ゆっくりして行って下さいね。」


 自宅のパソコンで、とあるチャット放送を視聴していた。

 その放送は、一般の放送主がカメラで顔を出して放送したり、静止画の画面で音声だけの放送をしたりで、放送主が歌ったり、雑談したりするのをコメントしてやりとりするものだ。

 僕はその日、1週間の仕事を無事終えてほっとして、エアコンの冷房を付けて、ネットの小説投稿サイトで、趣味の小説の執筆をしようとしていた。ちょっと面白いかなと思う話が、ぼんやりだが、頭に浮かんだからだ。ところがである。いざ執筆画面と向き合うと、全く手が進まないのだ。それは、きっと頭の中の整理がまだちゃんと出来ていないからだろう。僕は、そのままその画面に向き合ってても無駄だと思い、それを閉じて、息抜きを兼ねて、何か頭の中のごちゃごちゃを整理する良いヒントがないかと、チャット放送を開いた。いつものことだが、サムネと呼ばれるたくさんの生放送の小さな画像が並んでいた。その中の一つを選んで、その放送画面を開いてみた。自画像?と思う様な可愛い女の子の絵のサムネに気を惹かれたと云うと少し大袈裟だが、とりあえず他のサムネよりは気になったからだ。するとだ、放送画面の静止画にいきなり心が妙に踊った。手を繋ぎながら宙に浮いている様な感じのカップルっぽい男女の絵だが、その絵にどこか見覚えがあったからだ。それは、誰もが知っている有名なキャラクターの絵とかではなく、おそらく個人的にたまたま知っていたレベルだと直感した。しかし、それがいつどこで見たものかは、すぐには思い出せなかった。

 「まだ放送を初めて間がない初心者です。リスナーの皆さんのコメントが頼りですから、よろしくお願いします。」大人しそうな女子の声に対し、

 ❝女子大生ですか?❞

 ❝この絵は自分で書いたの?上手いね❞というコメントが流れ、

 「女子大生です。去年の春から関西の某大学で漫画家になる勉強をしてます。」そこまで聞いたところで、僕は❝初見です❞とコメントした訳だ。それからすぐに僕は❝カケフ❞と名乗り、ほぼ同時に彼女のネット上の名前が❝瑠璃華❞であることを、静止画面の上の放送者名で確認した。その瞬間、3カ月前の記憶が頭によぎった。その名前にも何となく見覚えがあったからだ。

 「カケフさん、よろしくお願いします。」そう云えば聞き覚えのある様な声の気もしたが、口調や音色は記憶のそれとは随分違うなと思った。

 ❝この絵は 漫画の1シーンですか?❞

 「そうです。これね、今1番力入れてる作品で、実はこれで漫画家デビューを目指してるんで、よかったらいろいろ感想とかもらえたらなと思ってます。」それに対して、他のリスナーさんの反応がなかった。そのせいか、彼女も困ったのか少し沈黙したので、何かコメントしようと思った。しかし、何てコメントしようか?実はもしかして会ったことあるかも、なんてコメントするのも、もし例えそうだったとしても、その時があまりいい感じではなかったので、又拒絶されても嫌だななどと躊躇した。じゃあとりあえず応援コメントを無難に送ろうとしたら、その前に彼女が1歩踏み出した。静止画面の絵を替えて来たのだ。闇の中で妖怪の様な男が、女性を抱きかかえながら飛行してる絵で、白黒のスケッチ画の様だ。それは、まさにあの時見た絵と同様の画法で、僕はその時確信した。

 ❝凄く上手いですね。デッサンでこんなに表現出来るとは❞

 「漫画は小学校の時から書いてるし、高校では美術部だったので、まあこれくらい書けないとですね、はは、はは。」と照れ笑い?

 ❝よかったら、他のも見せて頂けますか?❞

 「後、これはちょっと恥ずかしいんですけど、自分では凄く気に入ってるんですけど、どうしようかな。」

 ❝無理なら いいですよ❞ その頃にはもうマンツーマンの会話みたいになっていた。

 「今見てくれてるの、カケフさんだけみたいだしなあ。」それって、僕1人なら見せがいがないと云ってるのか、1人だけなら見せてもいいと云ってるのか迷ったが、僕もここで自己PRを仕掛けた。

 ❝実は 僕は趣味で小説書いてるんです❞

 「へえ、それ何か興味あります。どんなの書いてるんですか?よかったら、ジャンルとか教えて下さい。」

 ❝恋愛とかが多いです❞

 「ああ、羨ましい!私、絵はまあまあ自信あるんだけど、ストーリー考えるの課題で、そんで今の大学で勉強中なんですけど、よかったら、あ、カケフさんがそのままペンネームですか?」

 ❝カケフ優馬の名前で投稿してます❞

 「後で読ませてもらいますね。あの、参考にさせてもらっていいですか?」

 ❝もちろん!OK❞

 「やったー!何か、放送したかいがあったなあ。」

 ❝いえ こちらこそ小説のヒント欲しいし❞

 「じゃあねえ、ちらっとだけ、とっておきのスケッチ出しますね。えっと、これじゃなくて、これはいくら何でも見せられないし、あ、あった、これだ。」と云って見せてくれた絵は、紛れもないあの絵だった。

 ❝やっぱり❞ つい送信してしまったが、彼女にはその意味が分からずに無反応だった。

 「これね、友達に見せたらエロいとか云われて、でも、自分では何か2人の運命的な絆を表現出来たみたいで超気に入ってるんですよね、なんて自画自賛したりして、はは。」

 ❝凄く上手いです。感動しました❞

 「ありがとうございます。何か照れちゃいます。」彼女は気をよくしたのか、すぐに引っ込めるみたいなこと云ってたのをすっかり忘れてるのか、静止画をその懐かしいキスシーンのままにしていた。

 ❝他には見せられない絵もあるんですか?❞ こう尋ねたのには訳があった。あの時彼女が見られたと思って不快感を示したのは、実は別の絵なのではないか?僕が見たのがこの絵だけなら、彼女もそれほど苦にしていなかったんだという確信が欲しかったのだ。

 「ちょっと人に見せるにはやば過ぎるんです。これは絶対に見せられない。」

 ❝じゃあ、まだ誰にも見せてないんですね❞

 「この絵でエロいって云われて、もう絶対無理って感じで、スケッチブックの管理も完璧にして、なのに1度だけ行きすがりの人に見られて、超焦ったことあります。それも相手は男の人で、この絵貴方が描いたんですか?って云われて、一体どれだけ見たんだって感じで、もう最悪!」

 ❝僕が見たのは このキスの絵だけですよ❞

 「え、え、話が見えない。この絵だけしか見てないって?」

 ❝レストランの席に忘れられてたスケッチブックが 偶然このページで開いたんです❞

 「え、どうしてレストランに忘れて来たことを?え、嘘!」

 ❝勝手に開いただけで 他見ずに閉じました❞ 無実であることと、彼女を安心させたい気持ちで必死にコメントした。

 「えー!まじでー!え、カケフさんて、まじあの時の?」

 ❝紫色のリュック背負ってたでしょ?❞

 「へー、凄い!何で?」

 ❝偶然です 僕もさっき気付いてびっくりです!❞

 ご愛読頂き、ありがとうございました。読者の皆さんは、こんなこと現実にはないよと思われているかもしれませんが、僕はこのレベルの偶然なら、ざらに経験して来ましたので、それをネタに物語を書いてみたいと思いました。小説を書く動機の一つです。事実は小説より奇なり、という言葉もあります。僕は、そんな奇妙な事実を、より物語として面白いものにアレンジして表現していきたいと思っております。これからも、よろしくお願い申し上げます。<m(__)m>

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