表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

練習用短編

最期の再会

作者: さとうさぎ

 街はひどい状態だった。

 そこらじゅうに瓦礫が散乱し、アスファルトはひび割れ、建物という建物から火の手が上がっている。

 人々は逃げ惑い、この惨状を作り出したモノから逃れようと必死だ。


 そんな惨状を作り出したのは、たった一つの存在だった。


 ――ドラゴン。


 この世界で最も巨大で、最も偉大な空の王者。


 その灰色の翼は、どこまでも広がっているのではないかと錯覚するほどの大きさだ。

 鋼のような尻尾は建物をなぎ倒し、その口から放たれる炎のブレスは人々を焼き払う。


 まるで、悪夢に出てくる怪物を体現したかのような姿。

 そのドラゴンが今、俺の目の前にいる。


 対峙して初めてわかった。

 その、圧倒的なまでの力量差というものが。


「こいつを殺るのは俺だ。お前らは引っ込んでろ」


 近くにいる部下たちにそう命令する。


「で、でも隊長……」


「いいから行け!」


 俺が静かに怒鳴ると、部下たちはしぶしぶと撤退を始めた。

 ……それでいい。

 無駄な死人を出す必要はない。


 息を整え、静かに剣を構えた。


 ドラゴンは強大だ。

 人間一人の力で、太刀打ちできる相手ではない。


 だが、だからなんだというのか。


 俺はこいつを斬ると決めたのだ。

 ……この街を、仲間を、これ以上こいつに奪わせはしないと決めたのだ。


 ならば、他に何も考える必要はない。

 ただ、いかにして奴の息の根を止めるのかということだけを考えれば、それでいい。


「冗談じゃないわ。何勝手に決めてんのよ」


「――――」


 懐かしい少女の声が、そんな俺の思考を遮った。

 ……そんなはずはない。

 彼女が、ここにいるはずが――


「あいつを殺るのはあたしよ。あんたこそ引っ込んでなさい」


 だが、それは幻聴などではなかった。

 視線を横に向ける。

 そこには、美しく成長した幼馴染の姿があった。


 美しいだけではない。

 彼女は、俺と同じように剣を握っている。

 それは、つまり。


「……はっ」


 こいつは昔からこうだ。

 俺といつも張り合う、頑固な少女。

 何も変わらない。


「死ぬなよ?」


「誰に向かって言ってんのよ」


 俺たちの戦意を感じたのか、ドラゴンが咆哮を上げる。


「行くわよ!」


「おう!」


 不思議と、負ける気はしなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ